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2007年4月22日 (日)

文楽四月公演第一部

Nec_00824月15日(日),桜も散り初め,中日近くの国立文楽劇場に駆け付けた。
文楽四月公演第一部
 玉藻前曦袂
 「清水寺の段,道春館の段」

 後室萩の方/文雀,鷲塚金藤次/玉女,
 桂姫/和生,初花姫/玉秀,
 安倍采女之助/文司
 松香大夫,新大夫,始大夫,咲甫大夫,相子大夫,芳穂大夫/宗助,津駒大夫/寛治,咲大夫/燕三
金毛九尾の狐が美女玉藻前に化身し,日本国を傾けようとした五段続きの時代物の三段目だ。タイトルから,金毛九尾のゴージャス狐と,K姉妹ハダシの妖艶な姉妹を期待しても登場しない(しょっぼーん)。登場するのは,恋に恋する白装束の可憐な姉妹である。
日蝕の日に生まれたとして廃嫡された薄雲皇子は,腹心の鷲塚金藤次に獅子王の剣を政敵藤原道春から盗ませ,帝位に就こうとしていた。皇子は,既に没した道春の娘・桂姫を召し出そうとするが,采女之助に恋してなびかないことに業を煮やしていた。金藤次は,獅子王の剣か姫の首かどちらかを差し出すよう,後室萩の方に迫る。
津駒大夫&寛治のどないなるんやろえらいこっちゃえらいこっちゃという緊迫感ある場面から,咲大夫&燕三のそらないで,きこえませぬわいなという吼えるような慟哭に変わる。身替わり首,実は○○,手負いのもどり,文楽時代狂言の醍醐味を堪能できる極上のエンタテイメントだ。視覚的には,姫が二人で華やかなうえ,どちらの姫より美しい文雀さんが遣われる後室萩の方,立派な鬼一首の金藤次と,てんこ盛り。
心中宵庚申の前に,これだけ感動しすぎてよいものかいなと思った休憩時間だった。

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文楽

Nec_0080心中宵庚申「上田村の段,八百屋の段,道行思いの短夜」
八百屋半兵衛/勘十郎,お千代/簑助
島田平右衛門/文吾,おかる/清之助
八百屋伊右衛門/玉輝,姑/紋豊
庚申参り/清三郎,幸助
住大夫/錦糸,嶋大夫/清介
英大夫,呂勢大夫,貴大夫,呂茂大夫,希大夫/団七,喜一朗,龍聿,清丈,寛太郎

のっけから住大夫&錦糸の上田村の段。あんた,心の準備っちゅうもん考えたってぇなと思いながら顔だけは神妙に聴いているうちに,平右衛門と半兵衛の舅v.s.婿対決に…。住大夫さんは,娘を思うオヤジどんが最高と一人決めしているが,「灰になっても帰るな」と絞り出すお声にもうあきません。文吾さんがエエのは申し上げるまでもない。
人情の機微と女の嘆きは嶋大夫/清介さんのもの。陰湿な姑が芯をとるあまり気持ちのエエ展開ではないが,半兵衛の真摯な述懐が光る。
道行が始まると,鰐の口を逃れてほっと一息となるが,庚申参りの清三郎,幸助の若いカップルに緊張の糸が切れ涙腺が決壊する。若く美しく希望に溢れた二人と,死に行く実年カップルの対比がよろし。団七さんのリードする三味線,呂勢さんの尤もな嘆き,値打ちありまっせ。
勘十郎さんが遣われる半兵衛はくらくらするほどセクシー,簑助さんが遣われるお千代は可憐で,滝田栄&太地喜和子カップルのイメージを修正した。

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コメント

>直次さま
武家女房は懐紙,町娘は袂で泣くのでした。やっぱ文楽は整然と懐紙で泣かんとあきませんかしらん。
半兵衛さんも何度も男泣きに泣かはります。夫婦といえども禁じられた瞬間に,恋の高みに駆け上るというシニカルな見方が出来ないこともありませんが,武士の矜持を残した真っ当なお人でした。

投稿: とみ | 2007年4月23日 (月) 21時24分

>おりんさま
しょーもない感想しか書いてしませんのに,読んでもろて恐縮です。一月の弁慶上使と似たプロットですが,わさわさした「おわさ」と抑制が効いて凛とした萩の方と女主人公のキャラが違いますので趣が異なります。写真集ひっくり返しましたら,老女形は妹背山・山の段の定高と同じ人形遣っておられるのではないでしょうか。これが,まあ,きいとくなはれ。玉三郎丈そのまま。
美しいもの皆,玉三郎丈に見えるビョーキとお笑いめされますな。

投稿: とみ | 2007年4月23日 (月) 21時03分

とみ様、おりん様

こちらこそ。
とみ様にふたつ、みっつ、「超」を付け加えたい文楽初心者ですが。これからも、どうぞ、よろしく御願いいたします。

う~む。床前!柔軟剤入り!!ですか。
しかし。目立つように、派手な色でおおきくて・・・ビーチタオル!とか。しきりにあれこれ考えてるミーハーまるだしの自分。(って!)

投稿: 直次 | 2007年4月23日 (月) 16時04分

>直次様、リマインド感謝です。
バスタオル持って行くのを忘れるところでした。
ちゃんと柔軟剤仕上げのバスタオルもって行きます♪

投稿: おりん | 2007年4月23日 (月) 14時18分

>直次さま
はじめまして。文楽ブログでもない拙宅にコメントありがとうございます。ごらんのとおり,超超初心者です。
芸の凄さの桁違い感は分かりますが,どこがどう凄いのか説明する語彙に苦しみます。そのときは,大阪都心の詞で書かしてもろてます。
大坂は人情のまちやあらしまへん。拝金主義と固定した格差がまかり通るきつーい町。金がないのは首が無いのと同じ。心中も多かったし,そやから近松さんがあらしゃったと思われます。
おりんさん宅のバスタオル泣きの勧め,床前でやりましょう。

投稿: とみ | 2007年4月23日 (月) 12時35分

>おりんさま
総合点としては,昼の部の方が文楽らしいです。夜の部は,歌舞伎で決定版を見たりしていますから…。時間の都合もあるでしょうが,粂仙人&宵庚申,玉藻前&鏡山の方が,エンディングがハッピーアンハッピー取り混ぜよいように感じました。昼の部終わったら涙枯れてます。
千秋楽は気合入れて参ります。

投稿: とみ | 2007年4月23日 (月) 12時20分

はじめまして。
レポートありがとうございます。こころ(とバスタオル)の準備ができます。週末の文楽劇場、ますます楽しみになってきました。

投稿: 直次 | 2007年4月23日 (月) 11時04分

仕事のおかげで初日に道春館の幕見と夜の部を観ました。ちょうど観ていないのが、清水寺と心中宵庚申だったのでとみ様のレポートを読んで期待倍増です。
心中物ちっと苦手意識があったのですが、住大夫さんの親父殿がいればばっちり泣ける自信が出てきました♪早く30日になって欲しいです。

投稿: おりん | 2007年4月23日 (月) 01時35分

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