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2006年2月11日 (土)

劇団四季・鹿鳴館

2月4日(土)劇団四季・自由劇場で,「鹿鳴館」を見た。
1956年の初演より50年。劇団四季が旗揚げ半世紀を過ぎ,満を持して三島戯曲の原典を限りないオマージュをこめて再構築する。
この日のキャストは以下のとおり(敬称略)。
影山悠敏伯爵:日下武史,同夫人朝子:野村玲子,大徳寺侯爵夫人季子:末次美紗緒,その娘顕子:濱田めぐみ,清原永之輔:広瀬明雄,その息久雄:福井晶一,飛田天骨:芝 清道,女中頭草乃:坂本里咲,宮村陸軍大将婦人則子:木村不時子,坂崎男爵夫人定子:大橋伸予
華族/写真師/給仕/職人:太田泰信,青木 朗,岡崎克哉,朝隅濯朗,川原信弘,白倉一成,石原義文,木村雅彦,森田利夫,緒方愛香(劇団昴),勅使瓦武志,鳥畑洋人(劇団昴)
華族:服部良子,岡本和子,岡本結花,藤井智子,寺西紀子,西田ゆりあ

1886年11月3日,天長節の一日の出来事。政界の首領影山伯爵家の茶室前の庭には菊花が咲き誇っていた。新橋の芸妓あがりの伯爵夫人朝子は,友人の大徳寺侯爵夫人季子から,娘顕子の恋を成就させるため,恋人の青年が行おうとしている影山の暗殺をやめるよう説得して欲しいと頼まれる。その久雄という青年こそ,朝子がひとときも忘れたことのない反政府主義者清原永之輔との間に生まれた子であった。暗殺を仕掛けているのは実は影山であるという驚くべき情報も朝子は知る。運命の糸に釣られた男女は,その夜,鹿鳴館という檜舞台に集結し,虚々実々の駆け引きのうちに,悲劇の幕が上がる。

戯曲のト書きに忠実な装置。鹿鳴館の壁紙や階段の装飾柱,シャンデリアなどまで考証された丁寧な造り。クラシカルで格調高いお衣装。全てが観客を三島戯曲の世界に誘ってくれる。それでもなお,空間を支配しているのは三島由紀夫氏が織り成す言葉である。この戯曲にあっては,主演級は勿論のこと,華族の貴婦人その一,刺客までが詩を奏でる。全ての役者に詩の朗唱者であることを強いる恐ろしい戯曲である。三島の美意識,三島の情念,三島の世界観,三島のアイロニー。全ての役者が三島の吊り人形になってしまう。感動というより凄いものを見ているという畏怖の念が先立つ。

劇団四季の精鋭は素晴らしい熱演で息もつかせない。主演の野村玲子さんの和装を拝見するのは初めてであるが,名妓の面影を残す伯爵夫人にしっかり見えて格好良い。
「よござんす。私を殺してからお上がりなさい。」声を掛けたくなる決め台詞!
いよいよ避けてきた本題に入らなければならないときがきた。久雄役の福井晶一さん。久雄役は一見どうでも良い役に見えて,自分の方に引き寄せ,個性で乗り切れないことは確かである。初演の中谷昇氏がどのように演じられたか,見たはずの演出家は,思い出してイメージを固め,早急に答えを出して欲しい。
それにつけても,良い夢を見せていただけるお芝居であった。一週間も感想を書けなかったのは,ブログをオープンして以来はじめてのこと。危機である。
NEC_0072

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コメント

>かしまし娘さま
自らの禁を断ち切って劇団四季をご覧になったのはご立派ですわ。
自由劇場世代の遺言として,我々は見届けなければなりません。はたして,次世代が継承するのかしらンと思うことがあります。
魔界からの呪詛のような三島の台詞。踊るのはいつまで…。

投稿: とみ | 2006年4月 5日 (水) 00時07分

とみ様、まいど!
TBありがとうございました。
私は「四季」カルチャーショックの連続…。
最近汐留に初めて行って「海」付近まで行きました。
あそこの雰囲気はいいですね。

投稿: かしまし娘 | 2006年4月 4日 (火) 17時08分

>マッシュさま
ようこそ。上方もんですから,鹿鳴館見物は,おのぼりさんしなくてはなりません。
しっかり情報集積されている貴宅へお邪魔させて頂きます。

投稿: とみ | 2006年2月25日 (土) 18時58分

はじめまして!
私も4日に自由劇場にいたんです。
嬉しかったのでトラバさせていただきました。

投稿: マッシュ | 2006年2月25日 (土) 07時19分

>クーミンさま
ご覧いただきありがとうございます。
毎週初めキャストチェックはもうちろんお済みかと存じます。
久雄役は田邊さんになっていましたね。拝見しないことには始まりませんので,近いうちに遠征を検討します。
はい,福井さんの感想は記録としてすぐにまとめます。ブログ開設以来,初めての試練です。

投稿: とみ | 2006年2月13日 (月) 13時01分

とみ様、こんばんは。
先日は私のブログの方にコメントいただき、ありがとうございました。
こちらのブログはすべて素晴しい文章ですね。とても勉強になります。鹿鳴館の感想、個人的には久雄の感想をもう少しお伺いしたかったです。
またお邪魔させていただきますので、よろしくお願いします。

投稿: ク~ミン | 2006年2月13日 (月) 01時13分

おとみさんは、坂崎で恐ろしい言葉などさせるため
おとみさんが、影山で良い造りとか壁紙などをイメージしなかった。


投稿: BlogPetの獅子丸 | 2006年2月11日 (土) 12時34分

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» 2/4鹿鳴館 [オレンジ娘 りんば坊]
初日以来2回目です。またしても上手側…。 着物で観劇されてる方がたくさんいて驚き。 初日から1ヶ月もたっていないのに、雰囲気が全然違いました。 まず{{{濱田さんの顕子}}}。 台詞回しがすごい変わった!優しく柔らかく。1幕で菊に触れる動きも、さらにゆっくりに。 {{{芝さんの飛田天骨}}}にも変化が。 名台詞「御意にござります御前。」が「御 意 に ご ざ り ま す、御 前。」と ||#FFFFFF'..... [続きを読む]

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