« 宝塚バウホール宙組公演・不滅の恋人たちへ | トップページ | 大阪松竹座・寿初春大歌舞伎昼の部2 »

2006年1月 7日 (土)

大阪松竹座・寿初春大歌舞伎夜の部2

大阪松竹座観劇記
夜の部は,時代物2本と春を寿ぐ舞踊という新春にふさわしい並び。

神霊矢口渡
平賀源内作の時代世話狂言。
強欲な頓兵衛(片岡弥十郎丈)は,矢口で渡しを生業としているが,賞金稼ぎの殺しで財を成していた。父に似ず,娘のお舟(片岡孝太郎丈)は心根の優しい娘。父の留守に,男が一夜の宿を求める。青年のあまりに美しさにお舟は一目で心を奪われ,宿を貸すが,それこそ落人新田義峯(板東薪車丈)のやつす姿であった。
全員初役(たぶん)。田舎娘の純情には定評のある孝太郎丈は,いじらしく危なげない立ち上がり。頓兵衛の野獣郎(納得の変換ミス)丈は姿といい演技といい歌舞伎とも思えない迫真力。薪車丈は,信二郎丈と勝負できそうな二枚目振りでこれも説得力あり。

仮名手本忠臣蔵
【落人】
片岡仁左衛門丈と板東玉三郎丈という当代一のベストカップルのお二人の素晴らしさを引き出せる手堅い演目。ワタクシ的には本日一番のラブラブ&ハッピー感。
沈んだ勘平さんと度胸の据わったおかるちゃん。仁左衛門丈はうろたえるお姿が絵になる。玉三郎丈のおかるは,袂の扱いが魔法のように心模様を物語り,切腹しようとする軟弱な勘平さんの大小を易々と巻き上げてしまう。おかるは控えめな飾りのなかにも気品溢れる美しい腰元姿。ポスターを買ってしまった。
【五段目】
猟師となった勘平は,山崎街道でかつての同志・千崎弥五郎(市川段治郎丈)と会う。段治郎丈はお元気そう。千崎の立派な姿と痩身も素敵な狩人・勘平さんと並ぶと運命の対比が際立つ。
猪さんはキュートで勢いあり(笑)。
お待ちかね斧定九郎は色悪がはまる片岡愛之助丈。おみ足は,段治郎丈より短めであるが筋肉質で眼福。
悪いこととは知りながら財布を失敬する勘平さんの弱さが仁左さまらしい。
【六段目】
玉三郎丈は,これまた美しい石持ち眉なし女房姿。別れを惜しむ場面は真に迫り息が詰まりそう。
いよいよ誤解から切腹する圧巻の仁左さまの見せ場。短慮が際立ち哀れさが増す若者の勘平と違い,大人の勘平は,不可避な運命の恋に絡め取られた悲劇となっていた。不可避な運命の恋の相手は,玉三郎丈にしか演じられない。
忠臣蔵の物語の発端となったのは,おかるちゃんの性急な思いと積極的なアプローチ。歴史の糸車を回す運命の女神はイノセント。
仁左さまの六段目は,歌舞伎的な誇張や様式をふまえながらも,恋に殉じたことを強調する肉感とは無縁で清々しく,一筋の明るさがある。
おかるちゃんの行く末にも明るさは共通する。これは,玉三郎丈なら女郎に売られても充分やっていけるという七段目を知っているからでなく,夫のためと信じて廓へ向かう現実的で前向きな生き方がきっちり表現されているからである。若いピュアな女形さんでは悲しくなってしまうのとのの違いを見た。
悲しいだけではない六段目を見るのは初めてである。落人が前にあることも明るさに寄与している。

春調娘七草
曽我五郎(市川猿弥丈),十郎に(市川段治郎丈),静御前に(市川春猿丈)が扮し,正月風俗の七草行事を題材に踊るという趣向の長唄舞踊。
お三方ともお衣装がよく写り絵面のように美しい。ホッとする幕切れで気持ちよく劇場を後にすることが出来るよう演目が組まれている。努々お見逃しなきよう勧める。

総じて,長身,美形,口跡のよいというか滑舌のさわやか,かつ,脚本に忠実に演じるな役者さんを揃えているため,演劇的である。桜姫のときもそうであったが,こんなお話だったのかと,役者の個性に幻惑されて見えなかった物語の枠組みがしっかり伝わる。
もう少し深く考察したいので,もう一度見る!

|

« 宝塚バウホール宙組公演・不滅の恋人たちへ | トップページ | 大阪松竹座・寿初春大歌舞伎昼の部2 »

歌舞伎」カテゴリの記事

コメント

>スキップさま
ワタクシは21日昼夜拝見しました。一週間職場を出るのが2時,睡眠時間3時間が続いていましたので,カローシ覚悟で出かけました。もちろん対策は取っておりましたが…。
もしかしたら,夜の部は同じものを拝見していたのかもしれません。
実は初日の印象とは全く異なっていましたので,書き直そうと思っていたところです。初日は,春を寿ぐ役者さんや仁左玉コンビに熱狂する観客の高揚感と,初役の若い役者さん方の緊張感が成せる業ではないかと思われます。
あきません。悲しくてどぼどぼに泣きました。救いも赦しも無しでした。おかるちゃんの魔力はアップしています。その分勘平さんが恋に死ぬべき男という必然が強化されていました。ちゃんとまとめなおします。
事前にお声かけて頂けましたら,プチオフ会出来ましたのに残念です。週末はどこかの劇場におりますので,お目にかかれる日もそう遠くないことでしょう。

投稿: とみ | 2006年1月22日 (日) 20時14分

とみさま

やっと「初春大歌舞伎 夜の部」を観ました。
自分の感想をアップした後でとみさまの観劇記を読ませていただいて、「うーん、なるほど」とうなり、もう1回観たくなりました。
とみさまも「もう一度見る!」とおっしゃっていましたが、もうご覧になりましたか。

投稿: スキップ | 2006年1月22日 (日) 19時51分

>cocoさま
たこやきを持ってにやついているときに素敵な仁左さまに遭遇!(爆)人生そんなもんです。にやつきはさらに増幅。大阪らしさを満喫なさって重畳でございました。
二月は上京を考えていますが,それより先はゆっくり楽しみながら机上遠征計画を考えます。また,お目にかかることができましたら光栄です。

投稿: とみ | 2006年1月 9日 (月) 21時08分

とみさま
またまた素敵な観劇記、ありがとうございます。私は根っからのミーハーでいつもぼうっとしか見ていないのだなぁと、とみさまの観劇記を拝見するたびに恥ずかしくなってしまうのです・・・
改めまして、大阪訪問の際はいろいろなお気遣い、本当にありがとうございました!いい年をして、言葉が通じない国(関西圏、とくに大阪は多少そのケがあるかな・・・)に行く訳でもないのに慣れないことは心細いです。松竹座の入場が混雑で遅くなってしまった中でお声をかけていただけた時にはとってもうれしかったです。文章から想像していた以上の素敵な方でさらに感激しました~。
帰りにすれちがった仁左様はおっきなマスクをしておられて、あの長身、おつきの方々を従えてのお姿で松竹座裏の路地からすっと出てこられたのではっと目が行ったんです。手にたこ焼き(たこ焼きの舟だけ)、それで顔がニヤついてホテルへ帰った私はかなりアヤシイヤツに見えたと思われます。
さて、来月は玉さま菊之助さんの二人道成寺もある東京歌舞伎座もあります。楽しみですね!
僭越ですが、またいつか、ゆっくりお話できる機会を楽しみにしております。

投稿: coco | 2006年1月 8日 (日) 23時46分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106008/8044299

この記事へのトラックバック一覧です: 大阪松竹座・寿初春大歌舞伎夜の部2:

» 「色にふけったばっかりに、、、」 松竹座初芝居 [パフィオ - People of About Forty Years Old -]
大阪松竹座の初春大歌舞伎を見物。 昼の部の開演時間ぎりぎりに行ったので、 獅子舞 [続きを読む]

受信: 2006年1月 9日 (月) 09時02分

» 松竹座〜仮名手本忠臣蔵〜 仁左衛門・玉三郎 [たらら〜んとしたブログ]
大阪/松竹座まで、『仮名手本忠臣蔵 落人+五・六段目』を観に行って来ました。 無理矢理、日帰り。ハードスケジュールで、大阪滞在時間と移動時間を比べたら、移動時間の 方が多 [続きを読む]

受信: 2006年1月22日 (日) 03時01分

» 壽初春大歌舞伎 [地獄ごくらくdiary]
松竹座で「壽初春大歌舞伎」夜の部を鑑賞しました。 演目は ・神霊矢口渡       ・假名手本忠臣蔵       ・春調娘七種 もちろんお目当ては、片岡仁左衛門・坂東玉三郎顔合わせの「假名手本忠臣蔵」だったのですが、意外にも(失礼!)「神霊矢口渡」もとてもよ..... [続きを読む]

受信: 2006年1月22日 (日) 19時46分

« 宝塚バウホール宙組公演・不滅の恋人たちへ | トップページ | 大阪松竹座・寿初春大歌舞伎昼の部2 »