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2006年8月 6日 (日)

お待ち。この天守は私のものだよ。(富姫)

Photo_5 歌舞伎座七月大歌舞伎を,今年は2度観劇することが出来た。
玉三郎丈が座頭となられる公演は,可能な限り,複数回観劇できるよう万難を排している。
長期公演は,出演者間,出演者と観客との関係が変化し,楽しさが増すが,とりわけ,坂東玉三郎丈は,開幕当初と楽日近くでは,共演者のお芝居の習熟度が違うという現実を味方とし,力の均衡がどちらに振れても魅力ある物語になるよう仕組んでおられる。記憶に新しい事例は以下のとおり。d(^-^)ネ!

桜姫東文章(奔放に欲望のまま生きるお姫様→お姫様は何があってもお姫様)
伽羅先代萩(孤軍奮闘でお家を守る政岡さま→実はお味方は少なくなく,最も強い同志は千松だった。)
加賀見山旧錦絵(誇り高い尾上さま→気をつかってばかりの悲しい尾上さま)
仮名手本忠臣蔵(お家がどうなっても自分の幸福だけはがっつり掴むお軽ちゃん→運命に翻弄されながらも健気なお軽ちゃん)
アマテラス(踊るコンダクター→遍く世界を照らす太陽神)

鏡花はウサギがお好きだったようです。
画像は楽しい☆おいしい☆うれしい☆Happyのcocoさまの十五夜さん

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歌舞伎

さて,本題の天守物語であるが,鏡花の戯曲は,理不尽で醜悪な人間界と美しく気高い魔界との対立と,結界を超えようとする強い愛が主題である。
月初めから玉三郎丈は完成形。満を持してお衣装までご新調。一日の最終演目。富姫さまのご威徳に引き込まれなくとも観客は既に天守の客人である。海老蔵丈の図書さまは,涼しく獅子に似て潔く,「あの方を私にくださいまし。」と言わしめるに充分な資質を全て備えた完全な素材。ずっと,揺るがなかったことを知ってもまた感動してしまう。
そこには,うつしよとあやかしの緊張感は無く,選ばれし者が恋に落ちる必然だけが支配する玉三郎丈の世界であった。
泉鏡花の戯曲に書かれた美を凌駕したと敢えて言い切ろう。
上記の台詞の天守歌舞伎座に置き換えると符合する。

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演劇」カテゴリの記事

コメント

>かしまし娘さま
拙宅のツリーを立て直した後にご覧頂きホッとしました。
まさに丈そのものが一条の物語になってしまわれたようでございました。
草津は近いですが日程が…。

投稿: とみ | 2006年8月 8日 (火) 22時50分

とみ様、まいど!
TBありがとうございました。
「美的陶酔感と演劇的緊張感は一見親和性があるようで,実は凄まじい葛藤があること」
ガッテンっ!うう~ん、涼しい、言葉だねぇ。
どこかで息抜きを探していたかの様…な笑いに??ときてましたが、「ラヴ・レターズ」に行ったら、ブッ飛んじゃった(笑)
今回は「耽美」な雰囲気も感じられなかったので、私の頭から塵となって去って行ってしまった様です~。チクショー!♪チャンチャカチャンチャン~♪(小梅太夫)
「草津宿本陣」ですか!?(お園さんのところで見つけました)羨ましい。陽射しが強い夏本番です。気をつけて行ってらっしゃいませ。記事を楽しみしています!

投稿: かしまし娘 | 2006年8月 8日 (火) 14時54分

>みなさま
観客の時ならぬ笑いに悲しい思いをなさったと痛み入ります。少しでも和らげばと,田舎者の年寄りを代表して,年寄りの生理を客観的にお詫びのつもりでこっそり書きました。
しかし,どちらでどのような議論が巻き起こっているのかを含め,調査を尽くしたものではございませんでしたので,考察の表記を適正なものに修正のうえ,往復コメントを控えさせていただきます。
心無いことをいたしました。心よりお詫び申し上げます。
気を取り直して…。この風知草は,とみのもの!
ワタクシが書きたいエントリは,以下の2点でございます。
○泉鏡花氏と玉三郎丈が構築しようとした美の質とヴィルトウの違い(どちらがどのように凄いのか)
○美的陶酔感と演劇的緊張感は一見親和性があるようで,実は凄まじい葛藤があること

投稿: とみ | 2006年8月 7日 (月) 17時26分

こんにちは。皆様の熱い議論に刺激されて、一言だけ。
初日の「夜叉ヶ池」と楽の「天守物語」の場におりましたが、笑いの量も質も、同じものだと感じました。
聞き流すことにしていました。
「すずしい言葉だね」が理解されにくかったのは、悲しかったです。鏡花作品独特の「涼しさ」ですね。(趣旨を尊重し中略させていただきました。)
もうすぐ、千穐楽のレポが(やっと)完成するので、その時にはTBを打たせてください。

投稿: あやめ | 2006年8月 7日 (月) 15時29分

>玉三郎丈は,…どちらに振れても魅力ある物語になるよう仕組んでおられる…
舞台はまさに生き物なので初日からの共演者の仕上がり具合や観客層の変化にも合わせてご自身も変化させているのですね。
「笑うべきところでない場面での笑い」の多発については観客層の変化と多様化に原因があると思われます。(中略させていただきました。)
劇場の大きさも関係します。しかし,座頭として,興行的にも成功させなければならなく,客層も広げないといけません。観客も育てるくらいの覚悟が必要なんだと思います。
不快な笑いがあったとしても私は許容内で,聞き流して楽しみました。ただ,楽日に近くなればなるほど真剣な観客が多くなると思われますので,後半日程で観劇して正解だったと思いました。

投稿: ぴかちゅう | 2006年8月 7日 (月) 01時21分

コメント欄の「笑い」考察、大いに納得です。
なんで笑いがおきたのか、観劇後自分なりに
ずーっと考えていたのですが、
うまく言葉にできずモヤモヤしておりました…
拝読してかなりスッキリ!ありがとうございます。

投稿: ツチ子大夫 | 2006年8月 6日 (日) 23時47分

>びんちょさま
お姉さまは天守限定と致しましょう(爆)。
段治郎丈は,歌舞伎だけに留まらず,演目によって底知れない力を発揮される素晴らしい俳優さんと確信しております。私も贔屓ですから誉め始めたら止めどなくなりますので,また,貴宅でゆっくり盛り上がるとして…。
本題です。
玉三郎丈の富姫の完成度が高すぎるために,富姫の生前を語るキーとなる長台詞が活きないという思わぬところですんごい弊害が生じていました。固唾をのんで聞き入らなければならない謎を解く修理の台詞を整理試合にしてしまわれました。役者さんに咎はありません。
何が起こるか分からないところがお芝居。スリリングでございました。夜叉ヶ池の晃の同じ解き明かしの長台詞は無事でした。

投稿: とみ | 2006年8月 6日 (日) 23時43分

>はるきさま
なじみのアメショーは今日も寝ていましたが,一枚年老いた美しい白猫の写真撮れました。メモリー,仰ぎ見て月を~。
本題!
天守物語は仕事終わって歌舞伎座に走って見ると効果的なお芝居です。人間界と魔界の相克は,そのまま客席と座頭との緊張感に繋がります。連れて行って頂こうではありませんかという気概を持って拝見しないと礼を欠くように思われました。
千穐楽のカテコの盛り上がりをうかがうにつけ,おそらく天守だけを仕事帰りに駆け付けた方もおられたような気がしてなりません。

投稿: とみ | 2006年8月 6日 (日) 23時16分

>あやめさま
お読み頂き,また,世迷い言におつきあいいただきありがとうございます。
玉三郎丈は,鏡花に選ばれし俳優でなく,玉三郎丈が鏡花を選んでいるのです。鏡花さんが想定していた富姫の美と力を遙かに凌駕したため,別の物語になってしまいました。
それは更に魅力ある物語と思います。

投稿: とみ | 2006年8月 6日 (日) 22時59分

お姉様、こんにちは。
竹笠を日傘の代わりにして参りました。私には、あまり似合わないようでございます…。

最後の一文に「はっ!」しました。探していたジグソーパズルの1片が見つかって、パチッとはまったような。。。

どうしても物語の前半部分に神経を集中して、後半部分はさらりと観てしまったことに反省しきりです。贔屓目が強すぎるのも考えものですね…。

投稿: びんちょ♪ | 2006年8月 6日 (日) 18時49分

とみさん、こんにちは。
「笑い」の原因、きっとそうだと思います。実は8日、私もまさに「緊張感に耐えられなくなって」笑っちゃった時があったんです。
その後激しく後悔しました。誇り高い富姫様がどんな思いでこの無防備な言葉を口にしたのか。そのことを思いやらなければならないのに。
とみさんのように玉様の「戦い」を全身全霊を以って受け止めておられる方がいらっしゃること、本当に有難いことと思います。
優れた方の、妥協を許さない舞台に対しては、観客としてもそれなりの覚悟をして観劇に臨めるのが私の理想です(予習するということではなく)。澤瀉屋さんがよく仰る「舞台は、役者と観客との気のやりとり」にも通じますでしょうか?

投稿: はるき | 2006年8月 6日 (日) 12時54分

こんにちは、あやめです。

なぜだかわかりませんが、このエントリにうっとりしてしまった私です。

生で玉三郎さんの舞台を観るのは(少なくともそれと意識して)初めて。それでも、あそこまで客席を世界に引き込む計算しつくされた舞台を作る方だなんて。
なぜ、人々の話題に上る方なのか、今の今になって納得しました。うわさを聞いているだけではわかりませんよね。

そんな意味で、おとみさんの最後の一文には、大きく首を縦に振りたいと思います。

投稿: あやめ | 2006年8月 6日 (日) 09時46分

こっそり,読みにくいところに書きますが…。
みなさまが悲しく思っておられる観客の笑いについて,私なりの解説です。
「すずしい言葉だね」
「帰したくなくなった」
夫人が本心を吐露する渾身の台詞です。
笑っておられるのは比較的中高年齢層と思われました。年寄りを代表してお詫び申し上げます。
種類の似ている笑いに思い当たりました。
・英語のスピーチの最中に日本語が混ざり聞き取れたとき。
・下座音楽になじみのあるJポップが挿入されたとき。
・大夫さんのうなる義太夫が道頓堀行進曲になったとき
鏡花も古典に近いです。長台詞で,外国語を聴いているに等しい状態のとき,分かる言葉があったので反応した。緊張感に耐えられなくなって笑う。
こんなところと思われます。
これは生理という現実。是非もございません。
玉三郎丈は全霊を傾けて戦っておられました。
思わぬ伏兵でした。

投稿: とみ | 2006年8月 6日 (日) 08時12分

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