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2010年9月17日 (金)

義経千本桜は全席完売。あと一度しか見られないo(;△;)o今度こそ確かめるぞ玉様の企み

各紙の劇評は意外に辛口だ。義太夫狂言の習熟度が低く、悲壮感に欠ける知盛、情感に乏しい権太、愛嬌の無い忠信…。それもこれも、海老蔵丈ならもっと出来るはず、あの輝きに技術が備わっていないのが惜しいという期待をこめてのことだろう。
市川海老蔵丈が32歳という若さで、義経千本桜の三役を通しで務められるということは、海老蔵時代というひとつの時代の開幕だ。その暴力的な魅力には抗いがたい。細かいことはともかく、我ら観客は、海老蔵丈に惹きつけられ熱く沸いていた。全日程全席完売ということからも、公演の大成功は動かしかたい。
そうしてこうも書かれている。脇を固める役者さんたちが、容姿も美しく、技術も的確、ベテランは非常に適材適所、若手は抜擢に応え、バランスのとれた良い座組で、東京の大歌舞伎並みの充実となっている。南座でこのような公演が開催されることが何より喜ばしいと。

しかし、ワタクシ的には、玉三郎丈は、それは元より想定内で、海老蔵丈が立派だという所感をとることを意図されて、この公演を組み立てておられるのではないという気がする。

海老蔵丈は、スパークする目力、錦絵のマスクにアストリートの肉体、フォルテピアノの声を持つ神に愛されし者だ。他の役者さんたちと別物のように見えてしまう。スケールとオーラの差は歌舞伎初心者のワタクシでも顕著に感じられる。
玉三郎丈がそのことを分かったうえでこの舞台を構成されているとしたら、答えは一つしかない。文楽の主演の人形とその他の人形の大きさの違いや首(かしら)の差である。竹本にこだわった音曲の使い方といい、全体を文楽公演に見立てておられるのではないか。

文楽では主役の人形はひときわでかく、衣裳もきらびやかで、首も印象的だ。ナットク。玉三郎丈の自分の輝きをしぼる“おりう”の演技も見事だ。大物浦で安徳帝の歩く道に白い布を確か文雀さんは敷いておられた。必ずしも全部は成功しておられないところがほほえましい。
壇ノ浦から二年の月日が過ぎているので、安徳帝が大きくなっているのは意図してか偶然かどちらでしょう(爆)。
以上はマイ仮説。確かめます。昼の部はかなり成功してました。↓よろしかったらポチッとお願いしますm(_ _)m。
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主要なお役、役者さんと首を整理してみました。文楽にない役は割愛しました。
種類は⇒こちら

海老蔵丈は検非違使、亀三郎丈は陀羅助でしたか。亀三郎丈の朗々とした美声ときちんとした動きが楽しく、亀寿丈のお声がどんどん大きくなっておられるのがうれしいです。
梅枝丈のお里が瑞々しく、行儀の良い弁慶も好きだぁ。薪車丈の小金吾も大健闘やしぃ。
吉弥丈の姿が最も文楽人形の老女方に近いように見えるのはひいき目だろうか。

海老蔵:知盛/検非違使→文七、権太/小団七、
     源九郎狐/源太→検非違使→孔明、佐藤忠信/検非違使
翫 雀:源義経/源太
権十郎:武蔵坊弁慶/大団七
市 蔵:早見藤太/鼻動き、鮓屋弥左衛門/正宗
亀三郎:相模五郎/陀羅助、亀井六郎/時代陀羅助
亀 寿:入江丹蔵/源太、駿河次郎/検非違使
門之助:弥助実は三位中将維盛/源太
男女蔵:梶原平三景時/大舅
薪 車:桐竹勘十郎(爆)/狐、主馬小金吾/源太

玉三郎:おりう実は典侍の局/老女方、静御前/娘
壱太郎:静御前/娘
梅枝:お里/娘
吉弥:小せん/老女方
右之助:おくら/婆
友右衛門:若葉の内侍/老女方

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歌舞伎」カテゴリの記事

コメント

>るみさま
コメントありがとうございます。
顔見世半分を節約してもこちらかなと思い観劇しています。
あ、そうだ、海外公演でした。そうだとしたらよけいに義太夫狂言の細かいこだわりは通用しないはずです。何を考えておられるのでしょう。
しかし、文楽になじみがないのは、残念ながら日本人も欧州も同じはず…。く~分からなくなってきました。

投稿: とみ | 2010年9月23日 (木) 20時43分

全日程全席完売とは、すごいですね。
行きたかったのですが、9月はちょっと忙しくて南座も新歌舞伎座も行けずじまいで残念です。

文楽にも精通してらっしゃるとみ様の劇評に、「なるほど」と思いながら読ませて頂きました。

辛口評が多いようですが、今回はそうだったとしても今後どう成長していくかを見ていくのが、歌舞伎の楽しみでもあるんじゃないかなと思ってます。
今回、見られなかったのが非常に残念です。

投稿: るみ | 2010年9月23日 (木) 11時17分

>紅娘さま
玉様の(・・?)を楽しみ、それをカバーなさる役者さんの健闘を楽しんでいます。
文雀さんの老女形首NO1のファンで、密かに玉三郎首と勝手に決めてます。薪車丈は、お江戸のお客様にも評判がよいようでほっとしました。日高川の船頭、直美さんの相手役の人形遣いですから、両方出来はります。

投稿: とみ | 2010年9月23日 (木) 10時06分

>祥子さま
核心に迫ったコメントありがとうございます。
玉三郎丈はどちらに転がっても何とかなるよう保険をかけられます。例えば、政岡一人傑出している状態のときは孤軍奮闘の孤独な戦いを、周りも慣れてくれば実は隠れたお味方は少なくなく、皆が支えてくれていたとまとめられます。
テイストの異なる海老蔵権太と吉弥小せんのカップルに意味がないはずないと考えて考察してみました。
文楽に拘られるなら、人形遣いは海老蔵丈の早替わりでなくてはならないのですが、異なる役者さんを起用なさるなら御無理なさらない方が…。と、いうのが考えこんだ動機です。
仮説はいくつか用意しないとあきませんね。ありがとうございました。

投稿: とみ(風知草) | 2010年9月23日 (木) 07時27分

22日、昼夜と見てきました。

>薪 車:桐竹勘十郎(爆)/狐

まさしくその通りでした 
小金吾も良かったです

投稿: 紅娘 | 2010年9月22日 (水) 23時52分

玉三郎さんの企みがとみ様の推測通りでしたら、なおのこと海老蔵さんの義太夫の出来なさが傷になりますね。周囲はしっかり出来てるのでこの役者だけが出来てない。単なる人形がそこにいるだけです。文楽人形として動けてない。私には周囲が良いだけに、彼だけまがいもののように見えます。

投稿: 祥子 | 2010年9月22日 (水) 15時04分

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