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2006年11月 3日 (金)

書く女・二兎社 in Otsu

11月3日(祝),滋賀県立びわ湖ホールで観劇した。
寺島さんの記事はこちら,劇評はこちら
作・演出:永井愛,美術:太田創,照明:中川隆一,音響:市来邦比古,衣装:竹原典子,舞台監督:三上司,演出助手:浅沼一彦,所作指導・都々逸:藤間藤三郎
出演:樋口夏子(一葉)・寺島しのぶ,母たき・八木昌子,妹くに・小山萌子,田辺龍子・石村実伽,伊藤夏子・粟田 麗,野々宮菊子・江口敦子,半井幸子・小澤英恵
半井桃水・筒井道隆,斉藤緑雨・向井孝成,平田禿木・中上雅巳,馬場胡蝶・杉山英之,川上眉山・細貝弘二

樋口家は元士族。父と長男が死去,次男が出奔し,夏子は母と妹と3人で針仕事をして生計を立てていた。歌塾で頭角を現した18歳の夏子は明治24年,作家として立とうと,朝日新聞記者で連載小説も執筆している半井桃水に弟子入りする。美男の桃水に淡い恋心を抱くが,心ない噂に別れを余儀なくされる。
小説は少しずつではあるが,評価を得はじめた。時代は,日清戦争に勝利し,大陸侵略へと軍国色を強めようとしている。文壇も国粋色に染まろうとするなか,一葉には進歩的な作家や編集者の友人もできる。
しかし,樋口家の生計は,小商いにも失敗し,赤貧を極める。一葉は,吉原,丸山と遊郭で働く女性たちを見つめながら,独自の視点で精力的な作家活動に邁進し,高い評価を得つつあったが,病に倒れる。

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演劇

樋口一葉日記
樋口一葉日記
posted with 簡単リンクくん at 2006.11. 3
樋口 一葉 〔著〕
岩波書店 (2002.7)
通常24時間以内に発送します。

脚本は,克明に日常を綴った樋口一葉の日記を元に,桃水と出会った19歳から最晩年の24歳までの6年間のエピソードを,赤貧と病苦との戦いや叶わなかった恋というマイナスイメージを逆手に取り,おかし味を加味しながら,一葉文学のありようの核心に迫る息もつかせぬ筆致で進める。クライマックスでは,この世に残されたわずかな時間に,桃水との語らいではなく,物語に隠された真実を暴こうとする斉藤緑雨との対決を迷わず選び取る。ミステリーの謎解きの緊迫感だ。
自己実現のために「書く女」となる一葉は,進歩的とされる時代のなかでダブルスタンダードとしてのジェンダー論に揺すぶられる。女というバイアスのかかった評価,旧態依然とした権威主義の文壇。一葉が直面する逆風は,果たして明治という時代だけかと永井氏は問いかける。自己投影を許すか切り捨てるか,受け止めるかやり過ごすかは観客の心ごころということとして…。
周囲の人々と時代の活写もヴィヴィッドに展開する。後で大泣きさせるための笑わせる台詞の布石も見事だ。

一葉役の寺島さんは,近視で卑下癖のある18歳の文学少女から,命を懸けた文学論を評論家と戦わす鬼気迫る24歳の作家に変貌を遂げる。軽妙さと壮絶さの絶妙のさじ加減が間違いなく大女優であることを示す。音羽屋!
片恋の相手桃水役の筒井さんは,自然体でほのぼのとしたキャラで寺島さんとの対比をくっきりと浮かび上がらせる好演。白刃のような台詞の応酬は緑水に譲り,切ないつぶやきが用意されていた。
母たきの八木さん,妹くにの小山さんと寺島さんの結束の固さも胸に迫り,全ての役者さんが一葉との関わりをきっちりと演じられ爽やかに感動できる。
補助席も出した満席の観客は,終演後総立ちのスタンディングオベーション。

アフタートークは,永井愛氏と一葉研究にも一家言を成す文学博士西川祐子氏との対談が用意されていた。
折りしも11月3日は「十三夜」。寄り添えなかった人生を語り合うゆかしい人には会えなくとも,琵琶湖に写る十三夜の月は冴え冴えと美しかった。

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コメント

>悠さま
重ね重ねお世話になります。琵琶湖塾もいつもと変わった趣向だったのですね。
多作は大歓迎です。プロデューサーさん,制作費はふんだんに,準備期間はたっぷりお願いしたいです。
でも,審判のような何にも無しの一人芝居もいいです。

投稿: とみ | 2006年11月 9日 (木) 22時44分

>近鉄劇場お亀が初寺島さんです。その後,世代が逆行して,平幹丈&御母堂様の近松心中
見てました、家政婦は見たの俳優さんがお亀をされてたのも、初寺島さんも。
御母堂の舞台、元禄港歌ですよね?、平さん、能を舞われてました(^^ゞ

投稿: 悠 | 2006年11月 9日 (木) 21時06分

>るるるさま
コメントありがとうございます。
2000年秋のグリークス,もうグリークスをご存じない世代が藤原竜也さんや蜷川幸雄さんのファンとして劇場に来られているかと思うと,喜ばしくなります。
ワタクシは1995年近松心中物語,近鉄劇場お亀が初寺島さんです。その後,世代が逆行して,平幹丈&御母堂様の近松心中もありました。また,音羽屋さんは出られてませんが,1994年にごり江・近鉄劇場の装置,衣装,照明,脚本,浅丘さん&三田さんの印象が鮮烈でしたのでつい書いてしまいました。
おりき!寺島さんで再演して欲しいですね。
この週末が愛知県のようですがご都合がつかないとは残念ですね。一葉忌の11月23日は山口県!気になります。
応援続けます。

投稿: とみ | 2006年11月 9日 (木) 01時16分

いいなあ。
ついコメントしてしまいます。
観たいー行きたいー。
今週末は名古屋辺りで数公演あるのですが、どうしても拝見できないのです。めちゃくちゃ羨ましいです。m(><)m
寺島さんは天才です。
10数年前に、蜷川さんのかの「グリークス」で菊之助さまとの近親相姦の芝居を観てぞくぞくしました。まだまだ無名だったけれど、いつか階段を上り詰める方だと思いました。
最近、たくさんよい仕事をされていて観客としては嬉しいですね♪♪

投稿: るるる | 2006年11月 8日 (水) 22時56分

>スキップさま
コメントありがとうございます。永井さんのいつものウェルメイドなコメディではなく,一葉の伝記でした。
寺島しのぶさんの固定客としてははずせません。蜷川さんの「にごり江」を寺島さん主演で見たくなりました。
気がつくと昨日今日と,音羽屋関連の記事ばかりになっています。

投稿: とみ | 2006年11月 4日 (土) 22時58分

とみさま
樋口一葉の生き方もさることながら、やはり寺島しのぶさんの演技を観たかった(涙)!とみさんの記事を読ませていただいて、琵琶湖のブラックバスではないけれど、逃した魚の大きさを改めて感じ入っております。後で舞台中継されたり再演されたりということもありますが、やはり舞台はナマのもので二度と同じものを観ることはできませんものね。

ところで、音羽屋といえば、「京鹿子娘二人道成寺」がシネマ歌舞伎として、来年1月13日から2週間、東劇で公開されるそうですね。
とみさまはこの公演ご覧になったのでしたね。私は観ていないのでぜひ拝見したいところですが、関西では上映されないのかしら。

投稿: スキップ | 2006年11月 4日 (土) 21時55分

>悠さま
毎年来演頂いているようですね。固定客になります。
寺島さんは可能な限り拝見しています。音羽屋贔屓の動機となったお方ですから,何よりお声が大好きです。
コメディらしくデフォルメなさった演技もさすがです。蜷川さんが何といおうと愛ルケ見ますぅ!

投稿: とみ | 2006年11月 4日 (土) 07時46分

とみさん、観客席でご一緒してたんですね。舞台直後の感想をお話ししたかったです(^^ゞ。前の方の席にもかかわらず、しのぶさんをオペラグラスで見てまして、最初、目を細めて桃水をみるところは、一葉そっくり!って思いました。
アフタートークで、「舞台は、テイストは和。一葉が閉じ込められている、しかし、風はとおっている」というイメージで、作ってもらいました、と永井さんが話されていて、作家の想像力すごいな~と。

投稿: 悠 | 2006年11月 4日 (土) 06時06分

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永井愛作・演出 二兎社 永井愛さんのいつもの喜劇を見に行ったら、かたすかしをくっ [続きを読む]

受信: 2006年11月 4日 (土) 06時44分

» 書く女 [ようこそ劇場へ! Welcome to the Theatre!]
二兎社公演。作・演出=永井愛。美術=大田創。照明=中川隆一。 24歳の若さで亡くなった樋口一葉は「奇跡の14ヶ月」と言われた短期間で、『おおつごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』など、代表作の殆どを発表。そのエネルギーの源は恋と貧乏。「樋口一葉、恋して借りて書いた日々」の最後の5年間の熱情が描かれている。☆☆☆☆★★... [続きを読む]

受信: 2007年2月22日 (木) 20時51分

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