NINAGAWA十二夜 in 大阪松竹座初日
初日を迎えた大阪松竹座『NINAGAWA十二夜』凱旋公演。マチネを観劇。
戯曲:W.シェイクスピア、脚本:今井豊茂、演出:蜷川幸雄
キャスト
斯波主膳之助・獅子丸実は琵琶姫/尾上 菊之助、織笛姫/中村時蔵、右大弁安藤英竹/中村翫雀、大篠左大臣/中村錦之助、麻阿/市川 亀治郎、役人頭嵯應覚兵衛/ 坂東亀三郎、従者久利男/尾上松也、海斗鳰兵衛/河原崎権十郎、従者幡太/坂東秀調、比叡庵五郎/市川團蔵、舟長磯右衛門、市川 段四郎、左大弁洞院鐘道/市川左團次、丸尾坊太夫・捨助/尾上菊五郎
2005年歌舞伎座、2007年歌舞伎座と博多座、そして2009年LONDON、新橋演舞場、大阪松竹座と再演を重ねてより洗練されたNINAGAWA十二夜がとうとう大阪へ…。キャストも不動の菊五郎劇団を中心とする十二夜カンパニー。大阪初日とはいえ、先週新橋で大変な盛り上がりで千秋楽を迎えたばかりのため、一座にとっては中日の折り返し点か。
皆さんが書いておられるように3幕18場から2幕15場に集約され上演時間も4時間を超えていたものが3時間35分になっている。ああだこうだの冗長な場面が刈り込まれているようだ。
カンパニーの結束が固くなったこと、4年の間にそれぞれ心技が磨かれたことなどが相乗効果となって感動的なエンタテイメントが完成していた。
何より菊之助丈、斯波主膳之助がきりっと立派に…、ほれぼれするような美丈夫ぶり。獅子丸実は琵琶姫の娘心の切々とした表出がますます瑞々しく、日本一の美女ぶり。
短くなったとはいえ二幕冒頭の舞姿に、やはり泣ける。原作でもオーシーノ侯爵に女の真実の恋とはと訴えるクライマックスだが、麗しい菊之助丈の華やかなお小姓姿に、見ているだけでありがた涙でうるうるになる。迦陵頻伽の声か天上の音楽か紛うお声に前後不覚となった。
2007年に腰をぬかさせていただいたCGアニメ風に、女性と男性の間を自在のスピードと配分率で行き来する危ないテクニックはあまり誇示なさらなかったが、知らず女性が出てはっと気づくところ、女性であることがばれそうになり泣きそうになるところは、意識なさってか、分かり易く演じておられた。
世界広しといえども、歌舞伎の兼ねる役者尾上菊之助以外にヴァイオラとセバスチャンを完璧に演じ、双方で男女からためいきを取れる役者さんがおられようか。
英国演劇界は、世界にワンアンドオンリーの菊之助丈に震撼せよ。英国演劇界は、「十二夜」ひと演目のためだけでも、女形さんの復活を検討しないと、シェイクスピアの国の名を返上しなければならないぞ。
初演の感想はこちら、再演はこちら
![]() 歌舞伎 |
英国女優のケイト・ブランシェット氏(アイム・ノット・ゼア)やティルダ・スウィントン氏(オルランド、コンスタンチン)は男性もカッコよく演じられるが、健気な娘の方は苦戦されそうだ。トレヴァー・ナン版のイモジェン・スタッブス氏もセバスチャンは演じておられない。
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コメント
>ムンパリさま
鏡に映し出された姿が、背を向けておられても見えますから、女の子の種明かしなさってます。いいですね。兄上の台詞に鏡に映ったわが姿をみて妹を思い出さない日はないというのもいいです。
なんだか姉上さまに似て来られました気がします。
投稿: とみ | 2009年7月20日 (月) 00時04分
とみさま。
大阪でようやく見ることが叶いました。
あらためまして初演・再演の際のエントリもあわせて
読ませていただきました。
初演時からすると、ずいぶん変わったのでしょうね。
菊之助丈のため息が出るほどの美しさと心情表現は、
3階最前列からでもオペラグラス越しによ~く見えました。
ほんとうに面白い舞台、実力ある役者さんたちですね♪
投稿: ムンパリ | 2009年7月19日 (日) 09時10分
>麗さま
コメントありがとうございます。
シェイクスピアの世界と歌舞伎の表現が幸福な結婚をした素晴らしい舞台でした。初演、再演と蜷川さん何なさったの状態でしたが、とうとう達成されましたね。
実は、歌舞伎の本朝廿四孝が暗喩になっているのですよ。お暇なときに、おとみの妄想劇場もご覧になっていただけたら嬉しいです。
投稿: とみ | 2009年7月15日 (水) 00時57分
再演を重ねているだけあって、テンポ良くとても楽しめた舞台でした。
私は初見でしたが、お話も分かりやすく、面白かったです。
どうしても、シェイクスピア=難解というイメージが。(笑)
セットの美しさもさることながら、
菊之助さんの美しさにためいきつきまくりでした♪
亀次郎さんや菊五郎さんには沢山笑わせてもらい・・・疲れました。(笑)
投稿: 麗 | 2009年7月14日 (火) 23時59分
>火夜さま
歌舞伎は視覚と身体表現のパフォーマンスですから、英国でああだこうだと全く言われんならんことあらしません。
蜷川さん、自己の作品を乗り越えて、オールメールシリーズで十二夜をやって欲しいです。高橋さんならいけるかも。
投稿: とみ | 2009年7月 8日 (水) 20時21分
>スキップさま
宝塚歌劇でしたら、一世代交替してます。歌舞伎でも金太郎ちゃんが襲名です。十二夜も蜷川芝居らしくなりました。
くどいようですが、この座組この装置衣装で本朝廿四孝できるんですよ。別エントリでつぶやきます。
投稿: とみ | 2009年7月 8日 (水) 20時16分
初演〜再演〜当月松竹座の変遷がよくわかりました。ありがとうございます。
楽近くの週末にミラー効果的にどうかとおもわれる3階すみっこの席でもう一度みるのでたのしみにしています。
投稿: 火夜(熊つかい座) | 2009年7月 8日 (水) 12時46分
とみさま
初演も再演もご覧になったとみさまならではの
ご視点のレポ、興味深く読ませていただきました。
主膳之助さんはより男らしく、琵琶姫はよりたおやかに
おなりと拝察いたしますが、それにしても美しかったです。
ジェンダーレスの梨園にあっても、菊之助さんの立役・女方
双方の美しさは稀有の存在ですね。
唯一の難点は、その美しさに目がくらんで回りの人物が
目に入らなくなることでしょうか(笑)。
次回はしっかり目を据えて観たいと思います。
投稿: スキップ | 2009年7月 8日 (水) 01時19分
>ハヌルさま
歌舞伎座は広かったから相当感激しました。なんといっても、どこから見てもよう見えるという仕掛けがうれしいです。
初めて拝見したとき、座頭さんが何なんだと思いましたが、藪原検校でそっかと分かりました。
いい舞台はやはりいいですね。
投稿: とみ | 2009年7月 7日 (火) 00時37分
とみさま、私も初日(夜ですけど)行ってきました!
初めての「NINAGAWA十二夜」でしたので、長かったとか
短くなったとか、わかりませんけど、舞台後ろとサイドに
マジックミラーを使った演出に感激!
衣裳も照明も音楽もとても素敵で、ユートピアにでも
はまり込んだようでした。
菊之助さんの早替りの素晴らしさと、その美しさに今更ながら
惚れ惚れしましたよ♪
それと、なんと言っても麻阿@亀治郎さんが、サイコーに
ナイス演技でした!
投稿: ハヌル | 2009年7月 6日 (月) 23時47分
>Anjyuさま
ご立派。ワタクシもお手伝いできるよう心掛けます。
菊様、綺麗でしたね。健気で真摯で覇気があってお勇ましくて凛々しくて、なんとピュアであられるのでしょう。
手探りめの初日は好きです。
投稿: とみ | 2009年7月 6日 (月) 22時49分
初日、ご覧になられたんですね!
わたしは「愛する会」の売店にいたんですよ。
お会いできずに残念です。
投稿: AnJyu | 2009年7月 6日 (月) 20時13分
>みんみんさま
視覚的な美しさ、快い台詞、主題にぴったりの俳優さん。何もかもそろって見事です。
冬物語のリオンティーズとパーディタ、ペリクリーズとマリーナなど父娘二役が見たいな。
投稿: とみ | 2009年7月 6日 (月) 08時28分
とみさん♪
私は今回が初見ですので、時間の長いバージョンは拝見して
おりませんが、スピーディーな展開で良かったです。
英国人にも分かりやすく変えたであろう演出が、私のような
歌舞伎の初心者にも分かりやすかったです。
>双方で男女からためいきを取れる
本当にそうです、美しい舞台でした。役者も衣装も美術も。
ちょっと贅沢な、非日常を楽しめた舞台でした!
投稿: みんみん | 2009年7月 6日 (月) 01時09分