赤い城 黒い砂 in 京都四条南座
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シェイクスピアの晩年の名作といわれる「二人の貴公子」。テーバイの親友同士の二人の騎士が、アテネの王女に恋したことから敵対していく悲喜劇を、新進気鋭の劇作家、劇団“モダンスイマーズ”の蓬莱竜太氏が換骨奪胎して熱いヒューマンドラマとして翻案した。演出は定評高い栗山民也氏。
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タイトルが全て。主題は「二人の貴公子」ではなく、「赤い城と黒い砂」だ。蓬莱さんはキャストに宛書きなさったとか。直情的で考えなしの熱血漢でトラブルメーカー・カタリが中村獅童さん、カタリの背中をあずかる冷静沈着なスイーパー・ジンクに片岡愛之助さん。原作では淑やかな王女を、黒木メイサさんに合わせ、武勇に優れ国家と人民を守る激しい娘に書き換えられている。
欲望も裏切りも野心も溢れるほど持ち合わせた分厚い人物になりきり、皆さん舞台上で激しく闘っておられた。装置、音楽、衣装、殺陣と何一つ手抜き無しの充実の作品で大好感。
脚本のメッセージもてんこもりにある。のっけからメッセージガンガンで、あれっ、そっか、ええぞええぞである。伏線も暗喩も前振りもない潔さがよろしい!最終兵器あり、細菌兵器あり、オカルトあり、誰と誰が闘っているのか、もう訳わからなくなるところもワタクシ的には好きだ。小さな謎も国家機密もぶっ飛んでしまうのも終わってみれば悪くない。
メッセージが重いという点で、野田秀樹さんの戯曲の印象が頭をかすめたがそれとも異なる。着物で歌舞伎鑑賞のノリで出かけると場違いだったというのは、中島かずきさんの阿修羅城の瞳を思い出す。
結論、貴公子は出てこないので安心して観るべし!
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コメント
>ムンパリさま
宝塚版でも若い作家さんで、見所は、互いに手負いになりながらいつ果てるともない二人の死闘と、血と涙と汗でぐちゃぐちゃの二人の別れでした。アーサイトの流した血潮にパラモンが顔を浸すシーンにドキッ(◎-◎;)。
いずれにしても若さとはパワーと思いました。
投稿: とみ | 2009年4月 9日 (木) 08時49分
とみさま。
> 誰と誰が闘っているのか、もう訳わからなくなる
うははは。ウケまくりぃ!!
混沌として脳みそグチャッ、になる瞬間も多々あり(笑)。
突っ込みどころもありますが、それも含めて観る者を巻き込んで
しまう底知れないパワーがありましたね。
キャストに惹かれてミーハー全開で見た舞台ですが、
これからも蓬莱竜太さん×栗山民也さん、要マークです〜。
投稿: ムンパリ | 2009年4月 9日 (木) 00時49分
>蘭鋳郎さま
細かい突っ込みどころだらけ。昔の価値観を現代のモラルで指断する話は大嫌いなのですが、現代に生きるメッセージを古代の物語に仮託するのは好きです。ドン引きとまぁ聞くの危うさに好感持てました。
野田さんの戯曲は、最後に隠れた重いメッセージを出し、終わってから3時間後に号泣ですが、蓬莱さんは台詞でいきなり出ます。しかも観念的で、許せない大人も多いかもという懸念があります。そんなしたり顔の輩を振り切り疾走して欲しいです。
投稿: とみ | 2009年4月 8日 (水) 08時32分
とみ様
舞台の熱気、息遣い、肌触りが伝わってくる感想でした。拝読し、見逃した事を後悔しました。
投稿: 蘭鋳郎 | 2009年4月 8日 (水) 04時29分