おおさか元気文楽・生写朝顔話は笑い薬から大井川まで
生写朝顔話の通し上演の際でも,笑い薬の段が必ずかかるとは限らない。
笑い薬がほんまにあるとも思えまへんが,そこは話。まことしやかな嘘ゆうのがおもしろいでんねん。
蓑助さんの祐仙に語りは住大夫,文雀さんの朝顔という極上の贅沢を味わえた。
生写朝顔話
笑い薬の段
中 咲甫大夫/清馗
奥 住大夫/錦糸
宿屋の段
切 嶋大夫/清介/琴:清丈
大井川の段
呂勢大夫/喜一朗
下女お鍋:簑一郎/下女小よし:玉佳/手代松兵衛:勘市
戎屋徳右衛門:玉志/岩代多喜太:玉輝
萩の祐仙:簑助
駒沢次郎左衛門:玉女
朝顔:文雀
![]() 文楽 |
笑い薬の段
蓑助さんが遣う祐仙は,しどころの多いお役で,一挙手一頭足に注目を集める。うきうきしながらしびれ薬を仕込む仕草,大仰なお手前,予め解毒剤を飲んでおくくだりでもしっかり笑わせていただけるが,所作は超絶技巧である。左遣いさん,足遣いさんも素晴らしい。
さて,いよいよ住大夫さんの笑い!止まらない笑いに苦しみながら笑われるであるから,さぞお苦しかろうと察せられるが,ノンストップだ。
無表情の人形遣いさんたちだが,ただ一人笑っているのが,笑い薬にすり替えしてやったりの戎屋徳右衛門。堪えながら肩で笑っておられるのがお茶目。
宿屋の段
これでもかと泣かせるように作劇してあるすれ違いもんの最高においしい場面である。嶋大夫さんのレチタティーボとしらなんだアリアとの対比が凄い。文雀さんの朝顔は痛々しくも誇り高く,玉女さんの駒沢次郎左衛門はどこまでもオトコマエである。涙の堰の決壊前にハンカチの用意だ。か細く消え入りそうだった朝顔の渾身の力が煌く。いかいでか〜。
大井川の段
高音域が冴える呂勢大夫さんと絶叫の喜一朗さんで潔く泣こう。「天道様,エヽ聞こえませぬ/\,聞こえませぬわいなあ。」もうあかん。天を仰ぎ地にまろび…。演劇なら一人のところを文楽では5人の男の芸がほとばしる。こら〜病み付きになるのあたりまえや〜。
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コメント
>おりんさま
繰り返し上演される人気演目もまだ一当たり拝見できていませんが,あせらずに見続けたいと思います。
笑い薬の段,最高でしたね。
投稿: とみ | 2007年2月11日 (日) 00時42分
行く前にストーリーをチェックして「んなあほなっ」って突っ込む演目の方が実際に見てみると泣かされてしまったりするので、本当に文楽って不思議です。
投稿: おりん | 2007年2月11日 (日) 00時13分
>DancingDollさま
ありえねえ薬,朝顔の目があくのも薬の効果でした。合掌。
トリスタンとイゾルテ系愛の媚薬のお話好きですねえ。ワーグナーと文楽,感情が爆発的で熱いという共通点あります。
投稿: とみ | 2007年2月 9日 (金) 21時08分
文楽って「ありえないでしょ」っていう薬がよく出てきますよね。2月公演の「摂州合邦辻」でも「妹背山」でも女性が犠牲になって妙なものを作りますよね?「ほんまに効くんかい」って思ってしまうと冷めるので(笑)あまり考えないようにはしていますが。
投稿: DancingDoll | 2007年2月 9日 (金) 16時05分
>まこさま
書き殴りのエントリにコメントありがとうございます。
笑う亭主と笑わない玉志さん,真面目なお顔の玉女さんと駒沢がまたおかしい。
文楽は本がええです。
歳行ってから文楽のような贅沢な遊び覚えるといけませんねえ。国立文楽劇場のこけら落としに,文楽行かんと平幹さんとジュサブロウさんの天守物語見に行った非大阪市民でした。
まずは,5年かけて人気演目一回り見たいです。
投稿: とみ | 2007年2月 9日 (金) 00時11分
徳右衛門@玉志さんが、ほんとおかしかったですね。お人形もすっごく笑ってたし、おかしくておかしくてたまりませんでした。
投稿: まこ | 2007年2月 8日 (木) 22時05分