坂東玉三郎丈が国立小劇場で新作歌舞伎を演出・出演
国立劇場の公式に発表になっている。
脚本を公募,演出及び出演に玉三郎丈という志の高い企画のようだ。丈が選ばれた脚本なので,精神性が優れているのは確実。静謐な演出を期待したい。
国立劇場小劇場3月歌舞伎公演
初瀬/豊寿丸 蓮華糸恋曼荼羅(はちすのいと こいのまんだら)
国立劇場開場40周年記念歌舞伎脚本入選作
作:森山治男作,演出:坂東玉三郎,石川耕士,美術:中嶋正留
世界は,中将姫伝説と推定される。作者の趣向はどう出るのか。
中将姫は,藤原南家・豊成の息女で,初瀬の長谷観音に祈願して天平19年(747年)誕生した。5歳のとき,皇室の出身の母・紫の前が他界し,父は橘氏の息女・照代の前という後妻を迎える。8歳のとき,継母は男児出産,その豊寿丸を溺愛して中将姫を亡きものにしようとする。執拗に継母は刺客を差し向け,10歳の際には,誤って豊寿丸が毒を飲み亡くなる。14歳から,山中(雲雀山)に篭もる生活を送り,16歳で霊峰二上山の山麓の當麻寺へ参り出家しする。
17歳で,称讃浄土経一千巻を写経し,阿弥陀如来の導きで蓮の茎を折った蓮糸を紡ぎ布を織り上げ,大曼陀羅を完成させ,深く仏に帰依する清浄な生涯を送った。
謡曲雲雀山(ひばりやま)は,継母に幽閉された姫を守る侍従がシテとなり,訪ねてきた父とのやり取りがあり,姫はめでたく都に返り咲くという四番目能。
折口信夫の「死者の書」は,先日,川本喜八郎氏の人形劇映画で鑑賞したばかり。14歳から仏に帰依した南家の郎女が死者と交信する情景が描かれている。
ここで,すんごい疑問。宝寿丸は2歳で実母に殺害される。姫が起こす奇跡をビジュアル化する場面が必ずあるはず。趣向が楽しみ。タイトルだけでここまで妄想を逞しくしているワタクシって…。↑画像は中将姫が匿われていたという伝説の雲雀山得生寺
12月19日(火)文楽の「ひばり山姫捨松」中将姫雪責めの段について加筆しました。
初瀬/豊寿丸 蓮華糸恋曼荼羅(はちすのいと こいのまんだら)三幕六場
序幕 藤原豊成館奥殿
第二幕 第一場 宇陀の里雲雀山山中
第二場 豊成館西の対屋
第三場 外京、都大路
第四場 元の西の対屋
第三幕 雲雀山の伏屋
出演 玉三郎,右近,笑三郎,段治郎,寿猿,春猿,猿弥,門之助他
文楽では「ひばり山姫捨松」という外題で中将姫雪責めの段が,ヒロインが白装束に剥かれ,松ノ木に縛られ,雪の中で竹刀で折檻されるという極めつけ嗜虐趣味で人気の段である。
平成15年1月の正月公演で上演されている。
中将姫:紋寿,浮舟:玉英,桐の谷:清之助,岩根御前:文吾,奴角内:幸助,奴宅内:清五郎,大弐広嗣:亀次,父豊成卿:玉幸,津駒大夫&清友,嶋大夫&清介+胡弓:清丈
見逃した魚は大きい垂涎の公演だったようだ。輝くばかりの姫と忠義な侍女二人,コミカルな奴二人,憎たらしい継母,大人物の父,小悪党の官吏と,玉三郎丈&おもだかやカンパニーにぴったりだ。
歌舞伎でも「中将姫雪責」という演目で,金閣寺の雪姫,時鳥殺しとほどポピュラーではないが,折檻ものとして役者を得れば上演されるようだ。
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コメント
>まこさま
妄想劇場へようこそ。
中将姫は初瀬の観音に祈願して授かった子なので初瀬とも称します。教養,学識,感受力,容姿に優れ,藤原南家の斉宮的な役目を担っていたようです。白雪姫型です。
プロットとして,父,実母,実母,弟,刺客,侍従,阿弥陀の化身,大津皇子などが考えられます。
折口の世界は表現媒体として,ビジュアルは面か人形でしか表現が難しいなんて適当なことを書きましたが,坂東玉三郎丈,市川猿之助丈の演出に似つかわしいと思われます。死者の書では,人形に謡のサウンドでした。義太夫でないことに違和感がありました。丈はどのような音を使われるのか期待されます。
投稿: とみ | 2006年12月17日 (日) 09時21分
すご~い。
あのHPの情報からここまでわかるなんて素晴らしい。
中将姫伝説というものがあるんですね。
いかに自分がそういう知識がないか思い知りました。
玉三郎さん、中将姫を演じるんでしょうか、継母だったりして。
うひひ。それはそれで楽しみです。
投稿: まこ | 2006年12月16日 (土) 22時52分