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2009年6月23日 (火)

愛を読むひと

Photo原題:The Reader
監督:スティーブン・ダルドリー
製作:アンソニー・ミンゲラ、シドニー・ポラック
製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーベイ・ワインスタイン
原作:ベルンハルト・シュリンク
脚本:デビッド・ヘア
撮影:クリス・メンゲス、ロジャー・ディーキンス
美術:ブリジット・ブロシュ
編集:クレア・シンプソン
音楽:ニコ・ムーリー
キャスト:ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クロス、レナ・オリン、アレクサンドラ・マリア・ララ、ブルーノ・ガンツ他
おはなし
1958年のドイツ。厳格な家庭に育ちギムナジウムに通う15歳の少年マイケルは、36歳の市電の車掌ハンナと出会う。ハンナに惹かれ毎日彼女のアパートに通うようになったマイケルに、ハンナは小説の朗読を命じる。
しかし、その関係は突然のハンナの失踪により一夏で終わった。
1966年、法科の学生になったマイケルは、傍聴した裁判で、ナチ親衛隊の戦争犯罪人として被告席に座るハンナを見つけた。ハンナはアウシュビッツ収容所の看守の責任者として無期懲役の判決を受けようとしていたが、量刑が格段に軽くなるある秘密をかたくなに守ろうとしていた。初めてハンナの真実を知ったマイケルは…。

第81回アカデミー賞でケイト・ウィンスレット氏が主演女優賞を受賞。ベルンハルト・シュリンクのベストセラー小説「朗読者」を、「めぐりあう時間たち」の監督&脚本家コンビが映画化。およそ40年、生涯を賭けた壮絶で静謐な愛の誕生から終焉までを、レイフ・ファインズ氏が演じる実年のマイケルが、過去を振り返る形で物語は進む。
少年が謎めいた年上の女性に性の手ほどきを受け、恋の喜びと苦しみを知る。ハンナが作った朗読の後、体を重ねるという約束も二人だけの愛の儀式のはずだった。少年の夢中ぶりに心が温かくなる。
ケイト・ウインスレット氏は頑なで生真面目で融通がきかなく痛ましいほどの孤独な女を演じる。年齢にふさわしい肉置きが悲しくも美しい。ピュアな少年マイケルと、無期懲役と引き替えても守らなければならない女のプライドを理解する青年マイケルを演じるデヴィッド・クロス氏も、只の美青年ではなく気を吐いておられた。
毅然としたハンナに打たれ、秘密を守るという選択をするマイケル。これだけでも手ぬぐい1本分の泪だが、マイケルは、生涯、刑務所の彼女に朗読テープを送り続ける。長い長い愛の物語の果てのエピローグは、決してハッピーエンドとは言えないものであったが、少年の日の一夏の恋を生涯の恋としたナイーブな男と不器用で自己に厳しい女との絆は、ある意味愛の完成と言えるかもしれない(涙)。
ネタばれになるので書かないが、朗読を通じて心が通い合う数々の場面は、手ぬぐい2本分泣ける。戦争犯罪人を裁く法の規範とドイツの戦犯裁判の有り様や量刑が学習不足で分からなかったことを恥とし、原作を読むこととしよう。

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コメント

>藤十郎さま
原作はまだ読んでいませんが買いました。どうも戦後21年たって裁かれたうえ、ドイツ人にナチ呼ばわりされるのが悲しすぎます。今年一番の映画と思います。

投稿: とみ | 2009年6月26日 (金) 22時05分

>ミチさま
コメントありがとうございます。迷惑な愛し方で女性を不幸に巻き込む男はレイフ・ファインズ氏のものです。傲慢だけど間抜けなんですね。
ケイト・ウインストレットさん最高でした。

投稿: とみ | 2009年6月26日 (金) 22時03分

相変わらず早いですね。私は未見ですが、ぜひ行きたいと思っています。原作は先に読んだほうがいいのでしょうか?

投稿: 藤十郎 | 2009年6月25日 (木) 16時46分

こんにちは♪
是非原作もお読みになってくださいませ。
私は原作も良かったですが、俳優たちによって息を吹き込まれた映画のほうにより一層惹かれました。

>少年の日の一夏の恋を生涯の恋としたナイーブな男と不器用で自己に厳しい女との絆は、ある意味愛の完成と言えるかもしれない
そうそう!
まさにそのとおりです~!

投稿: ミチ | 2009年6月25日 (木) 12時38分

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» 映画 【愛を読むひと】 [ミチの雑記帳]
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受信: 2009年6月25日 (木) 12時36分

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