シンベリン シェイクスピアさんがモティーフ総動員なら、蜷川さんも引き出し全開、全持ち駒棚卸しで勝負!
戯曲:W・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:蜷川幸雄
出演
阿部寛/ポステュマス-ブリテンの紳士、イノジェンの夫
大竹しのぶ/イノジェン-ブリテンのシンベリン王と先妻の娘
窪塚洋介/ヤーキモー-ローマ人、
ポステュマスとイノジェンの貞節を賭ける。
勝村政信/クロートン-シンベリン王の後妻の連れ子
浦井健治/ギデリアス-シンベリン王の第一王子、
幼時にベラリアスに誘拐される。
瑳川哲朗/ベラリアス-追放された貴族、
二人の王子を誘拐する。
吉田鋼太郎/シンベリン-ブリテン王
鳳 蘭/王妃
大石継太、丸山智己、川口 覚、井口恭子、手塚秀彰、塾 一久、大川ヒロキ、岡田 正、二反田雅澄、清家栄一、飯田邦博、塚本幸男、井面猛志、篠原正志、松田慎也 他
あらすじ
帝政ローマ、アウグストゥス時代のブリテン国。王シンベリンは、一人娘イノジェンと後妻の王妃の連れ子クロートンと結婚させようと考えていたが、イノジェンは紳士ポステュマスと結婚してしまった。激怒した王はポステュマスを追放する。ローマへ渡ったポステュマスは、そこで出会ったヤーキモーと、つまらないことから妻の貞節を賭ける。ヤーキモーはブリテンに赴き、彼女のブレスレットを盗み出しポステュマスに戦利品として突き付けた。妻の不義を信じてしまった彼は、召使いに妻の殺害を命じる。
誤解を解きにローマへと向かうイノジェンだが、道中、迷い込んだ洞窟で一人の老人と2人の若者に出会う。
そんななか、ブリテンとローマは戦闘状態に突入し、後悔するポステュマスは、死地を求めてローマ軍の一員としてブリテンに向かう。
4日ソワレを観劇。荒唐無稽な悲喜劇ですが、蜷川さんは、英国での勝負を意識した日本的な感性をふんだんに盛り込み、知的で洗練された演出をなさいました。
蜷川さんの特質の2つの定番はありませんでした。心の中で松ぼっくりをドサドサと降らせました。↓よろしかったらポチッとお願いしますm(_ _)m。
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蜷川さんのお芝居は、開演時間の前から始まります。舞台上には楽屋の化粧台がしつらえられ、俳優さんたちは楽屋着(ローブや浴衣)で準備中です。はじめから終りまで楽屋でも文句言わへんと悲壮な決意は杞憂に…(ずっと楽屋の演出ありましたからねえ。)。ずらっと一列に並んだ俳優さんがローブを脱ぎ捨てローマ時代の人物に変身。装置が有機的に動いて一気に物語の世界に誘ってくださいます。
ブリテンは水墨画の深山幽谷のパネル、ローマは、御馴染のロムルスとレムスの彫像に源氏物語絵巻の吹き抜け屋台の大和絵パネル、山中は歌舞伎の書割のような岩屋、ジャポネスクなスーパームーンと、分かりやすく美しい装置です。戯曲に賛否両論があろうかと思われるデウス・エクス・マキナのシーンには、デウス様がかなり具象的な大鷲に乗って御登場されます。
(一本松のタネから発芽した苗の画像がありましたのでお借りしました。)
極めつけは、大団円の場面の一本松。別離と苦難からの和解と再生を象徴し、日本の心を示す印象的な幕切れでした。セリフを杉から松に変えておられました。松ぼっくりは降りませんでした。
また、常連さんのベテラン俳優さんを中心に実力派を揃え、こなれた舞台に仕上がっていました。俳優さん方には、何も申し上げることはございますまい。自在にお役になりきり、楽しみながらも高貴な人物らしい品位を醸し出しておられました。
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