7日(金)と15日(土)に拝見。
牡丹亭(ぼたんてい)
作 湯顕祖,指導 張継青
遊園 杜麗嬢/董飛,春香/朱瓔
驚夢 杜麗嬢/坂東玉三郎,柳夢梅/兪玖林,
春香/朱瓔,睡夢神/呂福梅
堆花 杜麗嬢/坂東玉三郎・董飛,柳夢梅/兪玖林
杜母/陳玲玲,春香/朱瓔
写真 杜麗嬢/劉錚,春香/朱瓔
離魂 杜麗嬢/坂東玉三郎,杜母/陳玲玲,春香/朱瓔
昆劇は約600ほど前の明朝の時代に生まれ,清朝にかけて200年余り劇壇の王座を占めてきた。なかでも,後世の京劇や本朝の牡丹灯籠にまで影響を及ぼしたとされている湯顕祖作・全55幕の大作『牡丹亭』は,最高傑作だ。坂東玉三郎丈は,芸術監督として総指揮を執られ,深窓の佳人・杜麗嬢を演じる。言語は勿論中国の蘇州語だ。なお,5月には,中国「北京湖廣会館」で上演される。
杜家の深窓の令嬢・杜麗娘は,春の花園で遊び,疲れてうたた寝をする。夢の中で,理想の若者・柳夢梅と出会い恋におちる。楽しいひとときは過ぎ去り,目覚めたときはもとの自室だった。そして,夏。夢で出会った若者を思い続け,やせ細った杜麗娘は死を予感し,美しい姿を絵に描き残す。中秋の名月の夜,命旦夕に迫った杜麗娘は,若者への思慕を切々と歌う。
5つの場面を3人の女形が演じる。春の場面の現身は董飛さん,夢の中で柳夢梅と遊ぶのは玉三郎丈(ええとこ取り),自画像を描くのは劉錚さん,はかなくなる場面は玉三郎丈だ。
董飛さんは,TBSニュース23に登場した若い女形さんで,玉三郎丈に心酔しておられる。お化粧や仕草を一生懸命なぞっておられいい感じだ。細身小顔で一目で女形さんと分かり,あちらの早乙女太一さんというところか。劉錚さんは,端正な容姿に綺麗なお声で,複雑に揺れる娘心をしっかり伝える実力派さん。
出ずっぱりの心優しい侍女・春香を演じるのは女優の朱瓔さん。とても可愛らしく,端麗な主演を引き立てておられた。
玉三郎丈は,「驚夢」の章でデュエットと連舞を楽しむ。柳夢梅役の兪玖林さんは,ぼーとなるイケメンで清々しく上品で真摯なイメージ。玉様は,活き活きと正に眸を回らせて一笑すれば百媚をスパーク。柳夢梅に注ぐ視線はどんどん蠱惑的に…。深窓の令嬢とは思えない積極的な激しい恋のアプローチだ。生真面目そうな兪玖林さんは大丈夫なのかとよけいな気を起こさせる程だ。
一転,「離魂」の章では,去りゆく命を前に恋心を迸らせる。雨に煙る中秋の名月の夜,「集賢賓」という哀怨の情を表すアリアを玉三郎丈が歌い上げる。この一曲を聴くだけでもこの公演の価値はある。嫋々と哀切に繊細に…,見る者聴く者全ての心の琴線を震わせる歌唱だ。丈は,20年以上前,張継青さん主演の「牡丹亭」に感銘し,夢を暖めて来られたとか。その張継青さんの歌唱指導による名演は,日中の語り草となることだろう。
装置は,屋根や柱を設けず,牡丹の美しい絨毯とドレープが美しい紗幕で抽象化。刺繍のお衣装や簪が精緻で,夢のよう…。
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