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2012年10月 8日 (月)

浮標・戯曲に書かれていることが全て。付け加える言葉はありません。そんな戯曲です。長塚さんの戯曲と向き合う姿勢から目は離せません。

公式ページに戯曲全文掲載されています。
戯曲:三好十郎(初出:1940年(「文学界」昭和15年6、7月号))
演出:長塚圭史、「葛河思潮社(くずかわしちょうしゃ)」

キャスト
久我五郎(画家)/田中哲司
奈緒(その妻)/松雪泰子
小母さん(家政婦)/佐藤直子
赤井(出征が決まった五郎の親友)/平 岳大
伊佐子(赤井の妻)/荻野友里
お貞(奈緒の母)/池谷のぶえ
恵子(奈緒の妹)/大和田美帆
利夫/木村 了
比企(医師)/長塚圭史
京子(比企の妹)/高部あい
尾崎(金貸し)/赤堀雅秋
裏天さん/深貝大輔
(戯曲配役順)
あらすじ
昭和11年、千葉市郊外の登戸の浜近くの画家・久我五郎の自宅。
戦局が風雲急を告げる時節、プロレタリア救済の思想の下に結ばれた妻の病気(結核)がきっかけで、久我五郎は、画業を捨てて、千葉市郊外の自宅で、絵本の挿絵を描きながら看護に専念していた。
しかし、そんな五郎を次々と現実的な不幸が降りかかる。画壇との思想の行き違いから絵本の仕事も無くし、収入は激減。借金の返済期日も迫る。美緒の母は、弟のために相続権を放棄せよと美緒に迫り、夫婦を打ちのめす。親友の赤井は、身重の妻を残し、おそらく生きて帰れない予感を胸に出征する。親身になって診察をしてくれていた医師の比企からは、奈緒の病が絶望的と告げられた。
自分の病気のために油彩画を棄てた五郎に、絵筆を取ってと懇願する美緒。五郎は、妻のために油彩画を描くとともに、万葉集の朗読を聞かせる。

上演時間は4時間を超えます。最初に、長塚さんが口上で、4時間の長丁場で、奥歯をかみしめるような場面が続きますが、くいしばっていると奥歯がぼろぼろになりますので、リラックスして御鑑賞くださいとおっしゃってました。
舞台上には、装置は何も無く、砂が敷き詰められ、周囲に椅子が置かれ、俳優さんは砂場の中でそのお役になられます。万葉集を砂の中から拾い上げるシーンが象徴的ですが、砂上の歩きにくさや沈んでゆく感覚、ものを立てにくい状態が、久我五郎の閉塞感を表しています。千葉といえば、東日本大震災において、砂層の液状化の被害が甚大であったところです。奇しき符合に心が痛みます。
砂場の周りにウッドデッキがありますので前方席はちょっと見切れました。ラストシーンでは、待機中の俳優さん方も泣いたはりました。↓よろしかったらポチッとお願いしますm(_ _)m。
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同志であり、五郎のアイデンティティの全てである最愛の妻の生命の火が消えようとしているとき、自らの芸術、思想と向き合い、生と死、現世と来世の命題を根源まで突き詰めます。尾崎や比企兄妹と徹底的に論戦し、奈緒の母との葛藤も現実的に処理し、妻の命をこの世につなぎとめようとする凄まじいエネルギーに打たれるしかありません。
舞台上には全ての俳優さんがほぼ出ずっぱりですが、砂場で壮絶に演じておられるのは、主人公の田中哲司さん。叫ぶような真実を吐露する台詞ばかりですから、生半可な演技ではありません。ほとんど格闘技です。
対する奈緒役の松雪さん。死にゆく妻を静謐に演じられていながら、いのちの本質を見据えた的確な演技が、奈緒そのものでした。富豪の家に生まれ高い教育を受けながら左翼思想に走り、親の望まない結婚をし、病を得て若くして亡くなるという苛烈さが感じられました。

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