朧の森に棲む鬼・キャストが凄い!
市川染五郎丈は未だにご父君から,阿修羅城は良かったといわれるとか。今回はシリーズ初の悪役。ライ(Lie)は,嘘のLieと源頼光をから取った名だ。何と言っても普通の歌舞伎なら稽古なしで出来る御方が,2ヶ月準備なさるのだからその凄さは想像を絶する。殺陣カッコええ。一呼吸間違えば大怪我ものの動きもビシバシ決まる。速いのに悠然と見える,もっと申せば静止画像に見えるところが本物の剣豪のようだ。「疾走感ある」は誉め詞ではないことがわかる(二度と使わないゾ。)。色っぽいとかメルトダウンするというのも,お綺麗で完璧だから当てはまらないし,染五郎丈が染五郎どあることを見せ付けたと申し上げよう。
阿部サダヲさんのキンタ。すんごい儲け役。悪に翻弄されやられ放題の弟分から,きちんと仕返しのできる男らしい男に成長する。阿部さんの役者さんとしての技術点の高さ,キャラクターの魅力を余すことなく発揮させる戯曲も宛書ならではのメリットだ。後半はずっと拍手をさらっておられた。
古田新太さんはマダレ。袴垂保輔の設定だ。色っぽい,危ない,存在感ある,☆新感線の顔,場をさらう役者さんだ。
粟根まことさんのウラベ,小須田康人さんのサダミツ,田山涼成オオキミは,それぞれに相応しい定番のキャラ。これがまた,途方もない技術点だ。
ライが朧の森で出会った三人の魔女に当たる女達が登場する。
真木よう子さんのシュテン。お衣装はゴージャス系を着せてもらえてないが,長い手足,綺麗な小顔が際だっておられた。
秋山菜津子さんのツナ。渡辺綱に相当するが,リチャードⅢのアンのパートも担う。超美形でCGから抜け出してきたようなお姿だが,お笑いもイケル。
シキブの高田聖子さんも相応しい定番キャラで,客演陣を支えておられる。
脚本も誉める!途方も無く面白い,役者さんの魅力を最大限に引き出している,ちょっとした伏線も凝っている,どないなるんやろ,はらはら,どきどき,ぎょえー,かっこええ,もっとやらんかい,座布団10枚!
いつとも知れぬエイアンの都,オーエ山の鬼,朧の森,四天王…。プロットもゾクゾクする。これが☆新感線だ。文句あっか!
☆新感線を知っていても,シェイクスピアWho?リチャード三世What?のご時世だ。黙ってたら,「これってマクベスかも,もしかしたらリチャードⅢ,まぜこぜやからいのうえひさしの天保十二年やで。」となったことだろう。
極悪人の主人公の設定に,シェイクスピアへの仮託が必要というのは中島かずきさんがシャイだからだろうか。中島は中島。シェイクスピアがいなくてもメシ食える。戯曲買うしー。シェイクピアの紗(沙)幕はいらんで。
| 固定リンク
「演劇」カテゴリの記事
- 平幹二朗さんありがとうございました。とうとうこの日が来てしまいました。(2016.10.24)
- 蜷川幸雄さんありがとうございました(2016.05.13)
- 炎立つ 兵庫県立芸術文化センター13日ソワレ ギリシャ悲劇の様式による奥州の命と魂の再生の物語 果敢に挑まれた主演のお二人に心から拍手しました(2014.09.16)
- 白石加代子「百物語」シリーズ第三十二夜第九十八話「橋づくし」 第九十九話「天守物語」 (2014.07.15)
- イノセント・ピープル“原爆を作った男たちの65年”(2014.07.09)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
>麗さま
こんな良いお芝居もっと見て頂きたいものです。2年くらいロングランできるのではないでしょうか。
☆新感線は,生え抜き常連向きと,オールジェネレーション向き,アイドル路線と誰でも楽しめるところがいいのです。よそ行きが天保十二年,吉原御免状でしたが,それも普通の商業演劇のレベルを軽くクリアですから…。
投稿: とみ | 2007年2月22日 (木) 00時56分
とみさま
見事にツボを抑えたレポ、楽しませてもらいました。
各々の役者達が、それぞれのキャラを見事に生きていて、
本当に素晴らしい「朧の森の住人達」ですよね。
森にハマった観客も、立派な住人なのですが。(笑)
>どないなるんやろ,はらはら,どきどき,ぎょえー,かっこええ,もっとやらんかい
えぇ。まったくもって同感です!(笑)
こんなに興奮したとみさまを拝見したのは、
久しぶりなような気がします。
もっと一緒に壊れましょうぞっ!(笑)
投稿: 麗 | 2007年2月22日 (木) 00時11分
>スキップさま
広報は,染五郎丈の悪役の目新しさを喧伝されておられますが,違和感が無く,むしろ,正義のスーパーヒーローが新鮮です。女殺油地獄の与兵衛は怪物でしたねえ。半端な実役は将来のお楽しみとして,今は極端なキャラが光ります。良い作品に出会い,恵まれた資質を活かして頂きたいです。
さて,中島さんの戯曲本は,「絶対に上演するなよ。」と書いてあるのがツボです。ノベライズにはさすが手を出しませんが…。
投稿: とみ | 2007年2月21日 (水) 00時38分
>ハヌルさま
俺たちはシェイクスピアは飯の種にしないと言って欲しかったというところでしょうか。
バッキンガムがマダレ,リッチモンドがキンタ,ジョージがヤスマサ,エドワードがオオキミ,アンがツナ,エリザベスがシキブ,マーガレットがシュテンと並べてもなー。
☆新感線は,女・年寄りに占拠されている劇場を,男・子どもが奪還するところに意義あると信じております。同じ夢を見ることが出来るとしたら素晴らしいではありませんか。せやから,なんでシェイクスピアやねん,男の子引くやンと言わせていただいております。
オリジナルがいいですね。犬顔も楽しみです。
投稿: とみ | 2007年2月21日 (水) 00時24分
とみさま
感涙もののエントリをありがとうございます。
よくもこれだけすべての条件がピタリとハマったなと思える舞台でしたね。
私の中ではライと染五郎さんが一体化してしまって、どちらがどちらやら、どちらを好きなのやらわからなくなってきました。多分「ライを演じている染五郎さん」のことがたまらなく好きなのだと思います。
1回目はプログラム、2回目はCD、と観るたびにグッズを買い足しているのですが、次回は私も「戯曲買うしー」
投稿: スキップ | 2007年2月20日 (火) 23時46分
とみさま、
いのうえ&中島コンビは、永遠です。
染ちゃんも、サダちゃんも、ふるちんも、聖子ちゃんも、粟ボンも、小須ちゃんも、田山さんも、秋山さんも、真木さんも、河野くんも、みんな、みーんなサイコウだぜぃー!!
>これが☆新感線だ。文句あっか!
ありませ~ん!
投稿: ハヌル | 2007年2月20日 (火) 23時13分