菊之助丈御贔屓の皆様、録画してから劇場へ・帰宅してからすぐ見ましょうぞ(加筆)
女形の大役・玉手は、継子の俊徳丸に恋をし、我がだけのものにせんと毒酒で業病にしてしまい、出奔した俊徳丸を追うという凄まじい女性だ。古くはインド説話に起源し、西に流れギリシャ悲劇のヒッポリトゥス(パイドラかも)からラシーヌのフェードルに。東に流れ中国を経て俊徳丸説話から能の弱法師、そして義太夫の摂州合邦辻となり歌舞伎となっているという古今東西の芸能の種となる女性の宿業の物語だ。
それぞれの国の時代、モラル、宗教、大衆の好みにより主題は変奏されるが、本邦では、実は、主君の恩と継子への義理を立て通すというおぢさん好みの返り忠が主題の健全なホンにより上演される。
しかし、主君としての夫への義理に偽装した俊徳丸への激しい恋慕はみーんな知っており、知っていて騙されてやり、淑徳を称えるという観客も巻き込んだ共犯のお芝居なのよね~。
菊之助丈は、耐えるだけでなく自ら考え行動するという現代にも通用する女性の強さを表現するという方針で取り組まれたようだ。しかし、様々な感情が今際の際に交錯し、痛い、辛い、嬉しいがごちゃまぜになると客席に伝わらないと玉様に教えられ、今の自分が可能なひとつの方法に行き着き、初日はそれで行かれるという。
また、役に対する深い解釈とそれを客席に伝える確かな技術が必要と御父上の菊五郎丈。
御名残四月大歌舞伎の最中から真剣な御稽古をなさっておられたようだ。役者さんは、観客をエキサイトさせても、自分は生涯の芸道を見据え、常に冷静であられる。
映像は、前日の舞台稽古まで収録されており、当然のことながら、観客の反応や共演者さんたちとの掘り下げにより進化し続けることだろう。
結論。初日を拝見したが、必ずもっぺん見んならん。
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