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2010年2月16日 (火)

第18回南座歌舞伎鑑賞教室・美吉屋の国訛嫩笈摺は当代一・泣くより他のことぞなき

第18回南座歌舞伎鑑賞教室・美吉屋の国訛嫩笈摺は当代一
2月14日(日)千秋楽を拝見。
例年は4月に10日間程度開催される南座陽春の行事だが,今年は諸般の事情で梅春に5日間のみの公演となった。しかし,楽しい解説と南座の良いお席に座って本格的な歌舞伎が見られるということで人気は変わらず,連日満席だったようだ。千秋楽も大入りだった。

第1部の九雀さんの出端は今年は助六。日本一の良い男になりきって出てこられ,「この鉢巻が御不審か〜」でどっと沸いた。恒例の歌舞伎ヒロイン扮装コーナーはしたがって揚巻。名乗らんと損やしぃ。舞台機構,つけ打ち,隈取,作劇のルールなどを楽しく解説いただいた。

第2部は「国訛嫩笈摺(くになまりふたばのおいづる)どんどろ大師の場」。
義太夫で人口にかいしゃしているあの巡礼お鶴の「ととさんの名は…」だ。人形浄瑠璃で人気演目でも,歌舞伎では上演回数が少ないものとして「生写朝顔話」,「桂川連理柵」,「三十三間堂棟木由来」などあるが,これはその筆頭だ。義太夫の名作が歌舞伎で上演されにくいのは,役者の花を際立たせるというより,義理やしがらみに翻弄され,愛別離苦に悶々とする人間を語るもので,興行主には厳しく,大夫,三味線及び役者には苛酷で,観客をうぐぐぐと泣かせるからであろう。

そんな義太夫歌舞伎に最も相応しいのが我らが上村吉弥丈。贔屓の目から見ても,控えめで,行儀もよろしく,程を知る役者さん。そのため,通常公演では,どうでもいい人,しどころのないばばさま,泣くだけのお内儀が多い。
どんどろのお弓は,夫と共に盗賊となって盗まれたお家の重宝を探索する気丈な女だが,この場では子を思う無力で悲しいひとりの母親である。この地味なお役には日本一であられる。糸にのる動き,のりじの台詞回し,かどかどのキマリ。美しい姿は文雀さんが遣われる人形のよう!(華麗で激情派の蓑助さんではなく)隠し切れない真情,押さえきれない母性愛。愛大夫さんと長一郎さんの床も火を吐いておられた。この三位一体感が歌舞伎で醸し出されるところがうれしい。

お鶴には,注目の吉太朗ちゃん。3年前の美吉屋の自主公演「みよし会」に客演したのが歌舞伎界入りのきっかけだった。当時5歳の彼は,3つのときに置き去りにされ,すぐ巡礼に出たようないとけなさだったが,晴れて部屋子となった今は,健気さはそのままに演技も所作も本格的に…。
「わしも母様があるならあの様に髪結うて貰はうものと…」,「お前がその様に言ふて泣いて下さりますによつて、どうやら母様の様に思はれて、わしやこゝが去にとむない。」
泣いた泣いた泣きましたとも,泣かなしゃーないように拵えてある。観客の涙を絞りきり,わっと泣きじゃくりながら花道を駆け抜ける彼に,場内割れんばかりの拍手が!

お茶をすぐ切らせる茶店のお花に純弥さん,コミックリリーフの尼妙珍と妙天に和之介丈と比奈三丈,大夫・竹本愛大夫さんと三味線・豊澤長一郎さんと出演陣も,手堅いながらアットホームで暖かい雰囲気の方々ばかり。

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さて,原作では,お弓は思い直してお鶴の後を追うが,会うこと叶わず,哀れなお鶴は小金を持っていたばっかりに,あれほど会いたかったととさんの手にかかって無残な最期を遂げる。
この日は千秋楽だったので,カテコでお楽しみが。
挨拶に本舞台に出てこられた吉弥丈が「お鶴〜。おじゃ」と呼びかけられる。揚幕から駆け出したお鶴ちゃんは,花道七三でかかさんにぎゅーと抱いてもらえるという原作無視のとんでもないハッピーエンドに。お鶴ちゃん,かかさんに会えてよかったね。
ようもようもこんだけ泣かしてくらはりましたなというほど泣かせてもらいましたえ。

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コメント

>ムンパリさま
今、いっときなんですね。吉太朗ちゃんはすぐ大きくなられますから。
愛大夫さんよかったですね。床のパワーも凄く、上手の前の床シフトでも一度聞きました。
本家でも上演して欲しいですね。

投稿: とみ | 2010年2月24日 (水) 08時17分

とみさま。
泣きました〜。涙がじぇんじぇん止まりませなんだ〜。
吉弥さんと吉太朗くん、上方の役者さんとして、まさにいまが
この母娘にピッタリの時期、ベストな配役ですね♪
じっくりと丸本歌舞伎に浸らせていただけた、エエ舞台でした。
関西でもあまりかからない珍しい演目なんですか!
浄瑠璃では定番なのに・・・。

エントリ違いですが、しのぶさん、ほんとによかったですね〜!!
おめでとうございます。

投稿: ムンパリ | 2010年2月23日 (火) 23時51分

>どら猫さま
舞踊はどちらかというと得意ではあられませんし、本公演でもありませんから、我ら贔屓以外はマイナーリーグ観戦感は否めません。しかし、これは持ち役、当代一ですから。
鷺娘や道成寺のときは心配で心配で土日昼夜見ましたが、これはそんなに通いつめませんでした。^ロ^;

投稿: とみ | 2010年2月17日 (水) 08時11分

>とみ様
 わたくしメも楽日の予定でしたのに、風邪で行けませなんだ。(涙、涙)
 とっても良かったようですね。しばらく舞踏続きで久しぶりにお芝居が拝見できると楽しみにしておりましたものを・・・。
 とみ様の感想を拝見してあれこれと想像して、やっぱり行けばよかったかなぁと後悔しきり。でも、無理はできませぬゆえなぁ。
 再演して下さることを祈ります。感想を有難うございました。

投稿: どら猫 | 2010年2月17日 (水) 00時08分

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