蜷川幸雄演出「身毒丸 復活」見たことをしゃべったら呪われそう。
さらば,わが愛 覇王別姫を拝見した勢いで,書きかけのエントリを仕上げる。2月29日(金)だった。それでも言語にするのが苦しいが…。
身毒丸 復活
作:寺山修司,脚本:岸田理生
演出:蜷川幸雄,作曲:宮川彬良
美術:小竹信節,照明:吉井澄雄
衣裳:小峰リリー,振付:前田清実・花柳錦之輔
ヘア&メイク:高橋巧亘,音響:井上正弘,舞台監督:明石伸一
キャスト
身毒丸/藤原竜也,撫子/白石加代子
父親/品川徹,小間使い/蘭妖子
あらすじ
死んだ実母を慕い続ける身毒丸は,母を売る店で父が買い求めた女・撫子と,“家”という呪縛の中で,壮絶に憎しみあい,愛しあい、拒絶しあい,求めあう。
岸田理生脚本,宮川彬良音楽の原典がこれ。スローモーションの異形の者たちの行進と,町工場のグラインダーの火花の美しさ!圧巻のプロローグから1時間40分,ノンストップで,のぞきからくり,見世物小屋の迷宮に連れ去ってくれる。蜷川演出の全てが凝集した舞台だ。
おかめの面をつけたグロテスクな女たちが格子窓から男たちを招くなか,父親に連れられた身毒丸が撫子と出会う。ラブストーリーは緊迫感のある出会いが勝負。もうここで終わっても入場料返せと言わへん。
それにつけても,白石さんの妖怪ぶりは凄かった。老いてゆく姿を見られたくないと身毒丸の目を潰すところなど,全ての女のおぞましさを背負っての怪演。
身毒丸の藤原さんは,何と言っても奇跡のような出世役から10年。15歳の少年の瑞々しさ,危うさ,あどけなさ,残酷さはそのままに,振幅の大きな感情を表現し尽くす力演。 難解で闇に沈みがちな寺山修二作品を,眩しい光線の下にさらし出す。
スタッフ,役者とも最高水準の力が結集した演劇の凄さを再認識する。
説教節に起源を持つこの作品は,中世に,街角に立って口から耳へと伝えた物語だ。地下の世界では,極楽浄土を願う歌が歌われ,死者の車が行き交い,母親たちが徘徊する。悪夢と現は,穴一つで隣り合わせだ。
終幕では,狂った母と盲目の息子が,男と女として道行きとなる。救いは無いがハッピーエンドという好みのエンディングに酔った。
もう一度見たいか,いや見たくない。見なくとも,いつまでも心に残ること間違いない。
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コメント
>スキップさま
シンプルな演出も良いですが,コテコテのザッツニナガワはやはり良いです。チープな演出ハンターイ。
投稿: とみ | 2008年4月14日 (月) 00時00分
とみさま
私はこれが初見でしたが、まさに舞台でしかあり得ない、
蜷川演出の結晶ともいうような印象を受け、かなり衝撃でした。
>救いは無いがハッピーエンドという好みのエンディングに酔った
まさしく。
寄り添って、ともに体を支え合って舞台奥へ、果てなき道へ
と歩み行く二人に、かける言葉など必要ないようでした。
投稿: スキップ | 2008年4月13日 (日) 23時03分