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2007年9月17日 (月)

「エレンディラ」16日マチネ

大阪城公園のシアターBRAVA!で,「エレンディラ」を観劇した。前評判も,あまりに壮大な演出プランで公演が1年延期になった,3幕構成で上演時間4時間…等々,期待はいやがうえにも高まる。
原作: ガルシア・マルケス
「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」 鼓直 訳 新潮社刊「ガルシア・マルケス全小説」より
脚本:坂手洋二,演出:蜷川幸雄,作曲:マイケル・ナイマン
美術:中越司,照明:原田保,衣裳:前田文子
キャスト
ウリセス/中川晃教,エレンディラ/美波
祖母/瑳川哲朗
作家/國村隼,語り部/品川徹,語り女/山本道子
ウリセスの父/石井愃一,ウリセスの母/立石凉子
写真家/あがた森魚
あらすじ
南米のとある村に,翼のある息も絶え絶えの老人が倒れていた。天使か悪魔か。老人はエレンディラという女の名を呼び続ける。その瞬間,老人の魂は美しい少年の姿となって現れ,過去を語り始める。
強欲な祖母に売春を強いられ,テントで旅する美少女エレンディラ。ある日無垢な少年ウリセスに出会い,二人はたちまち恋におちる。ウリセスは不思議な力を持つ少年だった。
引き裂かれても阻まれても,求め合う二人の魂は,二人を結び合わせる。とうとう,祖母を殺害し,共に逃げようとしたが,エレンディラは砂漠に走り去り,行方知れずとなった。
語り部の語るこの地方のエレンディラ伝説を小説にまとめている作家は,この物語の真実を探ろうとする。

乾いた大地,たまさか降る雨,遠い海,井戸を求めて彷徨う祖母と孫。熱い血がたぎり,売春,強盗や殺人が日常的な,地球の反対側の南米。エレンディラの長い長い苦行を表すため,発端の失火,務めの開始,修道院への軟禁,軍隊による逮捕などと脱走と殺人未遂が交互に回り続ける。信じがたい悲惨な売春暮らしを続ける美しい少女の前に,無垢な少年が現れ,当然のように恋が始まる。もう独りでは生きられないほどの狂おしい恋。恋は奇蹟を呼び,ウリセスは内に秘められていた力に目覚める。
シニカルかつアイロニカルな現実に引き戻されそうになりながらも,基本は無垢な魂の飛翔と,魂の美しさだけが生きる全てという極めて真っ当な主題である。
蜷川さんは,これまで成功した演出を全て盛り込む。いちいち,あれはあのときの…,これは,異ジャンルの演劇のこの部分の導入,あれは某演出家の…と書き連ねることに意味があろうとも思えないので,まとめると,出来ること全てなさったということだ。
ワタクシ的には,蜘蛛女がツボ。駝鳥さんもシュール。


シンガー&ソングライター,ミュージカルスターの中川晃教さんは,台詞の声から美しく,エキゾチックなマスクとスレンダーな肢体の美波さんは,世界を救世する美しさ。邪悪を体現する瑳川さんの老婆の演技と朗々たる歌唱には参った!,ひとりまともな日常性のある作家の國村さんが異星人のようだ。

ナレーターが,ウリセス,語り部,語り女,作家とリレーされ,凡婦は混乱した。小道具の使い方がお上手なのは分かるが多すぎないか。興味深いので,ついじーと見てしまう。全部暗喩があるはずだ。紗幕,カーテン,テントの布の使い方が手慣れて綺麗だ。フライングは意味のあるときにしか使ってはならないという見本のようなエンディング。

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演劇

あらすじ(シアターBLAVA!より)転記
失礼ながら,消えてしまっては残念なので転記させて頂く。
南米のとある村、人々の集まる場所に瀕死の老人が運ばれてくる。見るとその背中には羽根が生えている。息も絶え絶えに老人はある女の名を呼ぶ・・・「エレンディラ」。その瞬間 老人は天高く舞い上がり、若かりし頃の美しい姿に戻っている。村人の見守る中、彼は、自分の人生を狂わせたファム・ファタール、エレンディラの話を始める。

少女エレンディラは両親を亡くし祖母に育てられている。この鬼子母神のごとき祖母は美しかった自分の過去の栄光の幻影に生き、幼い孫を小間使いのように扱って家事全てを孫におしつけている。ある日、エレンディラは過労から居眠りをしてろうそくを倒し、家を全焼させてしまう。祖母は、その損失は自分で稼いで返してもらう、とばかりに年端もいかぬ彼女を娼婦にして、一日に何人も客をとらせて大もうけ。国中をベッドと共にさまよう流浪の高級娼婦のもとには長蛇の列が。
ある日彼女は、本当の愛を誓う美青年ウリセスに出会う。ウリセスは密輸商人の息子で、彼らはオレンジ商人を装っているがその中にはダイヤモンドが埋め込まれているのだ。目を開けたまま眠り、過去の美しかった自分を巡る求婚者たちの思い出を夢見ている祖母の傍らで、エレンディラはウリセスと愛を交し合う。砂漠で出会った伝道僧の集団が、売春を厳しくとがめて、祖母からエレンディラを奪い去る。修道院の中で、かつてなく平穏な生活を送り、祈りにあけくれるエレンディラ。しかし修道院がインディオたちを西欧的婚姻制度にはめこむべく集団結婚させようとしており、自分も花嫁にされそうになるに至って、修道院を出て祖母と砂漠を行くことを選ぶ。
さて、恋の力は神聖で、ウリセスの触れるものは全てが美しい色に変わってしまう。不思議な力に満ちたこの青年は、ダイヤモンド入りのオレンジをにぎりしめ、エレンディラの行方を捜し求める。

一方祖母は、ますますはぶりよく商売を続けている。今やエレンディラのキャラバンは、露天、写真屋、楽隊などを豪勢につれ歩き、砂漠一番の語り草だ。やっとめぐり合えたエレンディラとウリセスは、祖母からの脱出を試みて、戦争地帯に紛れ込んでしまう。軍隊に応援を頼んだ祖母はあっさり2人に追いつき、彼らの駆け落ちは失敗に終わる。
再び祖母のもとで春をひさぐエレンディラ。彼女たちのキャラバンは砂漠を越えて海を臨む場所に着く。生まれて初めて海を見たエレンディラの心に何かが芽生え、気がつくと祖母を殺そうとしている。しかしどうしても自分ではできず、助けを求めて彼女はウリセスの名を叫ぶ。その声を聞いた彼は、それだけを頼りに彼女を探しあてる。ウリセスは彼女のため、祖母を殺そうとする。しかし毒入りケーキを食べさせても、リュートが爆発しても何故か祖母は絶対に死なない。不死身の祖母だが、最後にはあたりをうろつく死神の力を借りた青年の決死の刃のもと遂に息絶える。祖母が本当に事切れたのを確かめるや、エレンディラは呆然自失のウリセスを残し、ひとり走り出す。

これはこのあたりに語り継がれる物語だ。そしてこの村に住む著名な作家がそれを小説に描いた。しかし、作家には疑問があった。なぜエレンディラはウリセスを残し、一人旅立ったのか?その秘密が、今解き明かされる・・・。

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コメント

>hitomiさま
コメントありがとうございました。これは,ゆっくり考えて加筆しないといけませんが,まずは,近々に皆様のお宅にコメントしに参ります。

投稿: とみ | 2007年9月19日 (水) 12時56分

>ぴかちゅうさま
トラコメありがとうございました。
フライングはありましたが,ラストはクレーンのように見えました。
苦難の人生の何と長いことか…。あのまま死を迎えた方が幸福だったのにと思わせるところが凄い作品です。演劇はこうでなくては…。カタルシスあってなんぼのもんです。
みんな,泣いたはりました。

投稿: とみ | 2007年9月19日 (水) 12時54分

>悠さま
>名古屋で。
そういう選択肢もあったんや~。
未だに,どこまでが真実で,どこからが幻影か分かりにくいところあります。誰が語っているのか入れ子の輪が閉じません。「(“”)」のいっぱいついた難解な文章を読んだ気分です。
アリーナ形式で3方から鑑賞する演出プランなのでしょうか。
祝祭性があってよかったです。

投稿: とみ | 2007年9月19日 (水) 12時49分

宙つりか、クレーンなのか、私にはさっぱりですがこれぞ演劇の魅力と言う感じでした。

投稿: hitomi | 2007年9月18日 (火) 20時35分

大阪公演のレポアップ、お待ちしていました。シアターBRAVA!の舞台では最後の飛翔の場面はフライングでしたか?彩の国ではリフトというか車から出ているアームの先についている台に乗る(安全ベルトで縛りつけながら)形でした。名古屋でも宙吊りだったというレポもあり、劇場によっていくつかの演出バージョンがあったのかちょっと気になっている次第です。
瑣末なことをまず書いてしまって恐縮です。彩の国公演の記事をTBさせていただきました。不思議な世界に酔ってその勢いでツラツラ長々書いてしまっているのでお恥ずかしい次第です(^^ゞお目通しいただけるだけで有難く、コメントもいただけて嬉しいです。
次の蜷川作品は「オセロー」。コクーン関係は予算と作品への興味の関係で見送ると思います。

投稿: ぴかちゅう | 2007年9月18日 (火) 00時25分

上演時間4時間を超えるってんで、覚悟してホテルをとってみてきました、名古屋で。帰りの電車を気にして早くでなくてすんだので、最後の、原作に付け加えた、國村さんのなぞときの場面みられました。
瑳川さんのおばあさん、よかったですね。最初は白石さんだと聞いてたのですが,あのお役は、男でなければできませんよね(^^;)
tb二つつけさせていただきました。

投稿: 悠 | 2007年9月17日 (月) 23時21分

>どら猫さま
あれもこれもと思いながらも,選ばなくてはなりません。これと量りにかけて諦めたものは,皆様のブログで拝見させて頂いております。
まー,てんこ盛りでした。ゆっくり解き明かしてゆきます。

投稿: とみ | 2007年9月17日 (月) 21時48分

こんばんわ とみ様
見に行こうかどうしようか悩んで結局行かなかったのですけど、よかったみたいですね。行けばよかったかな。本で読んだ印象だと、どうやって舞台にするか難しかろと思っていたんですけどね。
蜷川さんの今までの演出がおわかりなので、楽しさも人一倍というところだったのでしょうか。

投稿: どら猫 | 2007年9月17日 (月) 21時25分

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