ラブトライアングル心中もの2題。勘十郎さんは一勝一敗
20日、二度目拝見しました。
今月の演目は、野崎村と心中天網島がかかっています。どちらも愛する男のために身を引き生き残る側が主人公で、それぞれ田舎娘と人妻。男を力づくで死出の道行に誘う恋の勝利者は、町娘と遊女で、結局若くて美しく強引なもんの勝ちということになってます。妹背山のお三輪と橘姫もその構図です。文楽は、男性のもてたい願望と現実逃避願望を反映した娯楽ですから当然ですが、そこはそれ、近松さんは「悪所狂ひの身の果てはかくなり行くと定まりし。」というたはります。
紙屋治兵衛は、28歳で老舗の紙問屋の主で妻子持ち。妻は従姉妹で幼馴染、情も義もあるしっかり者の兄、優しい小母が姑と、それなりに恵まれているはずが、小春の色香に迷い、至上の恋に果てることを夢想します。また、妻の心映えに感激して必ず添うと誓ってみたり、泣いたりすねたりふてたり、すぐキレる極めて自己中心的かつ身勝手と、観客の共感を得にくいプロットになっています。玉女さんの治兵衛は、瞬間湯沸かしジェットコースター喜怒哀楽というより優柔不断感が感じられますので、上方を代表する色男になったはります。
小春は、最終的には心中するとはいえ、遊女としての職分守り、義理を重んじる女ですから、はじめから終りまで苦しんでいなければなりません。耐えに耐える勘十郎さんも素敵ですぅ。おさんは、基本的に共感を一身にあつめるもうけ役ですし、清十郎さんの遣う女形さんの堅気感というか色気のなさがぴったり。兄孫右衛門は、ええかっこする場面がたくさんありますが、弟思いとはいえ、遊里の女性の人間性を認めようとはしない一般的な善い人という限界があります。和生さんが遣われると、ますます立派に見えてしまいます。
アイーダとウィキッドいっぺんに見たようなもんです。こちらは、社会的成功を失ったものが恋の勝利者になるのですが…。↓よろしかったらポチッとお願いしますm(_ _)m。
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お光ちょは、残念ながら、簑助師匠のお染の可愛らしさ、色香、恋する女の一念に一蹴、うれしかったはたったひとときの完敗であられました。簑二郎さんの久松はオトコマエでした。どこがよいのかわからないところが良いのでしょうねえ。
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