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2007年8月21日 (火)

坂東玉三郎が語る天守物語・第2版

9日,調布グリーンホールで拝聴してから2週間過ぎたが,保ちの良い玉三郎丈の舞台の記述はいつでも可能と,暑さと忙殺でエントリも亀の歩みだ。物忘れは酷くなる一方だが,玉三郎丈のお言葉は絶対に忘れないのが,我ながら不思議だ。
昨年の大阪松竹座では,丈は富姫の扮装し,一門のみなさんと上演なさったが,そのとき,すっぴんは恥ずかしかったと述懐しておられた。今回は敢えてすっぴんにリベンジなさるので,すべての雑用を前倒し(なぎ倒し)て,お江戸遠征に踏み切った。

朗読と音楽で綴る言の葉コンサート
坂東玉三郎が語る泉鏡花作天守物語
播州白鷺城の妖しくも優艶の美

朗読/坂東玉三郎,ト書き朗読/山本昂尚,笛/籐舎名生
拵えは,ベージュ系の紋付袴ですっぴん。タイトな七三分け。装置は,花器に生け花と薬玉の打掛(一幕及び二幕とも)。タイトル,サブタイトルが長い理由は分からなかった。

玉三郎丈は,オープニングに,天守物語を様々な上演形式で幾度も演じ,これからも演じ続けてゆきたいと語り始められる。鏡花先生をこよなく敬愛なさっておられることがじわーんと伝わる。

今年の朗読会は,ト書き部分を山本さんが語り,全台詞を一人で語る形式を採用した。2時間余り,ト書きも含めて一人で進めると,リスナーが混乱することを避けるためである。昨年も大緊張したが,今回も緊張している。語りのプロではないので,俳優として演じる。
鏡花先生は,芸術至上主義と恋愛至上主義で,恋する美しく純粋な者達と,妨げる醜く邪悪な存在を対立的に物語に登場させる。そして,前者は度々,あやかしの者・妖怪変化の類であり,後者は欲にまみれた人間である。対立する世界を飛び越えるのが,魂の美しさゆえ,俗世にいられなくなった恋に生きる人間と,恋人達を救済する芸術の神である。
芸術の神といっても,この物語では,獅子頭と牡丹の花飾りのある櫛を彫った工人で,鏡花先生の芸術家が果たす役割についての考えが伺える。


なるほど,なるほど…。鏡花先生の御父君は,金沢の彫金師。御母堂は江戸の能楽師の息女。美のクリエーターとしての工人を尊敬し,美の体現者が起こす奇跡を信じておられる。芸術家とは,「職人としての職能を基盤とし,彼岸と此岸を往還できるとともに,結界を超えようとする者運び去り,美しい者を救済できなければならない。」というお考えらしい。まさに,丈は,このお考えを実践しておられる。玉三郎教の教義がまたひとつまとまった。

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演劇

ト書きの語りは,明瞭で硬質なお声がよいようだ。情景を音で表現なさる笛が素晴らしい。笛は,魂を操る楽器・悪魔の愛器として物語に登場することがあるが,まさにそんな感じ。
丈の富姫はもう何も申し上げることはなく,舌長姥も手の内。亀姫は可愛く残酷で,女童がお唄も含めて思いっきり可愛らしく,これは一度は扮装付きで拝見したい。切り髪の禿の拵えが見たいゾ。図書之助は,お手本として神妙に拝聴した。
冒頭に解説なさったとおり,近江之丞桃六にお力を注いでおられ,深い余韻のなかに収束した。普通に上演した際の,幕切れブチッ感が全く感じられなかった。何故だ。
素浄瑠璃を聴くようで,大変楽しませて頂いた。台詞劇の台詞を聴くというのは習慣性がある。もう,聴きたくなってきた。

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コメント

>みよ吉さま
コメントありがとうございました。
翻って考えてみますれば,恋するものだけが芸術家と同等の力を持つことができるのかもしれません。
まもなく阿古屋と松風。大役二題に取り組まれるご意向に思いを馳せ,少しでも深く理解したいと勉強していますが,所詮は一見にしかず。回数みたいなとため息をついております。

投稿: とみ | 2007年8月30日 (木) 00時57分

コメント遅くなり失礼しました。
いつもながら、とみさまの御文を読ませて頂きますと、又その舞台の有様は勿論のこと、新たな教養まで授けて下さって、有難うございます。今回は
芸術家とは 「職人としての職能を基盤とし・・・云々」
う~ん・・なるほど!!有難うございました。

投稿: みよ吉 | 2007年8月29日 (水) 13時47分

>ミンミンさま
コメントありがとうございます。雑食系の拙宅ですが,玉三郎丈のお芝居となると,非常に勉強するおとみです。
>ト書きが別の方だとよりスッキリしたでしょうね。
おひとりだと,長くなってしまわれたことでしょう。それでも,桃六のとこらへんは,ラルゴになってました。前日1時間の睡眠でしたが,頑張りました。

投稿: とみ | 2007年8月24日 (金) 21時33分

>hitomiさま
>天守物語の理解が段々深まるようでうれしいです。
勝手解釈して暴走気味のおとみです。昨年の朗読会は不覚にも行きそびれましたので,今度こそという思い出行ってまいりました。この次はどのようなスタイルなのでしょう。

投稿: とみ | 2007年8月24日 (金) 21時29分

とみ様、こんばんは。

>ベージュ系の紋付袴ですっぴん。タイトな七三分け。

あいや~~~行けばよかった、、、やっぱり(泣)
ト書きは他の方が読んだのですね。
私は昨年の言の葉コンサートと朗読会に行きましたが、
ト書きが別の方だとよりスッキリしたでしょうね。
あ~~~行けばよかった。
来年もあることを祈ります。

投稿: ミンミン | 2007年8月24日 (金) 20時08分

玉三郎丈のすっぴんは大好きです。清潔感に溢れておられる。昨年の桜の頃の朗読会はお宝物です。お値段もお安くて驚きました。天守物語の理解が段々深まるようでうれしいです。

投稿: hitomi | 2007年8月24日 (金) 14時04分

>はるきさま
平日昼一公演,調布というのが謎の公演でした。世田谷パブリックで昼夜2公演くらいが最も相応しいように思われました。
実験的な試みだったのでしょうが,玉三郎丈の場合いつも最新が最上。また,レパートリーが広くていらっしゃるから,もしかしたら,もう一世一代済んだものもあるのかも…。(;^_^A アセアセ…

投稿: とみ | 2007年8月23日 (木) 23時08分

ああ、やっぱり行きたかったです…でも、とみさんの文章で脳内再生出来るのは有難いです。猛暑の中、この空間だけは別世界のようですね。

>天守物語を様々な上演形式で幾度も演じ,これからも演じ続けてゆきたいと語り始められる。

ついていきます。

投稿: はるき | 2007年8月23日 (木) 22時16分

>向日葵さま
コメントありがとうございました。
>難しい論理を超えて肌で伝える才能は丈ならではと思います。
お一人で語られる限界,大団円の唐突さは,お気になさっておられるようでした。なーんもきにならないのに,完璧主義者であられるようです。
一世一代まで頑張りましょう。

投稿: とみ | 2007年8月22日 (水) 23時54分

臨場感あふれるルポ、読者である私もその場に立ち合わせていただいているかのようです。
丈の舞台は加速度を増し進化しているように感じます。”美の本質は何ぞや”を、難しい論理を超えて肌で伝える才能は丈ならではと思います。
>玉三郎丈は,オープニングに,天守物語を様々な上演形式で幾度も演じ,これからも演じ続けてゆきたいと語り始められる。
なんて嬉しいお言葉!
秋の舞踊公演にも馳せ参じたいもの!

投稿: 向日葵 | 2007年8月22日 (水) 23時33分

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