隠蔽捜査 上川隆也さんは過剰なまでに自信に満ちた男がお似合いです。
上川隆也さん主演の「隠蔽捜査」を、京都四條南座で拝見しました。「隠蔽捜査」は,人気を博した警察ドラマ『ハンチョウ』で知られる今野敏さんが描く連作警察小説の舞台版で、同時に「隠蔽捜査2」も上演されました。ワタクシが拝見したのは、第一作の方です。公式HPはこちら
原作:今野 敏
脚本:笹部博司
演出:高橋いさを
あらすじ
竜崎は警察庁のキャリア官僚で,警察庁長官官房で総務課長としてマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲から変人とみなされているが、エリートは国家を守るため身を捧げるべきと,独特の信念を持っている。
ある日,暴力団員の連続殺人事件が発生した。彼は,10年前の少年犯罪が絡んでいるのではないかと疑うが,捜査は遅々として進展しない。同じキャリア官僚で幼馴染の伊丹に詰め寄るが、伊丹は取り合わない。そんな中、浪人中の息子が薬物を使用していることを知る。
上川さんが演じる警察庁キャリア官僚・竜崎の矜持と自己にも他者にも厳しい生き様を描いた舞台です。主人公は警察キャリアですが、組織の正義と真の正義のトレードオフというのは、凡人にも迫られるシチュエーションありますね。身につまされます。
また、家族を守るということと曲直を正すということが真っ向から対立することもあります。仕事と使命一筋で,家庭のことは妻に任せきりの男が,家族の危機にどう対処するかが,サブストーリーの域を超えて重要なプロットとなっていて感動的です。妻子役の皆さんとも息があっておられました。
竜崎と対照的な生き方を余儀なくされながらも,深いところで繋がっている伊丹に扇雀さん。冷徹さと甘さを併せ持った人間らしい男として,或いは竜崎をライバル視しながらも負けを認めざるを得ない友として,舞台上に存在しておられました。ストーリーテラーでもあります。
確かに、竜崎は、同僚や夫なら難儀な人と思いましたぁ~。本当にかっこいいですから、いつまでも眺めていたいです。
上川さんは、カテコのあいさつでも、竜崎のままで、公演の盛況は我々の力ですと自信満々に言って笑いをとっておられました。今野氏も舞台に上がってご挨拶されました。↓よろしかったらポチッとお願いしますm(_ _)m。
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キャスト
竜崎伸也(警察庁長官官房総務課課長):上川隆也
伊丹俊太郎(警視庁刑事部長):中村扇雀
谷岡裕也(警察庁長官官房広報室長):近江谷太朗
坂上栄太郎(警察庁刑事局捜査第一課長):板尾創路
阿部一郎(警察庁刑事局捜査第一課係長):本郷弦
牛島陽介(警視庁長官官房参事官):朝倉伸二
戸高善信(大森署巡査部長):小林十市
福本多吉(東日新聞社会部部長):平賀雅臣
黒岩誠二(ライター):宮本大誠
竜崎冴子(竜崎の妻):斉藤レイ
竜崎美紀(竜崎の娘):西田奈津美
竜崎邦彦(竜崎の息子):岸田タツヤ
警察小説の歴史を変えたと称される原作は,そのクオリティの高さから,第1弾で第27回吉川英治文学新人賞を、続く第2弾『果断』で第21回山本周五郎賞と第61回日本推理作家協会賞長編部門を受賞されています。
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コメント
月台さま
ハードボイルドですねえ。組織の論理と人倫の葛藤はスーパーマンだけのものではなく全ての人の課題です。家庭と対比させたところが分厚いです。二作同時上演がいい取組だったようです。
投稿: とみ(風知草) | 2011年11月24日 (木) 13時05分
今野敏の竜崎シリーズは,愛読書の一つです.
あのなんとも言えないキャリア官僚の世界(国より省を大事にし,年次を気にし,自分たちが国家だと思っている…)と犯罪捜査のバランスが絶妙ですね.
演劇の表現も大変に興味深いです.
レポート有り難うございました.
投稿: 月台 | 2011年11月23日 (水) 23時20分