文楽11月公演第2部
国立文楽劇場の11月公演,3日(祝)第2部で「源平布引滝」,「曾根崎心中」を拝見した。
源平布引滝
多田蔵人行綱:和生,松波検校:勘弥,難波六郎:玉也,
小桜:一輔,又五郎:文司,藤作:玉志,平重盛:清之助
音羽山の段
英大夫,団七
松波琵琶の段
綱大夫,清二郎
紅葉山の段
松香大夫,南都大夫,津国大夫,相子大夫,芳穂大夫
団吾平家の世。奢る清盛は後白河法皇を鳥羽離宮に幽閉同然に押し込める。源氏の残党多田蔵人行綱は,妻と娘を予め密偵として鳥羽離宮に出仕させている。法王に召される道中,不慮の死を遂げた松波検校になりすまし,行綱は,鳥羽殿に単身乗り込み,法王救出と源氏の蜂起を企てるが…。
源平布引滝は,「義堅最期」と「実盛物語」が人気で上演されるが,四段目「松波琵琶」は,主人公が尋問に会い琵琶を弾くという男阿古屋の趣向があるため,歌舞伎では頻繁に上演されていない。眼目の松波琵琶の段。重厚感と軽妙感と可愛らしさ,死角無しの綱大夫さん。気合いバリバリに入りまくり,床から湯気が立ち上る清二郎さん。乾いた空気をきーんと切る切っ先がよろしい。三味線で聞く琵琶も,シャカシャカと心急いた雰囲気が緊迫感があって満足ど大。
和生さんは,検非違使の知将を拝見するのは初めてだが,検校姿の耐えるお姿は綺麗。小桜の一輔さんも大活躍。
![]() 文楽 |
曾根崎心中
手代徳兵衛:玉女,天満屋お初:勘十郎,油屋九平次:簑助
丁稚:玉翔,田舎客:玉誉,天満屋亭主:文哉,女中:幸助
生玉社前の段
伊達大夫,清友
天満屋の段
住大夫,錦糸
天神森の段
津駒大夫,文字久大夫,咲甫大夫,睦大夫,靖大夫
寛治,清志郎,清丈,龍爾,寛太郎元禄16年(1703)年,天神の森で醤油屋の手代徳兵衛と堂島新地の遊女お初が情死し,これを近松が人形浄瑠璃として世に送り出して以来,曾根崎心中は「恋の手本」となり,心中は究極の恋の目標となり文化にまで高まった。「心中善し悪し」という番付のようなゴシップ誌まで発刊され,お初徳兵衛が,今年はわしらがそれに載るというくだりが痛々しくも当世感を醸し出す。
しかし,文楽の衰退と,高すぎる文学性が支障となり,曲と演出は途絶えていた。昭和28年,歌舞伎で大ヒットしたことを受け,昭和30年,吉田玉男さんが中心となって,一から作曲及び演出しなおした。その後,吟味を重ね,玉男・簑助コンビで千回を超える屈指の人気狂言となっている。
今公演は,昨年9月に亡くなった,押しみて余りある不世出の人形遣い・吉田玉男さんの追善狂言として,徳兵衛:玉女,お初:勘十郎,九平次:簑助という新旧の花形が共演する。
生玉社の喧噪と,徳兵衛の窮地への転落を一気に駆ける伊達大夫さん。憎たらしさと情けなさの交番は凄い。伊達さんは,ワタクシは河庄で治兵衛苛められる場が最高と勝手に決めている。いたぶりがお似合いだ。天満屋は,住大夫さんの情の語り。切々と口説くお初の独白は,愛しくも心強い。世間が全て見捨ててもわしがというくだりは,大感動。
天神森は文楽の表現の総力戦の美しさ。
先程までの市井の哀れな恋人達から,二人はもはや恋の神の境地に達している。間違いなく鵲の橋を渡って天ノ川を超え,夫婦星となった。初日のお初徳兵衛は,美しさにありがた涙にくれるところまで行っていないが,次の千回に向けて危なげないスタートとなった。
これはない。露と消えるところまで…。
誰が告ぐるとは曽根崎の森の下風音に聞え。取伝へ貴賤群集の回向の種。 未来成仏疑ひなき恋の。手本となりにけり。
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コメント
>ハヌルさま
課題をお持ち。それはそれはタノシミですね。文楽の女の人形は足がありませんが,お初はどうなるか。とっくとご覧くださいませ。ご感想拝見しに貴宅に寄せて頂きますね。
投稿: とみ | 2007年11月 7日 (水) 22時36分
文楽エントリのどこにコメントさせていただこうかと思いながら、
やはり自分の観る第2部でしょう、ってことでこちらに・・・。
今週末に観てきます! 楽しみです!第2部だけですけど~(苦笑)
それに確かめたいことがあって、初めて文楽で観る「曽根崎心中」。
確かめられたらまたコメントしにきます!
投稿: ハヌル | 2007年11月 7日 (水) 00時38分
>おりんさま
美しい道行きは文楽ならでは…。照明も詩的です。歌舞伎と別モンと鑑賞すると,はまります。
投稿: とみ | 2007年11月 5日 (月) 23時11分
やっぱり、曽根崎心中、心して観にいかねば。
さて自分がどの程度感じ取れるか、今回はそれが楽しみなのです♪
気合バリバリの綱大夫さんも楽しみ♪
投稿: おりん | 2007年11月 5日 (月) 01時43分