陽春花形歌舞伎「盟三五大切」菊様小万はイノセント
御園座陽春花形歌舞伎は,8日(日)に観劇した。
通し狂言盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)
薩摩源五兵衛・家主くり廻しの弥助/三津五郎,芸者小万/菊之助,笹野屋三五郎/橋之助,伊之助/男女蔵,八右衛門/亀三郎,宅兵衛/亀寿,芸者菊野/松也,富森助右衛門
塩冶浪人の薩摩源五兵衛(実は不破数右衛門)は,芸者妲妃の小万(実は神谷召使お六)に入れあげている。小万は,情夫・笹野屋三五郎と共謀し,源五兵衛に貢がせている。二人は遊び仲間にも片棒を担がせ,まんまと百両を騙り取った。事実を知らされたブチ切れ源五兵衛は,次々人を殺める。三五郎と小万は,逃げおおせたかと思ったが,隠れ家としたのは,民谷伊右衛門とお岩が暮らしていた長屋だった。
芋堀長者(いもほりちょうじゃ)
芋掘藤五郎/三津五郎,緑御前/菊之助,友達治六郎/橋之助,兵馬/亀三郎,左内/亀寿,腰元松葉/松也,後室/秀調
芋掘藤五郎は,長者の姫・緑御前に恋い焦がれている。一方,舞好きの緑御前は,婿選びの舞の宴を開く。友達・治六郎の協力を得て,舞の名人と偽って乗り込んだものの大失敗。開き直って芋掘り踊りを踊り出すとこれが姫のお気に召し,一気に大団円へ…。
![]() 歌舞伎 |
四世鶴屋南北による生世話物。「忠臣蔵」の世界に「東海道四谷怪談」を綯い交ぜ,「五大力恋緘」仕立てにした,南北らしすぎる傑作。恥ずかしながら,好きな作品(戯曲買った。)にもかかわらず,新劇で見ただけで歌舞伎で観劇するは初めてである。
爛熟と退廃の文化文政時代のおどろおどろのイメージ。泥絵の具を使った英泉が描く女風,猪首,手足短く,受け口,毛深い女性を戯曲だけ読めば想像してしまう。源五兵衛は,初老の大男でスケールアウトし体のパーツのバランスが恐ろしく悪い。三五郎は,船頭らしくナイスバディだが普通のにーやん。で,勝手仮想上演していた。
長身,小顔,美形,美声の花形達が挑む南北の世界は如何に!
尾上菊之助丈の美しさに,イッキにフィルター修正した。駕籠釣瓶,名月八幡祭,マノン・レスコー,カルメン,トスカ風,ファム・ファタルに翻弄される実直な男の物語だった。イノセントな妲妃の小万だ。
イヤホンガイドのインタビューによると,菊之助丈は,小万を,考え無しにその場その場で流されてしまう女性として演じておられるそうだ。三津五郎丈は,源五兵衛を,悪ガキに大人嬲りされたオヤジの逆襲として演じておられるとか。
男女蔵丈,松也丈,團蔵丈など悪仲間も,そう悪い子でもなさそうだ。結果として,まともなよい子・若党六七八右衛門役を担った坂東亀三郎丈が,最も無理なく,儲けておられた。いいぞ!
さて,芋堀長者は,大歌舞伎もさることながら,この座組が最高キャストだ。三津五郎丈を中心に,ダチの橋之助丈,麗しい赤姫(緑御前)の菊之助丈,おそろいの亀亀兄弟,すらっとした松也丈が総踊になる大団円は,楽しさで寿命が延びる。
24日が千穐楽だ。それまでに,ぜひもう一度拝見したいものだが…。
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コメント
>Rikaさま
地震お見舞い申し上げます。
楽しい公演ですし,日々の進化も凄いと思われます。ワタクシももう一度行きたいところですが,南座もありますし,悩ましいところです。
お疲れとは思いますので,ゆっくりと記事をアップなさってくださいませ。
投稿: とみ | 2007年4月16日 (月) 21時15分
こんにちは。
御園座に行って来ました。
“た~~の~~し~~い~~~。”
でございました(笑)。
楽までにもう1度ぜひ行きたいものです。
投稿: rika | 2007年4月16日 (月) 19時09分
>ゆきよさま
コメントありがとうございます。名古屋遠征してまいりました。
お若いみなさまの盟三五大切,日に日にバージョンアップしておられましょう。退廃と爛熟になっているかもしれません。
若くて綺麗で一生懸命でしかも上手い。どうしてこんな奇蹟のような役者さんがおられるのか不思議です。
文楽で加々美山見てきました。お初は菊様を思い出してしまいます。
投稿: とみ | 2007年4月16日 (月) 01時07分
とみさま
ご無沙汰しております。
御園座陽春歌舞伎、御覧になったのですね。私は来週末に行く予定です。とても楽しみにしておりますが、とみさまのご感想を拝見して、一層楽しみになりました。
イヤホンガイドも絶対借りですね。
投稿: ゆきよ | 2007年4月15日 (日) 22時40分