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2007年6月26日 (火)

獨道中五十三驛

ラダメス将軍さまのキャスティングにかかわらず,6月中にどうしても名古屋に行きたかった理由がこれだ。
猿之助十八番の内 「獨道中五十三驛」
-市川右近十五役早替りならびに宙乗り相勤め申し候-

市川猿之助丈がライフワークの一つとして取り組んでこられた,早替りや宙乗り等外連をふんだんに盛り込んだ復活狂言の通し上演。お家騒動,お家の重宝の奪回,怪奇と仇討ちとロマンス,スペクタクル何でもあり。既出の人気狂言のパロディを綯い交ぜ,娯楽てんこ盛りのロードムービーである。
主演の右近丈は語り手の役者,怪猫,小悪党,本筋と関係ない(`´)ノ☆(((*;・)ゴメンナサイ早替り十二役,捌き役(ン,16)。狂言回しは,弥次郎兵衛女房おやえ・笑三郎丈と喜多八女房おきち・春猿丈。格好良さでは一人勝ち,善人方の二枚目・丹波屋弥八郎に段治郎丈。美しさでヒロインはこの人しか無いと納得の笑也丈は重の井姫と若殿調之助,敵役と忠義な奴に猿弥丈,人畜無害の若者に弘太郎丈,無難な立役と老女形に門之助丈,似合いのおぢさん役とえらいこっちゃの若衆に寿猿丈。
特筆は,きりっと美しく小賢しい洗濯女おくら・猿琉丈。子年に生まれたばっかりに,化け猫の餌食に…。右近猫が猿琉鼠をいたぶる場面は,重力が無くなったようで圧巻。このような方が一座におられるところが,この劇団の底力だ。
♪マキャビティ~マキャビティ~悪徳マキャビティ~♪(三ФÅФ三)

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歌舞伎

お芝居といえば新劇しか見なかった子供の頃(どんな子や),親類に連れられて猿之助一座の「伊達の十役」を拝見し,少人数の劇団が大芝居をやっておられる(m_m)と感嘆したことを思い出した。何と失礼だったことか(笑)。
当時の創造性はそのままに,長身美形,高い技術点と達者な芸の役者さんと,独創的なビジュアル(^_^;と,創意工夫の殺陣,効果の劇団員さんを擁し,上質のエンタテイメントとして歌舞伎を供給し続けるカンパニーに拍手である。新しい歌舞伎の作劇術のメソッドとスピリッツが全て此処にあると言い切っても良い。本家本元の演出はさすがだ。
ただ,見せ場と役者の顔で繋ぎ,瞬間芸で魅せるより,熱い芝居や本物の技芸で勝負できる役者さんを揃えているのにもったいないと思う場面があったことも確か。
いずれにしても,このカンパニーは見続けるぞ!

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歌舞伎」カテゴリの記事

コメント

>ゆきのさま
はじめまして。
蜘蛛の拍子舞を拝見し、桁違いの身体能力と優れた容姿、フォーメーションの美しさに夢中になりました。
よろしかったら、南座のエントリと、蓮糸恋曼陀羅、昨年の泉鏡花四部作の劇評見てくださいませ。誉めまくりに、自信あります。
あとでゆっくり貴宅にお邪魔します。

投稿: とみ | 2007年7月 7日 (土) 08時57分

とみ様
はじめまして。「獨道中…」で検索しお伺いさせていただきました。
私もこの舞台見て来ました。とってもよかった、また見たい!!と、勝手に舞い上がってつづった記事(^_^;)をアップしたので、TBさせてくださいませ。
「もっと凄いもの」とか、確かにそうですね。みんなに見せたれ〜!みたいな(^_^;)。そういう力はあるんですものね!
私も、「このカンパニーを見続け」ていきます!

投稿: ゆきの | 2007年7月 7日 (土) 00時15分

>るるるさま
幸いなことにド田舎住まい。泥臭いものに恵まれており,そのありがたさに鈍感になっています。都会で洗練されたお芝居を飽きるほど見て,こんな台詞言ってみたい。
見巧者のるるるさま,先駆的且つウイットに富み,透徹した審美眼で,ときどきは喝を入れてやってくださいませ。

投稿: とみ | 2007年7月 3日 (火) 21時21分

いつもながら、どたばたですよね。
でも、それがまた泥臭くて味なのです。
最近の芝居は洗練されすぎているような部分があるから、こういう芝居って逆に新鮮な気がします。

投稿: るるる | 2007年7月 3日 (火) 13時07分

>向日葵さま
コメントありがとうございます。
俊寛,新演出あるのですか!楽しみです!
実は,花組芝居の「歌舞伎座の怪人」の劇中劇で「愛の鬼界ヶ島」という「愛ルケ」パロディがあり,これはこれで顎関節ガタガタにして笑いましたが…。
笑三郎丈の立役に期待!

投稿: とみ | 2007年7月 3日 (火) 00時54分

とみさま、具体的なコメントで中日劇場の感動を思い起こすことができました、ありがとうございます!上質エンタテの@中日からわずか1週間、このカンパニーの皆様、昨日は巡業初日、丸本物王道の俊寛を熱演でした。後半は観客が皆身を乗り出し、俊寛の一挙一動に拍手。意外な幕切れが圧巻、言葉を失う素晴らさ~~~!!!巡業だけではなく歌舞伎座で是非やってほしい完成度でした。

投稿: 向日葵 | 2007年7月 2日 (月) 23時33分

>はるきさま
愛に溢れたコメントありがとうございます。よそ様で書きまくって自宅に書かないのは片手落ち。ええ,見たいものはスーパー歌舞伎トゥーランドットかヴァルキューレ。オペラも手掛けられる丈の演出に期待します。
豪華なお衣装,活劇,早替わり,大火,大洪水,小動物,妖精,龍,九人宙乗り等,全場面見所で作っていただきたいものです。

投稿: とみ | 2007年6月29日 (金) 01時57分

連投失礼します。…昨日のコメント、嬉しさが走って粗雑だったなあと反省しております。短いのに、私の楽しいと感じた全てを詰めて下さっている文章力の見事さを言いたかったのですが、言葉足らずで(汗)大変申し訳ないです。
>もっと凄いものでないと
ええ、本当に!!難しいことはよくわからないのですが、変わったことをやるように言われながら、芝居の王道をきっちり学ばれてきた方々なのだなーと感じています。まずは、スタンダード演目での巡業を楽しみに待ちます♡

投稿: はるき | 2007年6月28日 (木) 22時08分

>はるきさま
長い文を書くか,短い文を書くか悩みましたが,走らせていただきました。
なんやかんやゆーてますが,毎月おもだかやさんの公演は拝見しているように思えます。決定版の演目とはいえ,彼らの技量から考えますと,もっと凄いものでないと満足できなくなってきております。フライング・コーディネーターを入れて欲しいナ。脚本家,演出家,プロデューサー頑張ってくださいませ。

投稿: とみ | 2007年6月28日 (木) 12時35分

>いずれにしても,このカンパニーは見続けるぞ!

有難うございますm_ _m(勝手に身内byはるき)
「獨道中五十三驛」、おとみさんの御感想をお待ちしておりました。短いセンテンスですが、楽しかった名古屋での1日が鮮烈に思い出されます^^

TBさせて戴きますね。

投稿: はるき | 2007年6月27日 (水) 22時23分

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» 「獨道中五十三驛」、とりとめなき感想 [日々の手帖]
待ちに待った、一度だけの中日劇場観劇。 詳しい感想は後日載せるつもりだが、一言で言うと「皆一皮むけた」感じ。 堂々と笑いを取りにいって、ちゃんと客席をのせてしまうあたり、より頼もしさを増したと思う。 右近さんの十二役早替り(長右衛門とお絹...... [続きを読む]

受信: 2007年6月27日 (水) 22時30分

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