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2006年7月14日 (金)

その,顔のお綺麗さ,気高さ,美しさ,目の清しさ,眉の勇ましさ(美女)

18 毎日この台詞を唱えてはため息をつく。ほとんど魂はクラゲ,脳はウニになってしまった。
海神別荘

大正3年12月「中央公論」初出,演出:戌井市郎・坂東玉三郎,美術:天野喜孝,装置:中島正留,照明:池田智哉,ハープ演奏:朝川朋之(天野氏の公式ページに,衣装や装置等デザイン画が搭載されている。必見。)

美女:坂東玉三郎,公子:市川海老蔵,女房:市川笑三郎,沖の僧都:市川猿弥,博士:市川門之助

海底深くにある琅扞殿では,若く美しい公子(海老蔵)が新妻として陸から輿入れする美女(玉三郎)を待っている。美女は,父親の貧しい漁師が,海の幸と引き替えに小舟に乗せて沈めるという契約により差し出された娘だった。
恐れながらも海底に着いた美女は,贅を尽くした宮殿の女主として迎えられる嬉しさと虚栄心を抑えきれず,陸の父親に一目生きていることを知らせたいと公子に許しを請う。
「人間の目には蛇身としか見えない。」と止める公子に我が儘を通して陸に上がるが,大蛇として追われ,海底に逃げ帰る。
公子の逆鱗に触れた美女が公子の手により死を望んだ刹那,公子の真の心に触れ,莞爾と微笑む。

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歌舞伎

海神別荘は,強く美しい心身を持ち,海底に君臨するのが若い貴公子という設定で,天主物語と性別が逆転している。この戯曲は公子役がいない限り上演できなく,まさに市川海老蔵丈のためにあるような企画である。
物語はファンタジー。美術に天野喜孝氏,ハープに朝川朋之氏を迎え,視覚,聴覚とも夢の世界に誘って頂ける。公子はギリシャ神話のポセイドン或いはペルセウス,美女はアンドロメダの構図に見える。
美女はたやすくむしり取られる花のようにどこまでもたおやかで,公子は銀鱗の鎧に飾られ勇ましい。しかし,物語は,公子と僧都,公子と博士との人間界の汚濁を批判した独自の世界観を語り合う台詞により進められる。
完成度が他作品より低いとはいえ,鏡花の台詞に酔うのも,海老蔵丈の美しさに打たれるのも,それは観客の心ごころ,勝手気儘。玉三郎丈の罠に快く絡め取られよう。

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コメント

>美術に天野喜孝氏.....とみ様のリンクでやっとFFの意味がわかった私、「恥じ入ります」。ファイナルファンタジーシリーズの方なのですね、それに竜の子プロにいた方だとのこと、ああ懐かしい『科学忍者隊ガッチャマン』のイメージを髣髴とさせる画像がありました。
二回目の歌舞伎座は29日でらっしゃいましたね。私は30日でちょっとすれ違い。文楽のお軽ちゃんの赤いチラシの余分があるんですけどまたの機会まで持っておきますね(^O^)/

投稿: ぴかちゅう | 2006年7月28日 (金) 01時40分

>ぴかちゅうさま
この世の美を集めたような玉様の世界。美は力なりでございます。あなたの美しさに免じて許す。これも聞くのは玉様,のたまうのは海老様にしか許してはいけない台詞です。ドタッ。
難解な逆説がとうとうと並びますが,今度こそしっかり聞いて参ります。

投稿: とみ | 2006年7月27日 (木) 19時37分

23日に昼の部を観た感想をTBさせていただきますm(_ _)m
春猿、段治郎、海老蔵の成長ぶりに玉三郎丈の育成の成果とみて「海神別荘」のカーテンコールで目頭が熱くなってしまいました。
そして私、鏡花の耽美的な恋愛至上主義の世界に浸るのは好きみたいだと自覚しました。癒されます。30日はいよいよ夜の部、楽しみが増してます(^O^)/

投稿: ぴかちゅう | 2006年7月27日 (木) 03時06分

>管理人Aさま
「その顔のお綺麗さ…」に完全に毒されています。この台詞の注文通りのご尊顔はなかなか見られるものではありません。

投稿: とみ | 2006年7月18日 (火) 23時39分

とみ様、おはようございます。
忙しくてご無沙汰してました。
私も昨日、玉様、海老様に絡めとられて来ました。
日本語が不自由な私ですが、鏡花は大好きな作家です。
その大好きな鏡花世界が、見事に舞台化されていて、
夢のような時間を過ごせました。

夜の部も楽しみです。

投稿: 管理人A | 2006年7月18日 (火) 05時21分

>かいちょさま
再読までまだ及んでません。金沢は今度はテーマを鏡花に絞って行ってみたいですね。
まだ,書けていない夜の部。ほんの少し,勉強しながらまとめます。

投稿: とみ | 2006年7月16日 (日) 01時20分

>はるきさま
ワタクシは近江の者ですから,ウニやクラゲではなく,フナ,ドジョウ或いはタニシ?妖怪に水棲動物に変えられてしまうというストーリーは共通のようですね。
成分解析の類。また探しておきます。

投稿: とみ | 2006年7月16日 (日) 00時55分

とみさま
>玉三郎丈の罠に快く絡め取られよう。
はいっ。
人間のおろかさを描いていても、農家や漁民のくらしを気遣う言葉のこまやかさ。鏡花を再読しているところです。

投稿: かいちょ | 2006年7月15日 (土) 23時59分

とみさん、こんばんは。「鏡花占い」でお三重になったはるきです。
昨夜今日と拝見したので、TBさせて戴きました。私も、水の生物に何もかも捧げてきたような気がします…。

投稿: はるき | 2006年7月15日 (土) 23時46分

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