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2009年1月29日 (木)

通し狂言 「霊験亀山鉾」亀山の仇討 in 大阪松竹座

夜
3日と17日に拝見した。大抵の皆様は、複雑な筋にも関わらず分かりやすいとおっしゃったが、吉太朗ちゃんの登場に動転し、不覚にも混乱してしまった。

四世鶴屋南北作
通し狂言 「霊験亀山鉾」亀山の仇討
 序 幕 甲州石和宿棒鼻の場より播州明石網町機屋の場まで
 二幕目 駿州弥勒町丹波屋の場より同中島村焼場の場まで
 
中 幕 春寿松萬歳
 三幕目 播州明石機屋の場
 四幕目 江州馬渕縄手の場
 大 詰 勢州亀山祭敵討の場


配役
藤田水右衛門・隠亡の八郎兵衛/片岡仁左衛門
丹波屋おりき・貞林尼/片岡秀太郎
掛塚官兵衛/中村翫雀、芸者おつま/中村扇雀
源之丞女房お松/片岡孝太郎、石井兵介/進之介
石井源之丞・石井下部袖介/片岡愛之助
轟金六・大岸主税/坂東薪車、大岸頼母・仏作介/市川段四郎
藤田ト庵/片岡我當
六之進妻おなみ/上村吉弥、石井源次郎/上村吉太朗
萬歳/坂田藤十郎 ほか

ものがたり
藤田水右衛門は、石井右内との立会いに敗れた腹いせに右内を闇討ちし、「鵜の丸」の一巻というお家の重宝を奪う。しかも水右衛門は、協力者の隠亡の八郎兵衛、丹波屋おりき、掛塚官兵衛らと共に権謀術策の限りをつくし、右内の弟・兵介、右内の養子・源之丞、中間・轟金六、源之丞と言い交わした芸者・おつま等石井側の人々を次々に返り討ちにする。協力者たちは死闘の末果てるが、水右衛門は逃げおおせる。
しかし、石井源之丞の忘れ形見・源次郎の病が祖母の貞林尼の犠牲により平癒したのを機に、中間袖介は、水右衛門の父・藤田ト庵を討ち、双方相敵となる。
最終的に、鉾が練り歩く曾我祭りの亀山城下で、大岸父子の助けを借り、源之丞の女房お松、源次郎、袖介らが水右衛門を討ち果たす。
四世鶴屋南北の仇討物の最高傑作と言われる『霊験亀山鉾』。初演は文政五年(1822)。上演はこれまで数回しかなく、平成14年(2002)片岡仁左衛門主演で国立劇場で上演されているが、関西では77年振りというまさに幻の復活狂言だ。
中幕は、坂田藤十郎丈の艶やかな萬歳の舞が初春を寿ぐ。

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片岡仁左衛門丈が、非情冷血、知的権謀を尽くす巨悪・水右衛門と、色と欲のためには手段を選ばないバイオレンス系極悪人・八郎兵衛の二種類の「悪の華」で魅せる大芝居。世界は亀山の仇討ちにとり、趣向は鰻谷、夏祭浪花鑑、合邦、女殺油地獄、定番のだんまり、切り口上などなど、既視感のある名場面が続く。早替り、本水、火、棺桶の中からの登場、血みどろの殺し場と息をもつかせぬショッキングな場面でジェットコースター的楽しさだ。
仁左衛門丈が最高なのは勿論、皆さん適材適所のベストキャストで大大満足の狂言だった。初演の松本幸四郎に敬意を表し、右の眉の上にほくろ、鼻筋通って苦み走った渋ーい色男ということになっているところは仁木弾正と同じだ。もうもう、仁左さま以外には考えられない!
南北さんは、当時の座組に合わせ、少ない役者の数を逆手に取り、複雑な二役の妙を活かした筋立てになっていてさすが…。

ただし、死角もある。名場面名場面の積み重ねのため、登場人物には、その場の行動方針(ハラ)はあっても、性格付けが弱い。石井源之丞は、女房お松とラブラブにもかかわらず、次の場では、芸者おつまをめぐって達引きとなり、偽りの愛想つかしをしたおつまを手に掛けようとまで思いつめる。鰻谷のパロディだが、地元大阪でも鰻谷のお芝居が知られていないと推測すると、いかにも唐突だ。しかも源之丞も袖介も仇討のためやつしている。説明台詞も多い。水右衛門が父親を討たれて動転するのも、興醒めは否めない。
凝りに凝った脚本にもかかわらず、最上級のエンタテイメントとして繰り返し上演されないのはこの辺か。お松とおつまを姉妹にして同じ役者さんが演じると、源之丞さんのワキと詰めの甘さが気にならなくなるように思える。
愛之助丈は、きっちり演じられて善人方の芯を取っておられブラボー。

また、鰻谷は良い狂言なので、特に地元大阪ではぜひぜひ頻繁に上演して欲しい。
桜鍔恨鮫鞘(さくらつばうらみのさめざや)鰻谷(うなぎだに)が見たい!
古手屋(古物商)八郎兵衛・愛之助丈、新しい婿弥兵衛(香具屋)・翫雀丈お妻・孝太郎丈、その母吉弥丈、娘お半は吉太朗ちゃん!

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コメント

>ハヌルさま
コメントありがとうございます。
やはり棺桶からのご登場が南北らしすぎ!
早替りも分かっていながら感動します。
しかし、愛之助丈はお化粧まで変えるのがさぞ大変だったかと。本当にたのしみました。
もう、明日(・∀・)ニヤニヤ

投稿: とみ | 2009年1月31日 (土) 08時31分

水右衛門@仁左衛門さんの、あの目。あの薄笑い。
あの高笑い・・・。もう何もかもが今でも鮮明に残って離れません。
そしてあの目に・・・殺されました。
「鰻谷」のことは全く知らず、番付を読みましたが、
おつま、古手屋の八郎兵衛、香具屋の弥兵衛と名前も職業も
そっくりそのままなんですね!役どころだけを逆にしてあるとか。
そういうのを知っていると尚楽しめたんだろうなあ~。
楽しい舞台でしたが、とにかく登場人物が多くて演じている
役者さんたちもなりきるのに大変だったでしょうね。

投稿: ハヌル | 2009年1月31日 (土) 00時26分

>ムンパリさま
舞台裏はえらいことになってるんでしょう。黙阿弥さんは、観客、勧進元、役者に優しいを心掛けたそうですが、南北さんは役者さんに優しくなさそう。
孝太郎丈の惨殺死体の映り好きです。縄姿は静御前で昼の部でしたか。おっと危なくなってきました。

投稿: とみ | 2009年1月30日 (金) 12時57分

とみさま。おまつとおつまが双子という設定イイですね♪大賛成!
どうせなら間違いの喜劇も入れて頂きましょうよ(笑)。
水右衛門役役が仁左衛門さんしかいないというのも、満場一致!
悪のオーラが舞台で咲く人でなければと思います。
鰻谷ですが、なじみのある地名なのにあまり上演されないのは不思議ですね。ぜひ夏の舞台か文楽で見てみたいものです。

投稿: ムンパリ | 2009年1月30日 (金) 12時13分

>火夜さま
ご賛同ありがとうございます。実は、文楽で見たことありますが、歌舞伎では未見です。見るなら浪花花形(今年はなさそうですが…。)でなければなりません。美吉会なら竹三郎丈、薪車丈に客演願って吉弥丈が主演です!吉太朗ちゃんがおっきならへんうちになんとかならへんやろか。
火夜さまに倣ってにゃんこの写真撮ってみました。

投稿: とみ | 2009年1月29日 (木) 17時21分

吉太朗くんのかわいい“いろは”がみれなくなってさびしいですー。
その配役の「鰻谷」、とても観たいです!

投稿: 火夜(熊つかい座) | 2009年1月29日 (木) 12時37分

>スキップさま
コメントありがとうございます。
おまつとおつま、洒落になってます。南北劇に心理も動機も筋の整合もくそくらえです。上演回数の少なさは、南北劇は通しでないとようわからへん、台詞だけでの心地よさが黙阿弥に比べしんどい、絵画的な美よりドラマ重視といったところと思います。
水右衛門の後継者は、松本幸四郎になる染五郎丈以外ありません。孝太郎丈は格闘も得意、惨殺被虐の場の迫力で、愛之助丈とセット売りが期待されます。大切に次世代に継承していただきたいです。

投稿: とみ | 2009年1月29日 (木) 09時52分

とみさま
>もうもう、仁左さま以外には考えられない!
まさにこれですね!
私の中では水右衛門=仁左衛門さんのイメージが
完結しまして(笑)、他の人のこの役が想像できません。
ただただ「おもしろ~い」と思って観たのですが、
とみさまの「死角」分析になるほど、と感じ入りました。
源之丞がお松のラブラブなのに芸妓のおつまにも・・・
っていうところは、このテの男にはありがちと思いましたが(笑)。

投稿: スキップ | 2009年1月29日 (木) 03時05分

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