« 劇団四季・ミュージカル南十字星 | トップページ | クラッシュ »

2006年4月 3日 (月)

国立文楽劇場・菅原伝授手習鑑

4月2日(日),国立文楽劇場四月公演夜の部・菅原伝授手習鑑を鑑賞。
今月は六世鶴沢鶴澤燕三襲名披露として,昼の部にひらかな盛衰記がかかる。咲大夫が語り,新燕三が弾くという大一番。残念ながら昼の部は先のお楽しみということで,三月大歌舞伎の仁左衛門丈の菅丞相の余韻を引きながら,夜の部菅原伝授手習鑑の名場面集を堪能した。
菅原伝授手習鑑は,親子の別れが主題である。道明寺では菅丞相と養女苅谷姫との哀切な別れがあったが,菅家に仕える白太夫一家に,忠義が尊い犠牲を強いることになる。
Nec_0099_1 車曳の段
人形,梅王丸・吉田玉輝,桜丸・吉田蓑助,松王丸・吉田玉女。時平・竹本津国大夫,三味線・鶴澤寛治。
歌舞伎から本行に取り入れられた華やかな荒事の場面。ここで時平は七笑をする。憂いを帯びた桜丸の美しいこと。女形のときよりたおやかな遣いをされていた。
Nec_0074 茶筅酒の段・喧嘩の段・桜丸切腹の段
親白太夫・吉田和生,春・吉田玉英,千代・吉田文雀,八重・桐竹紋寿。切,竹本住大夫,野澤錦糸
茶筅酒の段,喧嘩の段は大悲劇・桜丸切腹の段の前の悲喜交々の場面で美しい嫁たちの人形にほっこり。さりとて,もう,桜丸の死は待ったなし。住大夫が語る白大夫の慟哭が圧巻。菅丞相失脚の発端となった事件の張本人であるので,下僕とはいえ切腹は不可避である。それでも親は何とか神仏にすがる。泣く嫁を窘めながら最もほえているのは白大夫である。住大夫の呼吸に合わせて大泣きすれば,ああしんどとなる。息をつかせない感動とは住大夫のためにしか使えない言葉か。
文楽人形の死は本当の「なきがら」なのが胸にせまる。
Nec_0087_1 寺入りの段・寺子屋の段
武部源藏・吉田文司,戸波・桐竹紋豊。切,竹本綱大夫,鶴澤清二郎,竹本嶋大夫,鶴澤清介。
寺子屋は上演回数も多い人気演目である。寺入りの楽しさも文楽だとひとしおである。切りは語りは綱大夫と嶋大夫という豪華版。千代を使うは吉田文雀の至芸。松王丸の玉女は立派で風格があるが抑制の効いた遣い。贅沢の極みである。息詰まる緊迫感とその後の真実の吐露。ようでけた本といまさらながら大感動のうちに幕。

これで,プロローグとエピローグを除く主要なトリロジーを歌舞伎と文楽最高峰のリレーで見ることができた。日本に生まれて良かった。

|

« 劇団四季・ミュージカル南十字星 | トップページ | クラッシュ »

文楽」カテゴリの記事

コメント

>いやさ,お富,久しぶりだなあ~。
わっちのようなぬるいブログはお見限りかえ。
と思っておりましたところ,光栄の至りでございます。
命がけで褒めるという緊迫感と,進退窮まったら忘れる鷹揚さが売りです。もしよろしかったら,夜の部も15日に拝見しましたのでお目汚しにご高覧くださいませ。

投稿: とみ | 2006年4月25日 (火) 12時44分

こんばんは。

ここのところ忙しかったので、すっかりご返事が遅れました。ごめんなんさい。

ホントは歌舞伎の「伊勢音頭」も観たかったんだけど、文楽だけの大阪行きでした。でも、充実していてよかったなあ~。

特に、菅原は住大夫&蓑助の「桜丸切腹」がよかったし、個人的には器用で歌う感じの嶋大夫の「寺子屋」もよかったなあ~。(訥々とした綱大夫も好きだけど。)

五月は東京で「鮨屋」を住大夫が語りますが、これも楽しみにしています!!

ところで、ちょくちょく覗かせてもらってますので、今後もとみさん、よろしくです!!

投稿: 切られお富 | 2006年4月25日 (火) 01時22分

>ねもさま
上方へようこそ。
京都の方が長くなっていますが,太棹のべーんという音は通奏低音のように大阪人の心底に流れているような気がします。
ワタクシメは,お席が良くなければ眠ってしまいますね。それに,大緊張が続いた後や,段取りだけで進む場面もいけません。
さらに,歌舞伎の松羽目ものはいけませぬ。
眠ってしまってもそれも良し。気長に楽しみたいものです。

投稿: とみ | 2006年4月 8日 (土) 22時21分

(もう一人の)お富さんのコメント見てから来ました。
最近は文楽さぼってますが、「菅原伝授手習鑑」を見て、文楽に目覚めた一人です。
それまでは寝に行ってました。。。(^^;

東京はブームなのに、大阪は閑古鳥なんて
同じ日本なのにどうして?!って思っています。
時間とお金が許せたら・・・大阪に遠征したいです。

投稿: ねも | 2006年4月 8日 (土) 13時09分

>藤十郎さま
ようこそ拙宅へ。ご覧のとおりの雑食系です。暇とお小遣いの少なさ,地の利の無さからくる情報不足は,観劇歴の長さと広角ウオッチングでカバーしています。
文楽は初心者ですが,生まれは大阪船場。鰻谷の世界が理解できますので,何とかなりそうです。お江戸の方には,婿の留守に新しい婿を取るなど想定を超えていることでしょう(爆)。
これからもよろしくお願いいたします。

投稿: とみ | 2006年4月 8日 (土) 11時00分

はじめまして。
「大入り!文楽手帖」さんから飛んできました。
いやもう、本当に泣けるだしものですね。
ああ、それなのに、あの空席の数々がもったいないです。
「逆櫓」も楽しみですね!

投稿: 藤十郎 | 2006年4月 8日 (土) 10時07分

>恵美さま
週末が楽しみですね。金比羅も行きたかった。
カローシの恐怖と戦いながらの観劇は命がけ。頑張りましょう。
>cocoさま
とてつもない最高峰のものであることは間違いございませんでした。なんせ,文楽はにわか仕込みの知識。もったいないことなので,しっかり鑑賞できる基盤を持ちたいです。
しかし,生おみ足の鑑賞はやめられそうにはないし…。

投稿: とみ | 2006年4月 5日 (水) 00時32分

こちらの国立劇場にもおいてあるチラシを見て大阪がうらやましいなぁ、と思っていたんです。とみ様のすてきなご紹介、ありがとうございます。想像が掻き立てられます。。。

投稿: coco | 2006年4月 4日 (火) 23時58分

4月は本当に、時間も資金も倍ほしい!
でも倍働きたくもなく、ガマンガマンの切ない春です。
>文楽人形の死は本当の「なきがら」
期待高まる三谷幸喜文楽も「死」やりたさの絵空事?いやいや、きっと!!

投稿: 恵美 | 2006年4月 4日 (火) 12時30分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 国立文楽劇場・菅原伝授手習鑑:

» 文楽『勧進帳』『菅原伝授手習鑑』 [「能楽の淵」管理人日記]
 少し前の話なんですが、休みの日に国立文楽劇場へ。文楽四月公演の第一部最後『勧進帳』を幕見、続けて第二部の『菅原伝授手習鑑』を見ました。 不定期な休みの仕事なので、一日だけの公演が基本の能や狂言よりは、ある一定の期間ならずーっと公演している文楽や歌舞伎の方が見に行きやすいということに気付きました(笑) …とはいえ私、文楽や歌舞伎もかなり好きになってきましたが、能や狂言の方がもっと好きなんですよね。能楽界にも平日公演の充実を強く希望です!... [続きを読む]

受信: 2006年4月19日 (水) 23時33分

« 劇団四季・ミュージカル南十字星 | トップページ | クラッシュ »