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2007年7月28日 (土)

宝塚花組公演「あさきゆめみしⅡ」

070518asakiposter梅田芸術劇場で上演された「あさきゆめみしⅡ」について…。何とか見ることができた。
2000年春,愛華みれさん,大鳥れいさん主演で,大和和紀さん作の「あさきゆめみし」を原作に上演されたレビューがリニューアルされた。美しい歌詞と,哀切で流麗なメロディライン,和風トート閣下の刻の霊(ときのすだま)という新機軸。完璧な美貌とはまりキャラ揃いの2000年花組公演だった。このとき,刻の霊で人気を博した春野さんが,今年は主演の源氏の大臣を演じた。
出演は,春野寿美礼さん(光源氏),桜乃彩音さん(紫の上,藤壺中宮),真飛聖さん(刻の霊),壮一帆さん(頭の中将)他。

期待の理由は,世界に誇る最高傑作の源氏物語に,多くの女性の共感を得た大和さんの脚色(女主人公を紫の上と設定)と詩,女性の娯楽の王道・宝塚歌劇団が制作。宇治十帖を除き,レビューならではのイッキ上演というのも類がない。これだけ面白くて当たり前が整って,駄作なら阿呆である。

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光源氏の生い立ちから須磨に流されるまでが,追加再編と成った。源氏が生涯想い続けた藤壺(桜乃彩音)の死までが一幕。二幕は,源氏と女三宮(桜一花)との結婚から始まり,女三宮の不義密通,最愛の紫の上(桜乃彩音)の死と深いドラマが続く。
全編を支配する役割を果たす刻の霊は,今回は真飛聖さん。お衣装から角が消え(アカン),きんきら度が大人しくなった。眷属の拵えもまとも(ますますアカン)になり,装置もコスモス的な空間になってしまったので,異次元の存在のへんてこ感が薄目に…。ここは,10人はダンサーを揃え,「五月雨,小夜月,欣求浄土…」と舞い狂って欲しいところ。
この世とあの世の架け橋,シースルーエレベーターも悪くないが,照明が暗いのは日本ものには馴染まない。省エネ節電反対!ひな壇に見立てた緋毛氈の大階段と,刻の霊がうろうろし,パラレルワールドを象徴する銀橋は要る。
豊かな声量と傲慢が似合うキャラの春野さんは,雅というより権力の厚化粧に余念のない源氏の大臣・六条院のイメージで,この世の栄華の頂点を極め,女人の愛を独占する男に見え,素晴らしい出来映え。だからこそ,たった一人の最愛の女性を幸福にしてやれなかった悔恨を歌う愛の賛歌(ボレロ)は,説得力があった。イントロだけで拍手が起こる名曲で期待に違わず聴かせて頂ける。
源氏は必要とする娘役の数が半端でない。人数不足は痛い。
結論,大劇場でフルメンバー,せり,盆,大階段全部の装置フル稼働で,月組の瀬名さん,彩乃さん,大空さん,霧矢さんで再チャレンジを…。

P.S. 私見ではあるが,“あさきゆめみし”が絶大な人気となったのは,紫の上を女主人公に据え直したことと信じている。娯楽としては,身を切られるような苦しい別れを決断した女たちが,毅然と新しい生き方に踏み出すことに共感を求める方がたやすい。しかし,紫には別れという選択肢は用意されていない。
紫は,幼少時に略奪&軟禁の身となるが,親は「それはありがたい。戻していりません(号泣)」。男の都合の良いよう純粋培養され,男の遂げられなかった恋の形代として愛される。外で産ませた子を預けられ成長した娘からあがる利益は実母が独占。元より代替品のため,あっさり新品に首をすげ替えられたあげく,「君にはお気楽で安穏な暮らしをさせてやっているのだから,感謝して然るべきだ(そ,そんな…)。」。
それでも,彼女はポジティブシンキング。この世に起こる喜びも悲しみも全て愛おしいと愛を注ぎ続け,遂に力尽きる。愛の戦士の壮絶な戦死である。大鳥れいさんの明るさとタフネスの芸風が大和さんの原作に合致したと記憶している。彩乃かなみさんの出番と思う由縁である。

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