蝉しぐれ・大阪松竹座15日マチネ
15日(土),大阪松竹座で,「蝉しぐれ」を観劇した。
原作:藤沢周平,脚本:池田政之,演出:河毛俊作
配役
牧文四郎/片岡愛之助,お福/相田翔子
小和田逸平/松村雄基,島崎与之助/野田普市
牧助左衛門/高橋長英,登世/星由里子
鍛治織部正/長谷川哲夫,犬飼兵馬/安藤一夫
里村左内:近藤 洋介,藤井宗蔵:松山政路,矢田淑江/松岡由美
日本海を臨む小藩海坂藩普請組牧助左衛門の養子・牧文四郎は,父母を敬い,一平と与之介という無二の友にも恵まれ,剣の道に励んでいた。隣家の娘・お福を意識しながらも,まだ恋と気付いていない。
文四郎15歳の夏,運命は変転する。小禄の下級役人でありながら正義漢の助左衛門は,世嗣を争うお家騒動に巻き込まれ,咎人として切腹させられた。捨て扶持を与えられ長屋住まいとなった母子。一方,お福は,江戸詰めの父について江戸屋敷に奉公に出ることとなる。
その後,文武に励んだ文四郎は,道場の師範代に抜擢され,郡奉行支配も命ぜられる。一方,お福は藩主のお手つきとなり,男子を出生する。お福と若君を巡り,新たな陰謀が動き始めた。
友に支えられ,文四郎は巨悪に立ち向かう。それは,父の汚名を濯ぎ,お福を守るための全てを賭けた戦いだった。
貧しい小藩で,真っ当に生きる人々を情感豊かに描き,かけがえのない青春を愛おしむ藤沢作品の最高傑作。
舞台は,藤沢文学のテイストを損なわないよう,忠実にストイックに進行する。緻密な筆致も,リリカルな自然風景の映像もない舞台という戦場では,勝負は役者の演技のみだ。
名場面は,きっちり抑えられて客席の涙を絞り,主演の片岡愛之助丈が歌舞伎役者として培われた見得に近いポージングが小気味よく決まる。
若者の熱さ,見守る大人達の暖かさと渋さのバランスもよく,心洗われる舞台だ。
藤沢文学は圧倒的に男性に人気がある。無骨で不器用だがピュア,与えられた運命を受け入れながらも自己の信念を貫きたいという男達の願望がぎゅーぎゅーに詰まっており,格好良すぎない日本人らしい主演が舞台に立っている。是非,中高年ご夫婦で観劇して頂きたい。
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コメント
>ハヌルさま
>絆、友情、愛情、色んな感情が渦巻き、深く、よりリアルに
なってくるのでしょうね。
何と言ってもお芝居は人間をみるもの。人間を好きになることから始まります。本当に良い座組と思います。
舞台も終盤に入りました。スパート頑張ってくださいませ。貴宅に頻繁におじゃまさせて頂きます。
投稿: とみ | 2007年9月19日 (水) 01時11分
>rikaさま
コメントありがとうございます。
ええ舞台やと思いますので,悔いのないご観劇を…。
後悔ばかりしております。
投稿: とみ | 2007年9月19日 (水) 01時01分
小説や映画とは違い、舞台は生ものです。
架空だけれどそこに生きています。
回を重ねるごとに次第にチームワークも良くなり、
絆、友情、愛情、色んな感情が渦巻き、深く、よりリアルに
なってくるのでしょうね。
なんだかんだ言うてもやっぱり舞台はええもんです。
投稿: ハヌル | 2007年9月18日 (火) 23時23分
とみさん、こんばんは。
レポ拝見しました。
愛之助さんの舞台だというのに、今回は初日近くに1度行ったきりでじっと耐えているので(笑)、中日を過ぎた舞台がどのようになっているのかとても気になっていました。
う~~~~~やっぱり早くもう1度観に行きたいです。
投稿: rika | 2007年9月18日 (火) 23時00分
>ムンパリさま
10行以内で書きます。
つらつら,ブレイクの歴史を考察しますと,二代目市川團十郎丈の助六,初代中村仲蔵丈の斧定九郎,片岡仁左衛門丈の与兵衛…。背徳&反社会性のテイストがないといけません。
また,仁左さまは長いおみ足,平幹二朗丈も長いおみ足の気前の良い露出が人気ポイントでした。
長いおみ足はちら見せオッケーですが,そうでない場合,赤旗ひとつで奮戦していただきたい!夏祭浪花鑑にこだわる理由はここです。脱げばええんかいなと突っ込みを入れられそうですが…。
もとい。
ラスト,良かったです。脚本家,演出家座布団10枚!
投稿: とみ | 2007年9月18日 (火) 22時51分
とみさま。
初日から2週間で舞台も変化を遂げました。はじめは脚本に忠実だったかもしれませんが、今はかなり役者さんのカラーが出ていて、日々勝負いう気概が伝わってきます。
それだけに、とみさんがコメントされていることに同感。愛之助さん応援団の一人としては、もっとこうあってほしい、という思いがついよぎります。それについて書き始めたら100行位必要なので控えておきますね!(笑)
あと1週間、少しでも多くの人に見て頂きたいです。
投稿: ムンパリ | 2007年9月18日 (火) 07時41分
>るみさま
蝉しぐれ紀行,あとで貴宅によりゆっくり拝読致します。長編ですから,取捨選択が難しいですね。
演劇として優れているし満足できるものでしたが,片岡愛之助丈をブレイクさせる第一弾としては,安全策をとりすぎたといううらみは残る,応援団モードのおとみでした。
投稿: とみ | 2007年9月17日 (月) 21時19分
とみ様のおっしゃるとおり、舞台では庄内のあの美しい風景を表現するのは難しいので、本当に役者さんの演技の力が試されましたね。
文四郎もお福もとても純粋で、生き生き伸び伸びと演じられており、とても気持ちよく見させて頂くことが出来ました。
目立ちはしないけれど、みんなそれぞれに一生懸命生きる人生がある。
そんな藤沢周平さんの作品が大好きです。
投稿: るみ | 2007年9月17日 (月) 12時36分