歌舞伎座「赤い陣羽織・恋飛脚大和往来」萬屋,松嶋屋,山城屋,成駒屋満開編
21日(日)に唯一度の観劇を済ませてしまったが,充実した一日だったので,エントリが追いつかない。昼の部から…。
赤い陣羽織
醜男の百姓のおやじ(錦之助)には,おかか(孝太郎)という器量よしの女房がいる。しかし,これも醜男のお代官(翫雀)は,おかかに横恋慕しているのか,しょっちゅう村に見回りに来る。悪巧み専科のこぶん(亀鶴)と,お代官に取り入るお庄屋(松之助)の策にはまり,おやじは罪科ないのに取調を受けることになった。心配しながらも,気丈なおかかは,留守中,お代官が忍んできたら,ぶちのめそうと腕ぶしているが…。
木下順二氏の民話劇で,団氏の作曲。夏に聴いた瓜子姫とあまんじゃくと似ている。♪きちんこたんのきんぎりや~♪を思い出した。どのような拵えをしたら,錦之助丈と翫雀丈が見間違えるのか期待されたが,しっかり似ておられた(^^ゞ。孝太郎丈のおかかは若々しく,おやじを慕っている思いを体中に表しておられた。腕力も脚力も強そうだ。
大混乱を収拾するのが,お代官が最も恐れる奥方(吉弥)。みなさん小汚い拵え(`´)ノ☆(((*;・)ゴメンナサイだが,きらびやかで美しく威のある奥方が舞台中央に立たれると,ほんわか,やっさもっさがびしっと空気が変わる。
お代官を除いてめでたしめでたしとなる。
![]() 歌舞伎 |
恋飛脚大和往来
封印切
時蔵丈の梅川は,何と言ってもお綺麗。端女郎ではなく全盛の傾城に見えてしまうのはさておき,梅川という女の性根が,(賢い。人の心も場の空気も読める。恋に生き恋に死ぬ覚悟が座っている。)文楽のそれに近い印象を受ける。それに,お得意の儚げな耐える女の風情も加味され,忠様が深間になってしまうのも納得だ。八右衛門の三津五郎丈も文楽風で,男気もあるように見える悪友として造形され,根っから忠兵衛を陥れるようには見えない。
美吉屋贔屓目で,秀太郎丈のおえんさんをライバル視していることに気付いたが,やわらかさと仇っぽさと底の見えない上手さは,そんな考えを抱くことも不遜のようだ。
とどめの忠兵衛の藤十郎丈は,一瞬,翫雀丈と見紛う若々しさ。張りがあって,脳天気で,あほらしいて,これぞ忠兵衛だ。
新口村
藤十郎丈と時蔵丈は,比翼の衣装が雪の舞台に映える。丸顔と細面の組み合わせがよろし。当代一の我當丈・孫右衛門は,いつもながら涙をぎゅうぎゅうに絞られる。養子に出した実の子を思う心と,養親への義理という長めの台詞が胸にせまる。
こんなにええ人らに愛されて,しかも,愛した者を不幸にしてしまう忠兵衛さんは,罪作りなお人や。さすが,お若い藤十郎丈。駆け抜け,死に急いだ無惨な青春したはりましたで。
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コメント
>ぴかちゅうさま
たっぷり演じられる御大が御登場、且つ、お江戸では、封印切だけにするべきだったかと存じます。
新ノ口村は、在所の青年が、夢に果てることで、本気の恋こそ大坂の恋と示したことになりますので、忠兵衛が演劇的に出来すぎると、文学的なブレが生じるのかもしれません。考えることもまた一興。
投稿: とみ | 2007年11月 2日 (金) 22時16分
ようやく10月歌舞伎座の感想アップ始めました。「恋飛脚大和往来」の記事をTBさせていただきました。「赤い陣羽織」も末尾にリンクついています。
義太夫の聞き取りがまだまだのせいか、予想以上に入り込めずに残念だったです。やはり一度文楽で観たいですね。文楽の梅川の性根に近い時蔵の梅川というあたりを実感してみたいです。
それとやはり藤十郎×仁左衛門で一度みたいものです。めちゃくちゃ濃いお芝居になりそう。こうして次から次へと観たいものが増えていきますねぇ(^^ゞ
投稿: ぴかちゅう | 2007年11月 2日 (金) 01時46分
>hitomiさま
贔屓目ですが,新ノ口村は,我當丈,進之助丈,吉弥丈が演劇的に感動取れたきがしました。時蔵丈といい梅川は知的な方が冥途の飛脚してるように思います。
投稿: とみ | 2007年10月30日 (火) 00時30分
とみ様のアップ読ませてもらったら何も書くことがございません。本当にお若い藤十郎丈。「無残な青春」こういうのを若い人が観てくれたらいいですね。
投稿: hitomi | 2007年10月29日 (月) 20時05分
>hitomiさま
客席の盛り上がりも江戸の華。混乱もまた楽し。
大阪松竹座も,おっちゃん,おばちゃんのつぶやきが楽しいですよ。
大津絵道成寺で藤十郎丈が早替わりなさっているとき,あれは扇雀か翫雀かとゆうたはりました。ダミー無しの全部藤十郎丈,お若かった。益々若々しくなられています。
投稿: とみ | 2007年10月26日 (金) 21時59分
\(〇O〇)/ NO!屋号間違えるような方が掛け声するんですかぁ。そんな人が間違えるなんて想定外です。
投稿: hitomi | 2007年10月26日 (金) 08時28分
>hitomiさま
歌舞伎座の南座化(爆)現象ですね。南座はもっと信じられないドラマがあるようです。
ワタクシメが鑑賞したときは,いい大向こうさんと,屋号を間違う往復びんたものの大向こうさんと双方おられ,つかみ合いのケンカにならないかと案じられました。
今月エントリに屋号を付けているのはそのせいでもあります。
投稿: とみ(風知草) | 2007年10月25日 (木) 23時51分
「赤い陣羽織」は途中からしか、観劇出来ず残念でした。
「新口村」の藤十郎丈のお若いことに仰天するくらいでした。隣席の白人女性がこの舞台の途中で退席。面白そうに観ていたのに。「羽衣」も全然観なかったんです。
あれーでした。
投稿: hitomi | 2007年10月25日 (木) 20時53分