花組芝居の『夜叉ケ池』大千秋楽の武蔵屋組版
1月31日(土)伊丹市立AI・HALL夜の部大千秋楽を観劇した。
原作:泉鏡花、構成・演出:加納幸和
夜の部 《武蔵屋組》 昼の部《那河岸屋組》
萩 原 晃/水下きよし 小林大介
百 合 /堀越涼 二瓶拓也
山沢学円/桂憲一 秋葉陽司
白 雪 姫 /山下禎啓 加納幸和
《共通キャスト》
湯尾峠の万年姥/谷山知宏、白男の鯉七/美斉津恵友
大蟹五郎/大井靖彦、木の芽峠の山椿/嶋倉雷象
黒和尚鯰入/丸川敬之、鹿見宅膳/北沢洋
権藤管八/横道毅、斎田初雄/各務立基
畑上嘉伝次/磯村智彦、穴隈鉱蔵/溝口健二
※与十・伝吉は、日替わりゲスト。千秋楽は、わかぎゑふさん。
参考 拙宅の人気エントリ
恋には我が身の命もいらぬ(白雪)
玉様はお化けがお好き・夜叉ヶ池と高野聖の水系
「あんた、もう50に手が届く年になってんのにまだ、晃やってんの」とわかぎえふさんにぼろくそに言われたはりましたが、安定感抜群、ベテラン武蔵屋水下きよしさんの晃、伝統的な道成寺の後シテ・鐘入り後の黒頭に隈取りの拵えの白雪姫・山下禎啓さんの白雪姫を中心とするのが武蔵屋組だ。
こんなんでした。
三方客席の舞台。ミュージアムの展示室の中央には古びた釣鐘が展示されている。下手のドアが開き、夏のスーツにパナマ帽の僧侶にして学者の山沢学円が入室。するすると鐘が上がり、鐘の中から男女が登場。男はバックヤードへ。学円、展示台に上がるとそこは、夜叉ケ池の麓・越前琴弾谷の鐘楼にトリップする。
そこで、行方不明の親友・晃が、美しい女を妻とし、鐘楼守になっているのを見つける。折しも、この一帯はひどい日照りと干ばつが続いていた。
妖怪の眷属、百姓たちは、別の組の主演4人が張り子の中に入る。観客4人を舞台に上げ一緒に踊る。前方に座っている客はいじられる。しかし、ゲストのわかぎゑふさんに劇団員はいじりたおされる。
なんやかんやと大騒ぎあって…
ラスト、学円にお雪様が帽子と荷物を持たせてくれる。白雪姫と眷属、魚になってしまった村人と晃と百合が盆踊りともフォークダンスともつかない不気味な踊りを続けるなか、学円は立ち尽くす。その幻影も消えて、退出すると鐘が降りてくる。
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ぱっと見、はちゃめちゃ楽屋落ち、うちわネタ、役者と常連ファンだけが満足する小劇団系の疲れるお芝居を装っているが、泉鏡花の原作に忠実に、うつつと幻影の結界を往還するピュアな魂を持った男女の物語を構築しておられる。ト書きに忠実なところが尊敬。加納さんのお衣装は、ト書きとおりのブルー系の紗に火炎が透けるもののようだ。昼夜で前シテと後シテになっているはず。小ネタやパロディはしっかり押さえているところは花組芝居!
全体がミュージアムの幻想というところが、ディズニーミュージカル「アイーダ」の枠組をパロッている。鐘が上がり、鎮められていた二人が、あのポーズで出てきたのがワタクシ的にうれしかった。鐘を鎮魂と封魔の象徴や愛の霊廟に遣うのがいいな(^◇^)。
花組芝居の次回作品
花組ヌーベル「盟三五大切」 鶴屋南北
KABUKI-ISMその1「ナイルの死神」アガサ・クリスティー
スキップさま、ムンパリさまにお会いできてラッキーでした。
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コメント
>飾釦さま
そうですね。長く続けておられますから、台詞術の完成度は高めていただきたいです。黎明期のものの復刻上演ですから鷹揚の御見物を…。
鐘は物語の流れからいうと、晃が撞木の綱を切ったときに落ちるのがいいのでしょう、きっと。そして、白雪姫は鐘の中からご登場と、道成寺の枠組を守った方がいいかもしれません。
投稿: とみ | 2009年2月 9日 (月) 23時56分
私の記事にも書いたのですが、大はしゃぎの上、台詞がよく聞こえないところもあって、100%集中できなったことを記憶しております。そんなに鏡花の芝居を観ているわけではないので、なんともいえないのですがどちらかと云うと正攻法の方が好かなと思いました。パロディの部分は「アイーダ」未見のため展開を知りませんのでわからず残念でした。そのあたりの分析が流石鋭いですね。
投稿: 飾釦 | 2009年2月 9日 (月) 21時27分
>ぴかちゅうさま
コメントありがとうございました。
確かにチャリ場がいつまでつづくのか読めないと、辟易するのは道理、道理。劇画で普通の8頭身と、2頭身が混ざっているイメージでしょうか。武蔵屋組では、台詞(かアドリブ)で、あんたは4頭身の姫様というのがありました。これをどう受けとめるか悩みます。
鐘がいつ落ちるか、鐘の中にいつ誰が入るか、注目していました。常套とパロディとオリジナリティの兼ね合いは演出家の仕事の醍醐味です。楽しませていただきました。
投稿: とみ | 2009年2月 9日 (月) 12時33分
>とみさま
TB&CMありがとうございました。
>役者と常連ファンだけが満足する小劇団系の疲れるお芝居を装っているが、泉鏡花の原作に忠実に、うつつと幻影の結界を往還するピュアな魂を持った男女の物語を構築しておられる......装っているところを余裕をもって受け止められるかどうかが楽しめるかどうかの鍵のようです。確かに疲れてしまいそうでぐっと距離感をとりながらの観劇でした。
>ディズニーミュージカル「アイーダ」の枠組をパロッている......なるほど!私はそのミュージカルは四季版を観ようと思いつつエルトンジョンのCDも買ったんですけれど、結局未見のままです。そういう楽しみ方もできたんですね。
投稿: ぴかちゅう | 2009年2月 9日 (月) 01時01分
>ムンパリさま
客席との一体感やお仲間に支えられている実感、人気が継続しているのがうれしかったです。
歌ってほしかったな~。
投稿: とみ | 2009年2月 7日 (土) 21時01分
>スキップさま
コメントありがとうございます。
かぶき座の怪人の曲がなって鐘がゆっくり上昇してゆくのを想像していましたら、あららでした。
無骨な農民晃か美しい若者かで違う物語になってしまいますね。
投稿: とみ | 2009年2月 7日 (土) 20時41分
とみさま。
> 小ネタやパロディはしっかり押さえている
なんと!アイーダのパロディだったのですか。
気づけなかったのがザンネンです。
一見、夜叉ケ池のイメージとかけ離れた印象だった
のですが、観終わったあとは原作にとても忠実
だったことがわかりました。
そこが花組芝居の魅力なんでしょうか(笑)。
投稿: ムンパリ | 2009年2月 7日 (土) 09時00分
とみさま
なるほど、言われてみれば「アイーダ」ですね!
どちらがパロってるかはともかく、二人があの
鐘の中から登場するシーンなんて、まさにそうです。
>昼夜で前シテと後シテになっているはず
そうなっていました。
加納さんは自分だけ綺麗な白雪姫でちょっとズルイ(笑)。
でも久しぶりに加納さんのお姫様を見られてうれしかったです。
投稿: スキップ | 2009年2月 6日 (金) 23時40分