思い出を売る男12日(土)マチネ
1953年、劇団四季創設の5ヵ月後に35歳で夭折した劇作家・加藤道夫の詩的な戯曲を、55周年記念公演のひとつとして上演中。12日は前楽にあたる。
主人公の思い出を売る男は、加藤本人とされている復員兵の詩人でありサキソフォン奏者だ。誰もが戦争の深い傷を負っている時代、詩と音楽で思い出を甦らせようとする男の前を、花売り娘、広告屋、GIの青年、街娼、乞食、闇市のボスが通りかかる。
今や劇団四季のリーディングアクターとなられた田邊さんは、はかなげな痩身に復員兵姿の外套が似合う。透明でリリカルな台詞回しは、人の悲しみや喜びを自分のものとし、美しく表現する主人公のピュアな魂を余すところなく伝える。重傷と戦病に生死の境を彷徨い、自分の悲しみを超越した加藤が、田邊さんという素材により、舞台上に甦っていた。間に合って良かった。
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コメント
>ハヌルさま
石丸さんは,多くの作品に出演されましたが,壁抜け男,オンディーヌ,ユリディス,ラ・ソバージュ,アスペクツ・オブ・ラブ,異国の丘等,自分は善人と信じていて,実は卑怯で女性を不幸にする男がお似合いではまっておられました。他にない優れた俳優さんなのですぐにどこかでお目にかかれることでしょう。
田邊さんは,サキソフォンが厳しかったようですが,お役になろうとする情念で難役をねじ伏せる方です。
投稿: とみ | 2008年7月18日 (金) 00時01分
「思い出を売る男」、このタイトルが何故か気に入って興味が湧き、
かつて近鉄小劇場へ観に行った記憶が蘇ります。
まだ無名だった石丸幹二さんを初めて観たのがこの舞台でした。
背後に戦争の傷跡の残る静かな舞台でしたが、なんてキレイで、
なんて美しい歌声なんだろう・・・と、すっかり夢中になりました(笑)
また何処かで彼の美しい歌声が聴けることを願うばかりです。
投稿: ハヌル | 2008年7月17日 (木) 23時16分