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2012年10月21日 (日)

春の雪・再見してきました。明日海さんのような「この世のものとも思えない精緻な美貌」の清顕には、なかなかお目にかかれませんので…

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画像をデイリースポーツさんからお借りしました。

「鹿鳴館」を拝見した回数(^-^;を思えば、2度では見たとは言えません。原作を読んだつもりで見落としていたことがたくさん見えました。

初日から、第二幕の薄幸の貴公子の滅びの部分は完璧でした。さて、課題の第一幕の性格の悪さはどないなってましたでしょうか。
初日は、主人公・松枝清顕(明日海りおさん)が、原作のような極端に性格悪い人に見えませんでしたが、今回は酷薄な人になってました。ただ一人の友人の本多(玉城りょうさん)を、自分の都合だけで友達扱いし、お付きの書生飯沼(宇月颯さん)を支配してました。周りの皆さんが真っ当で人間らしく生き生きとしていることが見えてきて、人間関係が有機的になってきたからでしょうか。

清顕は、幼稚でプライドが高いだけでなく、常に傷つける側に立つことに疑いを抱いたことがないのですね。ほんの少し心を乱されただけでこの世の終わりのように逆上し、何倍もの報復をすることを正当と考えるようなやつです。自分の美貌が人の心を支配し、常に優位に立つと信じている確信犯です。
しかし、友達は本多一人だけですし、腹心の飯沼を放逐してしまい、社会からの情報網から隔てられてますから、虚勢に過ぎません。難儀なお人や。
さて、生田センセが本当に原作に心酔されておられますことに感嘆します。四部作の伏線は、割愛したいところですが、丁寧に拾っておられます。色々あります。

原作に繰り返し登場する夢のシーンに、日露戦争の戦没者たちが海に返った英霊として登場します。清顕も海から登場します(ステキ!)。ネタバレ御免で、清顕の葬式場面と泣く女が何度か登場します。幻影のシーンのたびに、斬られたり刺殺されたりします。また、清顕は、この世代では振り回さない白刃を振り回します。東京地裁にも引き出されます。
豊饒の海は月にあります。プログラムの裏表紙は、豊饒の海を背に刀剣を手にした清顕の姿。きりっとしているので、飯沼勲かもしれません。
キーパーソンの一人は、映画版で割愛された重要人物・飯沼です。
薩摩から松枝家を頼って出てきて、12歳の若様付きになって7年。未だ薩摩弁。明治大帝を神と崇め、日露戦争の勝利を国力の高揚の頂点と信じ、平和と文弱の時代を憎んでいます。惰弱な若様は苦々しいですが、大切に思っておられます。押しつけがましい忠節と鬱陶しい生身の男の肉体をお持ちです。キャーのすみれコードぎりぎりのシーンあります。重要な場面と初めて知りました(飯沼勲は、清顕の父が手を付けた女の子宮に、清顕の家の書斎で宿るんですね。そっか。)。フィナーレで山伏姿になられたのも2部の伏線ですね。似合っておられました。
松枝家は元は薩摩の下級武士で武力により成り上がり、東京に出てきたお家ですから、お祖母さま(夏月都さん)は薩摩弁です。迫力あります。細かいところ気を遣っておられます。
松枝の御前(輝月ゆうまさん)。上品をかなぐり捨てる粗暴なおとうさまでした。ぼこぼこに打ちのめしておられました。ヴェローナ大公をなさっていた若手さんです。
殺人事件の被告人増田とみ(夏月都さん)。そうきましたか。これが重要なシーンであることに、40余年目に気付いたおとみです。
挨拶では、「清顕はだんだん弱って死んでしまうので、1回目の公演が終わったとき、もう一度できるか不安になります。休憩時間に仲間と話して元気になります。」と、言っておられました。夢の中でも何回か落命されますし…。↓よろしかったらポチッとお願いしますm(_ _)m。
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割愛されたのは、蓼科(美穂圭子さん)と綾倉の御前(美翔かずきさん)との密約。惜しい!美穂さんの歌も少なかったです。

聡子の咲妃みゆさんは、竹内結子さんの拵えや雰囲気を意識しておられるのかな?
ただ、竹内さんのお公卿さんのふんわり感より、名前とおりの聡明さで勝負されてました。清さまとの絡みより、自動車の中で、本多に心情を吐露する場面に真実味がありましたが、これもまた日々変わるでしょう。
本多の性的妄想シーンも一部にはないはず。分かりにくいように思いました。
豊饒の海第4部「天人五衰」のラストシーンを強引に押しこんでおられましたが、第一部のラストは違うように思います。凝り過ぎは大好きですが、たいていの方は、天人五衰を読んでおられませんので、あっと思いました。

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コメント

>スキップさま
作品が月と海を想起させるものですからぴったりですね。まさに月の貴公子であられます。
輝月ゆうまさんは、一番最初に歌い出すヴェローナを仕切っておられる御方です。しっかりしたはります。華奢な明日海さんをぼこぼこですから、手加減なさってたと思われます(たぶん)。
みなさん御若いのに個性的で演技が御上手で月組の伝統は確実に継承されています。いいなあ。

投稿: とみ(風知草) | 2012年11月14日 (水) 00時03分

とみさま
明日海さんの研ぎ澄まされた美しさが際立っていました。
生田先生がずっと温めていらした企画で、「絶対、
明日海で」と考えていらしたというのも納得です。
若手中心の出演者でしたが、落ち着いて品のある舞台
でしたね。
松枝侯爵役の輝月ゆうまさんはロミジュリでヴェローナ大公
をやられた方でしょうか。
明日海さんよりも下級生で大変だったでしょうに
きっちりお役目果たされていましたね。

投稿: スキップ | 2012年11月13日 (火) 12時41分

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