ラスト,コーション
ラスト、コーション(原題:色・戒,米題:Lust, Caution)
原作:張愛玲(アイリーン・チャン),監督:李安(アン・リー)
アイリーン・チャン原作の短編小説『色・戒』 をアン・リー監督が映画化。第64回ヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞。 激しい性描写が話題となり,R-18指定となっている。
出演:トニー・レオン,王力宏(ワン・リーホン),タン・ウェイ
1942年,日本占領下(日本軍の傀儡・汪精衛政権)の上海。女子大生ワン(タン・ウェイ)は,3年前,香港の大学の演劇サークルで,共に抗日運動に心血を注いだクァン(ワン・リーホン)に再開した。3年前,クァンに秘かな恋心を抱き,稚拙な暗殺ごっこに巻き込まれたのだった。再びクァンから,親日政権の特務機関のリーダー・イー(トニー・レオン)の暗殺計画に協力を求められる。ワンは,美貌と肉体だけを武器にイーに接近し,首尾よく愛人となったたが,イーと暴力的なまでに激しく求め合ううちに,思いは迷走する。
トニー・レオンは,孤独と寂寥が似合う役どころが多いが,今作品でも,虚無と残忍に彩られた眼差し,暗殺に怯える下半身と,ダーティーな金満紳士という手のバランスが絶妙で,悪魔的に引き込まれる。過激なベッドシーンも,どちらかといえば,男優さんの方が難しいかと思われるが,そこは東洋人。いい感じだ。
シロウトスナイパー役の女学生ワン・チアチーは,新人さんとか。激しい抗日感情に突き動かされたわけでもなく,お似合いの青年へのほのかな思慕や,別世界の危険な男への拘りから,運動に身を投じるようになったのは痛ましいが,戦時下にあって,それなりに自身の意志で生きられたのが救いだ。
魔都上海の退廃的な風俗と風景のもと,美男美女が繰り広げる愛欲と虚々実々のサスペンスを思いっきり楽しもう。
主人公は,暗殺されるか,漢奸として銃殺されたのだろうと思うと複雑な気分だ。
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コメント
>ななさま
深い考察は出来ていませんが,このような巻き込まれ形や,にわかスナイパー,偽弁護士が本物以上に活躍するストーリーは大好きです。
投稿: とみ | 2008年3月29日 (土) 22時23分
こんにちは
ヒロインが筋金入りのスパイではなく
前半は,ままごとみたいな学生運動からスタートしたというのが
意外でしたが,特に政治的に強い思い入れのない彼女が
深みにはまっていったのが,切なかったですね。
こういう,絶望的な愛のお話は大好きです。
投稿: なな | 2008年3月29日 (土) 13時19分
>あさこさま
ようこそ拙宅へ。また,ブログ復活おめでとうございます。
>ありえねースパイ活動とか突っ込みどころはありますが
いえいえ,稚拙さがかえってリアリティありました。社会生活をやっていて,稚拙さに赤面することいくらでもありますから,身につまされました。
後半より前半の若々しいスパイごっこに惹かれてしまうところが,目線同じで嬉しいです。
投稿: とみ | 2008年2月22日 (金) 20時25分
とみさま、こんにちは!お久しぶりです!
「ラスト、コーション」よかったですね~。
ありえねースパイ活動とか突っ込みどころはありますが
言葉にはならないものがしっかりと描かれているのが
感じられます。
とみさまの、映画やお芝居を「作りもん」としてとらえる
「視点」がとても好きです。
またよろしくお願いいたします!!
投稿: あさこ | 2008年2月22日 (金) 11時19分
>悠さま
当初よりサスペンスメロドラマという位置付けで宣伝されてましたから全く大満足でした。ヒロインがファムファタルでないのもよろしい。
原作は短編小説なんですか。エレンディラと同じですね。
投稿: とみ | 2008年2月 6日 (水) 23時37分
上のコメント、名前がぬけてました。
それと、TBできませんでした(--;)
投稿: 悠 | 2008年2月 5日 (火) 23時45分
>魔都上海の退廃的な風俗
に奥様方の麻雀が、一役かってましたね。
過激なベッドシーンと、たぶん、対をなんでしょうね。
上海のあるく芸者さん、上海の日本料亭、軍人さん、シュールでした(^^)
投稿: 悠 | 2008年2月 5日 (火) 23時41分