« 秋の簪を作ってみました | トップページ | 文楽 冥途の飛脚 The Lovers' Exile »

2011年9月23日 (金)

奇ッ怪

芸術監督:野村萬斎
作・演出:前川知大
美術:堀尾幸男
出演:仲村トオル、池田成志、小松和重、山内圭哉、内田 慈、浜田信也、岩本幸子、金子岳憲
あらすじ
東京暮らしの矢口(山内圭哉)は、父や村人たちが死に廃社となった生家の神社を訪れる。崩れかけた神社に棲みついているはホームレス風の男、山田(仲村トオル)。そこへ温泉で村の再開発を計画する業者(池田成志)と地質学者(小松和重)がやって来て、山田は3人に生と死をめぐる話を語り出す。

事故死した後臓器移植した息子の死を受けいれられない母親、うつ病の妻が自殺し、病院不信からにせ精神科医になる男、瀕死の怪我人のために救急車を呼ばなかったことを悔い、その男の生き霊に取り付かれる男、山田が鎮魂のエピソードを語るうちにも、、硫化水素の噴出で死んだ男女が周辺をさまよう。

日常と異界が輻輳的に同次元に存在する、あるいは場所や物に残存するエネルギーが空間の均衡をゆがめ交錯する設定は、前川さんの得意とするところだ。怪談と相性は抜群だが、複式夢幻能にはぴったりマッチする。装置も能舞台を抽象化した奥行きの深いもので、過去と現在、冥界と現世の接点を上手に視覚化しておられる。
天変地異で村全体の命が一夜にして失われて無人となってしまったという設定は大震災を意識したもので、いまも窪地に充満する硫化水素は勿論放射能である。しかし、死者は彼岸の彼方ではなく、ごく近くにあって、生前と同じ生活を繰り返しているというメッセージは、亡くなった方々への鎮魂であり、生き残った者への赦しと癒しである。
語りにより物語が進むという能の様式ではあるが、英雄や美女を扱う本歌取りの作品はなく、狂言の登場人物に近い市井のエピソードがおかしくも怖く、達者な役者さんたちによって繰り広げられる贅沢な時間である。
登場する死者たちもおどろおどろしくもなく、必要以上に英雄的でも美化されているわけでもなく普通である。同じ空間に同時に存在し、交錯したとしても不思議と感じない。また、対話と沈黙との間に何程の違いがないということもしっかり見せてくれる。無音の雄弁が心に染みました。
若干、沈黙の時間に客席に硫化水素がおりてきたのか、能の活動が停止しましたのが不覚↓よろしかったらポチッとお願いしますm(_ _)m。
にほんブログ村 演劇ブログ 演劇(観劇)へ
にほんブログ村

|

« 秋の簪を作ってみました | トップページ | 文楽 冥途の飛脚 The Lovers' Exile »

演劇」カテゴリの記事

コメント

悠さま
あのお立ち位置は狂言回しというのですね。てっきりワキと思ってました。シテはたくさんおられますね。前作品のような本歌取りがないのが新鮮でした。

投稿: とみ(風知草) | 2011年9月25日 (日) 21時57分

仲村トオルさんのてきや風,狂言回しの役,よかったですね.(初めての仲村さん@舞台ですけど).
TV@朝ドラの串田和美さんが,舞台での姿と別人でびっくりしたのと似てます.

投稿: 悠 | 2011年9月23日 (金) 15時22分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106008/52803480

この記事へのトラックバック一覧です: 奇ッ怪:

« 秋の簪を作ってみました | トップページ | 文楽 冥途の飛脚 The Lovers' Exile »