ロマンス・こまつ座&シス・カンパニー
ロマンス
こまつ座&シス・カンパニー公演
作/井上ひさし,演出/栗山民也
キャスト
オリガ・クニッペル(ドイツ系女優・チェーホフの妻)他/大竹しのぶ
マリヤ・チェーホワ(チェーホフの妹)他/松たか子
壮年チェーホフ他/段田安則
青年チェーホフ他/生瀬勝久
少年チェーホフ他/井上芳雄
晩年チェーホフ他/木場勝己
スタッフ
演奏/後藤浩明,音楽/宇野誠一郎,美術/石井強司,照明/服部基,音響/秦大介,衣裳/前田文子,振付/井手茂太,歌唱指導/伊藤和美,舞台監督/三上司
あらすじ
チェーホフ家は,ロシアの田舎町のはずれで食料品店を営んでいたが,一家は破産して夜逃げ。少年チェーホフは置いてゆかれ(>_<)ゞグスッ,苦学の末,モスクワ大学医学部に入学し,卒業後,開業する。常に献身的に兄を支える妹マリヤが側にいた。稼業の傍ら,劇作を続け,ヴォードヴィルによる作劇を夢見続ける。
病苦と貧しさも豊かな人生の輩と笑い飛ばしながら,モスクワ芸術座で,仲間達と演劇活動を続けていたとき,生命力に溢れた女優オリガと出会う。「かもめ」,「ワーニャ伯父さん」,「三人姉妹」など立て続けにヒット作を書き上げるなか,オリガと結婚し,最後の戯曲「桜の園」に取りかかった。
晩年のチェーホフは,オリガとの愛と泣き笑いの日々を過ごしながら,自分の意図と,実際に上演された演劇とのギャップをアイロニカルに見つめていた。
![]() 演劇 |
21世紀の日本を代表する劇作家井上ひさし氏が,19世紀末,近代劇の基を築いたロシア人劇作家アントン・チェーホフの生涯を,ヴォードビル形式の劇に仕立てた。演出には,どんな脚本にも深い解釈で臨み,過剰と過激を避ける演出家・栗山民也氏が取り組む。演じるのは主演級の一騎当千の強者6人のプレーヤー。劇場は,空間そのものがドラマチックな世田谷パブリックシアター。8月から9月の2箇月公演のみだ。9日ソワレを観劇したが,見られたことにまず感謝だ。
2人の女優さんはそれぞれチェーホフの妻と妹という基調となるお役が振られているが,4人の俳優さんはそれぞれの時代のチェーホフを演じるとともに,全ての場面でチェーホフを巡る複数の人物を演じわける。
以下は観劇前のマイ妄想
天保十二年のシェイクスピアよろしく,昭和21年のチェーホフ仕立てで,世田谷区郊外の大地主の一家を舞台に,農地解放や特権階級の没落,小作人の老人や若者,職を失った軍人,奥方や令嬢達の運命の変転をテーマに,チェーホフ劇5~6本コラージュし,6人の俳優が複数の劇を,衣装も場面も全く変えず,機関銃のように台詞を放射し,一つに集約してゆくのかなー。そうだったらおもしろそー。と思っていた。主人公達はロシア人で赤毛ものだった。ハズカシー。
新劇が好きで難しいけど我慢してチェーホフを鑑賞した者が最も楽しめそうだが,全ての観客が演劇の豊かさを堪能できる素晴らしい舞台だ。
蛇足だが,公式HPのお写真,あらすじは全く作品の印象と異なることを僭越ながら申し添える。
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コメント
>悠さま
チェーホフ劇の演出方法について,もの申し上げるという趣旨の台詞はありました。しかし,観客は,井上ひさし劇を見に来られた方が中心。21世紀の日本では,チェーホフより井上の方がポピュラーですよね。
とにかく,尊敬という美しい感情が支配する素敵な公演でした。
投稿: とみ | 2007年9月25日 (火) 12時46分
喜劇は、「人と人とが分かち合う」(台詞ちがってたらごめんなさい)云々って井上さんの喜劇に対する主張ですよね、きっと。「笑」がこの國では、いつも、「悲劇」より下に見られている,これに対する井上さんの異議申立もあるんだろうな〜と、勝手に推測してました(^^:)
投稿: 悠 | 2007年9月24日 (月) 23時30分
>ぴかちゅうさま
井上ひさし先生は常に正しい選択をなさると信じられますね。栗山さんの演出も,役者を活かしてなんぼのものという姿勢を崩されませんから,結果,あとからじんわり来ます。
全ての皆さんが尊敬しあっておられる素晴らしい座組みでした。戯曲単品としての完成度より大切なものがそこにありましたね。
投稿: とみ | 2007年9月24日 (月) 21時24分
9/23に観た感想をTBさせていただきますm(_ _)m
さすが井上ひさしでした。6人のキャストの魅力を引き出してまさに上質なボードヴィル劇に仕上がっていて堪能できました。4人の素敵なチェーホフとのからみが素晴らしく、夫婦愛にホロリ。コメディ部分も生瀬さんが加わるとまさにカタカナのボードヴィルって感じになったような気がして勝手に喜んでいました。
続けてモーパッサン、晩年のシェイクスピアの評伝劇も書きたいとのことで海外作家の評伝劇3部作!そちらもはや楽しみになっています!
投稿: ぴかちゅう | 2007年9月24日 (月) 13時30分
>麗さま
コメントありがとうございました。1箇月以上も前に唯一度の観劇を済ませてしまいましたので,もしかしたら全く違うものになっている可能性ありますね。
芸術家の葛藤より,人間愛に軸足を置いたところに共感できました。
投稿: とみ | 2007年9月17日 (月) 00時15分
数々のチェーホフ作品の題名は耳にしているものの、
実際にその芝居を見た事もなく・・・。
ましてやチェーホフ本人の事など全く知らなかった私。
逆に、なんの知識も無かったおかげで、純粋に楽しめる事ができました。
キャスト6人のバランスが非常に良く、上質な芝居に仕上がってたと思います。
投稿: 麗 | 2007年9月16日 (日) 22時22分
>スキップさま
トラコメありがとうございました。これだけのメンバーがあつまってしまいますと面白くないわけないですから,結局どうだったのよといえなくなってしまいます。
いのうえさんの歌曲も聴けましたし,みなさんのお歌の上手さも分かりました。
全ては愛です。
投稿: とみ | 2007年9月16日 (日) 22時00分
とみさま
> 蛇足だが,公式HPのお写真,あらすじは全く作品の印象と異なることを僭越ながら申し添える。
全くそのとおりですね。私は観劇前にはHPもチラシも見なかったので、まんま受けとめましたが、後でHPのあらすじを読んで、当初はこういう構想だったのか、とちょっと驚きました。
とはいえ、上質の本に上質の役者さんが揃えば舞台が上質となるのは必然。
チェーホフのことを知らなくても、チェーホフとオリガというカップルのロマンスとしても楽しめるお芝居でした。
投稿: スキップ | 2007年9月16日 (日) 02時17分