メタル・マクベスに酔いつぶれた昨日
昨日は,☆新感線に酔いつぶれてしまった。不覚。改めて…。
2日(日)大阪厚生年金会館大ホールで「メタル・マクベス」を観劇した。
概要は以下のとおり。
原作:W・シェイクスピア(松岡和子翻訳版「マクベス」より)
脚色:宮藤官九郎
演出:いのうえひでのり
キャスト:ランダム・スター・内野聖陽,レディ・ランダムスター・松たか子,レスポールJr.・森山未來,グレコ・北村有起哉,エクスプローラー・橋本じゅん,レディグレコ・高田聖子,パール王・粟根まこと,レスポール王・上條恒彦
右近健一,逆木圭一郎,河野まさと,村木よし子,インディ高橋,山本カナコ,礒野慎吾,吉田メタル,中谷さとみ,保坂エマ,皆川猿時,冠徹弥(ヴォーカル),村木仁,川原正嗣,前田悟他
演奏:Metal Macbeth Group
2206年,最終兵器の多用により世界は荒廃し,果てしない戦が続いていた。勇将ランダム・スターの働きにより,レスポールの勝利は確実となった。帰路を急ぐランダム・スターと朋友エクスプローラーは,泉のそばで,1980年代のトレーナーを着用し,カレーを煮る醜い三老婆に出会う。老婆がくれた時代物の記憶メディア(CD)は,1980年代に音楽界の覇権を狙った野心的なヘビメタグループ「メタル・マクベス」のアルバムであった。ランダム・スターはグループのリーダー・マクベス内野と自身の符合に驚愕し,王権を簒奪せよとの啓示と受け止める。
沙翁マクベスの世界に,幻影の1980年代と現実の2200年代を入れ子のように綯い混ぜた趣向を凝らし,RPG的プロットと少年向けノベルスや劇画のテイストをふりかけ,ヘビメタ音楽劇仕立てで,演出はライブの技術を駆使し,娯楽の集大成として分厚いエンタテイメントに仕上がっている。
シェイクスピア劇フリーク,クドカン好き,☆新感線好き,ロック好き,各俳優さんのそれぞれのご贔屓,どこから切ってもおいしく満足感,お得感一杯。
![]() 演劇 |
誉めだしたらキリがない。小ネタも緻密に積み上げられている。松岡和子氏も絶賛とか。 ワタクシ的脚本のツボは,CDメタル・マクベスの収録曲の歌詞。本筋に関係ある素晴らしいものと,想像を絶するおバカなもの。そして,最終収録曲がインスツルメントで歌詞が無いというところ。CD欲しい!
上記のテイストはあくまでもノベルスやモニターの中で遊ぶ仮想現実。それを新感線☆RSという生身の人間が目の当たりに見せてくれるというのだから堪えられない!
どれほど高い技術と鍛錬が必要なことか。全員半端な実力ではない。
主演の内野さんは思いっきり楽しんでおられるが,マクベスらしく芯を取り,物語がマクベスとして踏みとどまる象徴。松たか子さんはどんな破天荒なシチュエーションの中にあってもピュアに輝く。気になるマルカム役森山未来さんは,すらりとした容姿にキレの良いダンスと愛嬌のある歌。ダンカン王の上條恒彦さんは声量と存在感できっちりとお役目を果たしておられる。マクダフ役の北村有起哉さんは,一つ一つの決めのポーズが絵になるナイスなヤツ。ラストシーンは美しさに泣けた。
ご当地ネタ,時事ネタ程度でいちいち喜んではいられない。(これらはRSCや歌舞伎座に任せよう。)あんまり喜びすぎて身体に良くない!泥酔した!
オールスタンディングにアンコール2曲。ナンバーはもちろん「リンスはお湯に溶かして使え」&「ダイエースプレー買うてこいや」やで!
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コメント
>とみ
そうおっしゃらず…。
若い方向けのノベルスの情報量の多さ複雑な組み立てには感服することが多いです。何回も死んだり生き返ったり輪廻転生や変身,多重人格するところが凄いんですが,楽しめるよう頭脳を鍛錬したいと思っております。
投稿: とみ | 2006年7月10日 (月) 12時23分
クリエータめざしてないですっ(笑)
高い水準で、さらにどんどん高いところを目指していかれる方々には憧れます。
投稿: 火夜(熊つかい座) | 2006年7月 9日 (日) 11時56分
>火夜さま
あらゆる年齢,性別を問わず総合的な高い水準の娯楽と思われます。大きな仕事をして頂きたいです。
火夜さまもクリエータ目指してがんばってくださいね。
投稿: とみ | 2006年7月 8日 (土) 09時09分
むちゃくちゃ面白そうですね!
☆新感線さんは気になり続けているのに観たことがないのです。
こだわりのある舞台はいいですねっ!
投稿: 火夜(熊つかい座) | 2006年7月 8日 (土) 06時32分
>ぴかちゅうさま
ロックにも造詣深いぴかちゅうさまのご感想にナットクしました。
ロックコンサート行ったことない人ほど,うなってましたね。電光掲示板の使い方は,ライブで多用してるし,字幕もバラエティ番組や幼児向け歌番やと,同行者に教えときました。でも,これらは高価でハイクオリティかつ最新鋭の技術。使いこなしたおもちゃのように扱うところが,このクリエーターたちの愛おしいところ。有刺鉄線や裸電球,ネットフェンスみたいなチープな材料!もう見たくない!
で,ヴェルディのマクベス初演並みのインパクトあったのではないかと郷土から誉めております。
投稿: とみ | 2006年7月 5日 (水) 13時08分
大阪公演の熱い感想のTBを有難うございました。東京公演初日の感想をTB返しさせていただきましたm(_ _)m
一回しか観ておりませんので、ゲキ×シネとかDVDシアターを待つことにします。東京でやったら絶対行きますよ~ん。
劇団☆新感線をリピートするのに耐えられるオサイフが欲しいです(T-T)
『』
投稿: ぴかちゅう | 2006年7月 5日 (水) 02時08分
>麗さま
ようこそ拙宅に。
丁寧に整理された劇評拝見しました。主演に対する感じ方が似ていたので思わず笑ってしまいました。やはり内野さんでなくてはいけません。
松岡訳の初演のマクベスは松本幸四郎丈。もし普通のプロデューサなら,ここは市川染五郎丈だったかもしれないのに内野さんというのがまずマル。
3人の魔女の一人が松たか子さんというのも,意図的なキャスティング。魔女の一人がレディ・マクベスという解釈をする演出もあるようですが,ワタクシ的には,だだ美形で笑いがとれるという以上の意味を持たせて欲しくないのでそう思うことにします。
>mitiko
はじめまして。近場におわしますようで…。
千穐楽のおせんべい。わー,わー,まだいただいたことありません。新感線には珍しいアドリブというのも気になります。客観的で真摯なご感想!
これからもよろしくお願いいたします。
>ハヌルさま
歌舞伎役者さんを代々贔屓するというのはありますが,☆新感線さんはええもんつくれへんようになったらあっさり見捨てたげるのが功徳という気がしないでもありません(爆)。
といいながら,見てるンですが…。
投稿: とみ | 2006年7月 5日 (水) 01時07分
とみさま、TBありがとうございます。
こちらもTBさせていただきました!
もう、多くは語りますまい。
劇団☆新感線に一生ついて行く!
それだけです。
投稿: ハヌル | 2006年7月 5日 (水) 00時42分
はじめましておとみさま。
実は以前からちょくちょくお邪魔してたのですが、
メタルマクベスの余韻著しくトラバさせていただきました。
歌舞伎関係では勉強させてもらってます;
満足感いっぱいな劇ということに賛同!
とても重くも楽しいげきだったなと。
本当にお邪魔いたしました。ペットは初心者なので
使いこなせないのですが、見かけたら宜しくお願い致します。
投稿: mitiko | 2006年7月 4日 (火) 23時45分
>SCIPIOさま
いつもCaesar(獅子丸)がお邪魔しています。ゆりうすさんにも遊びに来て頂ける環境を整備しました。
>度肝を抜く演出って,なかなかお目にかからない
さすが,シェイクスピアは世界演劇。様々な表現媒体が大辞典に色々掲載されていました。そういう意味でメタル・マクベスは,表現と演出手法をきっちりタイトルで表現しておられますから正統派です。
芝居に比べ,ライブ鑑賞の本数が少ないことを反省しています。これではきちんとしたことを書けないことに気が付きました。行くぞ~。
投稿: とみ | 2006年7月 4日 (火) 22時55分
おとみさま
初めまして。麗といいます。
当blogへのTB有難うございました。
TB返しをさせて頂いたのですが、、、ごめんなさい!
なぜか4つも送られてしまいました。
余分なものは削除して下さい。
大阪公演、盛り上がってるようですね。
アンコールで2曲披露とは、羨ましい!
これからも遊びに寄らせて頂きますね。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: 麗 | 2006年7月 4日 (火) 22時54分
>かしまし娘さま
松本,東京でも大評判だったようですが,リピーターが大阪まで来られますから,凄い盛り上がりです。
ですが,最も楽しんだのは作り手側のような気がします。作り手が楽しめば観客はさらに楽しい。どこまでも走り続けて頂きたいです。
投稿: とみ | 2006年7月 4日 (火) 22時29分
>スキップさま
深夜までおつきあいいただきありがとうございます。
さて,松岡和子さんの渾身の劇訳。こだわりの「明けない夜は長い」,「一卵性夫婦」,「俺の心はサソリで一杯だ」などをデフォルメした松岡マクベスでした。どれほどご満足だったことでしょう。
投稿: とみ | 2006年7月 4日 (火) 22時21分
おとみ様
大変楽しまれた様ですね。
やはり客を楽しませ度肝を抜くための演出って、なかなかお目にかからないですよね。
やっつけ仕事の演出なのか、力量不足なのか。
たまにスゴイのに出会えるから観劇はやめられないんですけどね。
投稿: SCIPIO | 2006年7月 4日 (火) 17時52分
とみ様、まいど!
色々な人の記事を読ませてもらっています。
弾け過ぎです大阪!
も~!めっちゃ楽しそうな大阪~!!
今更ながらの東京版ですが、TBさせてもらいました。
投稿: かしまし娘 | 2006年7月 4日 (火) 13時42分
とみさま
今トラックバックいただきました。
まだ起きていらっしゃるのね。
いけませんわ。お肌にも健康にも(お互いに)。
今週はまだ始まったばかり。明けない夜は長~いですが、
今週もまだまだ長ーーいのですもの。
投稿: スキップ | 2006年7月 4日 (火) 01時54分
>スキップさま
少年の頭の中に詰まっているものを見せて頂いた気がしました。クドウ少年は少年の代表。そして男と女では溝のある娯楽のカテゴリーを,いのうえさんは力業で融合されたのではないでしょうか。
シェイクスピアを半端なメタシアターの演出で,客を喜ばせた気になっている演出家は恥よと言いたい!ちょっと時代と衣装の設定を変えただけの演出家はうなだれよ。
誉めまくりながら怒ってます。アイドルのライブでは高度な演出がされています。演劇の演出はチープ過ぎる!新感線だけでしか見られないとは情けない!
総花,博愛のおとみが久々にシャウトしました。
投稿: とみ | 2006年7月 4日 (火) 00時57分
とみさま
> 誉めだしたらキリがない。
全く同感です。あれもこれもと今思い出してもキリがありません。
松岡和子さん絶賛といえば、プログラムに寄せられたコメントの「明けない夜は長い」のくだりがとても印象的でした。一語に神経を研ぎ澄ませる翻訳者のこだわり、その意を汲んでさらに拡がる歌詞を作る脚本家、その歌詞にぴったりのカッコイイ音楽をつける作曲家、そしてその歌を客席で片膝立てて颯爽と唄ってくれた森山未來!・・・舞台ってほんとに総合芸術ですね。
投稿: スキップ | 2006年7月 4日 (火) 00時04分