かたりの椅子・リアリティあり過ぎ、びわ湖ホール上演のための戯曲かも
公演日程:3月28日(日)17:30
作・演出:永井 愛
キャスト
竹下景子、山口馬木也、大沢健、でんでん、松浦佐知子、花王おさむ、銀粉蝶、内田慈
永井愛の3年半ぶりの新作。地方都市を舞台に、官僚主義、長いものに巻かれろという精神的風土と葛藤する個人の「インテグリシティ」に斬りこむブラックコメディ
あらすじ
イベントの企画・制作で実績を積み、50代にしてやっと、小さなイベント会社を構えることができた六枝(むつえだ)りんこ。初仕事は加多里市で計画されているアートによる地域おこし事業のプロデューサーだ。
このイベントのコンセプトは、アートディレクターの造形作家の入川(いりかわ)が提唱する、市の随所に「かたりの椅子」というアート作品を配し語らう「かたりの椅子プロジェクト」と、市の歴史を負の部分も含め市民自身が演じる市民劇「かたり市外伝」の上演の2本の柱だ。
しかし、文部科学省から天下りのかたり市文化振興財団の理事長雨田は、椅子の安全性や個人情報の暴露に危機感を抱き、事なかれ的な理事長案に差し替えるよう、実行委員たちを切り崩すよう六枝に強要する。市民の本音の語り合いを引き出そうとする実行委員たちと、財団と市の間に立って苦渋する六枝は、次第に自身が納得する仕事を進めたいと奔走するが…。理事長の腰巾着、地元の中堅及び若手公務員、街の商工会の青年会長、市立美術館館長、ライフスタイルデザイナーと一筋縄ではゆかない面々に振り回され次第に追いつめられてゆく。
演劇・観劇・ミュージカル
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常に社会的な問題を取り上げメッセージ性の高い戯曲を創作続ける永井さんの新作は、官僚主義と予定調和を重んじる日本人の精神性への投石だ。公演は世田谷パブリックシアター、大阪のシアタードラマシティ、富士見、新潟、いわき、亀戸、松本を回られ、びわ湖ホールが千秋楽だった。
ギョーカイや元官僚に綿密に取材したとあって、台詞やキャラクターの造形にリアリティがありすぎて笑える。客席には、財団法人びわ湖ホールの理事たち、財団職員、県の文化行政関係者たちが間違いなくおられたはず。戯曲の事前チェックをなさったうえの上演と考えると可笑しいやら面白いやら。自虐ギャグというか、なかなか太っ腹なご決断と敬意を表する。これは、世田谷と大阪で観たらあきません。
主演の竹下恵子さんと助演の銀粉蝶の対決は、それぞれの芸風に相応しい設定のキャラクターなので大爆笑だ。東京で小さな事務所を開いている設定になっているが、実はあて書きで愛知県出身なのか、流暢な名古屋弁が飛び出すと、客席は大いに沸いた。
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コメント
>悠さま
客席と舞台上の役者さんのシンクロがビミョーですね。しかし、文化政策の予算が削減されれば、この戯曲もリアリティー失います。新作は書き続けなければならないのですね。
投稿: とみ | 2010年3月29日 (月) 08時22分
後半の台詞って、鵜山さんが新国立の芸術監督を辞めさせられたときの、実際の会議とか、コメントとかが使われてるみたいで、リアルでした。
歌わせたい男のときは、余裕があったのですが、今回は、身にしみて考えさせられます。っても、びわ湖で上演できるだけ、いいんですけど(^^)
投稿: 悠 | 2010年3月28日 (日) 23時43分