坂田藤十郎襲名披露興行昼の部
まもなく,夜の部を観劇するので,昼の部をまとめる。
こうなったら,ブログもノルマに近い。
夕霧名残の正月
初代藤十郎丈の畢生の当たり役。長らく上演が途絶えていたものを,四代目襲名を機会に復活させた夕霧狂言のひとつ。
坂田藤十郎丈vs.中村雀右衛門丈という当代人間国宝の共演,上方役者のみをそろえた出演陣,本物の紙衣を着用など昼一番の話題作。
ワタクシ的には蜷川美花さんのスチール写真もトピック。
舞台は若くして他界した新町の夕霧太夫の四十九日の出来事。勘当の身で遊郭に出入が適わなかった伊左衛門は,既に夕霧がこの世のものではないことを知らずに扇屋にやってきた。その死を知り,嘆きのあまり意識を失った伊左衛門のもとに,慕わしい夕霧の姿が…。
遊里に通い,身を持ち崩す,救いようのないあほな男を演じさせたら,藤十郎丈に敵う者はおられますまい。雀右衛門丈の夕霧太夫はどこまでもはかなく消え入りそう。
で,突然,劇中で襲名披露の口上が始まる。上方の若い役者さんたちが,仲居姿で列座し華やか。やさしげな上村純弥丈がやはり気になる。
曽根崎心中
中村翫雀丈の徳兵衛が,迫真の演技。生玉神社境内地の場。九平次や町衆にいたぶられる場面は無念さと無力さが際立ち,心底,徳兵衛はこのような男であったかも…?という念を禁じえなかった。
命をかけてこそ,凡夫凡婦が恋の手本にまで高まるという主題が痛切である。
また,九平次を演じた中村亀鶴丈が,強そうで憎たらしくて,実は,あかんたれ。どこかにいそうな今時のワルを体現しておられ,はまり役であることを確信した。今後,亀鶴丈が九平次を演じつづけられることを期待したい。
総じて,上方歌舞伎の明日に暖かい陽が射したようであった。
下の写真は,ご祝儀を表した竹馬。松と竹の良い香りがする。
| 固定リンク
「歌舞伎」カテゴリの記事
- 松尾塾子供歌舞伎公演2014 in 国立文楽劇場A組 ああ、一巴大夫さん、この時間は一巴大夫さんが生きておられたかった時間…(2014.08.19)
- 三月花形歌舞伎 in 京都四條南座(2014.03.02)
- 坂東玉三郎特別賞舞踊公演(2014.01.13)
- 京都四條南座・顔見世興行初日・ゆるゆると幕が開きました(2013.12.03)
- 松尾塾子供歌舞伎公演2013 in 国立文楽劇場(2013.08.18)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
>花餅屋の太夫元さま
古い記事無理矢理お読み頂きスミマセンでした。ただ,よほどハラに据えかねたかとお察し申し上げお声をかけた次第です。
中村勘三郎襲名披露興行巡業の掉尾を飾る南座。そういえば,南座で中村屋さんを拝見したのは,日高川の七之助丈が最新なので,お久です。
東西の幹部俳優さんが名を連ね,この上ない豪華なものが予想されます。そういえば,噂になって久しい「贋作・桜の森の満開の下」も気になってきました。演劇フリーク(歌舞伎も好き)と顔見世常連(非歌舞伎好き)さんの摩擦も懸念されます。
投稿: とみ | 2006年5月 3日 (水) 13時11分
毎度、遅くから今晩は…。
トラックバック有り難う御座いました…。
当方も…顔見世の記事の方をトラックバックさせて頂きましたので…(汗)
顔見世は、上方の歌舞伎好きにはお祭ですが…まぁ…あははは。
今年は、勘三郎さんの襲名披露と重なりますね…はたしてどうなるやら←気が早い!
でも、いい芝居を見ることは、心にいいことですね。
投稿: 花餅屋の太夫元 | 2006年5月 3日 (水) 02時54分
おとみさん、こんばんは。龍の目です。
トラックバックありがとうございました☆
南座の襲名披露からのトラバなんて素敵で嬉しかったです。
上方の襲名といいながら、やはり舞台が歌舞伎座になると、
東京の大立者の俳優さんが共演されるので、
それはそれで素晴らしいことなのですが、
僕は橋之助丈よりも亀鶴丈の九平次が観たかったのです。
記事を拝読したら、ますます観たくなってしまいました。
持ち役になると好いですよね。
投稿: 龍の目 | 2006年1月 7日 (土) 21時33分
>スキップさま
トラバありがとうございました。
また,ご招待という僥倖もおめでたいかぎりです。
今年の顔見世は,ご祝儀や年中行事という色合いではなく,マジ演劇を見せるという気迫に満ちあふれていたように思えました。
襲名は主要劇場のあと,全国ツアーもある二年かかりの大事業。道中のご無事をお祈り致します。
さて,年始から一月にかけて,東京で話題になった舞台が大阪でも掛けられます。地獄と極楽の折り合いが難しいです。
投稿: とみ | 2005年12月25日 (日) 00時58分
とみさま お久しぶりです、スキップです。
遅ればせながら、顔見世観劇してまいりました。いつもながらあの独特の雰囲気は、心躍るものがありますね。
改めてとみさまの観劇記を読ませていただいて、中村翫雀の徳兵衛の「いたぶられる場面」の演技が素晴らしかったことを思い起こしました。「ほんまなんや」というところ、もらい泣きしましたもの。
とみさまは夜の部もご覧になって、ほんとにうらやましいです。
投稿: スキップ | 2005年12月24日 (土) 06時03分
とみ様、こんばんは。
今回の舞台を見て、藤十郎さんの伊左衛門はとても良かったです。雀右衛門さん雀右衛門さんと思いながらの観劇だったのですが、藤十郎さんの優しさがとてもよく出ていて素晴らしかったです。
雀右衛門さんは本当にとみ様のおっしゃるとおり、消え入りそうでしたね。雀右衛門さんでないと、あの雰囲気は出せないのではないかと思われます。
投稿: るみ | 2005年12月17日 (土) 21時35分
>恵美さま
これに五斗三番叟と女車引きがついて,五狂言で休憩はさみ約6時間。ほくほく感ありました。吉弥丈のご登場は,ごちそうでした。師弟とも男前であられます。
投稿: とみ | 2005年12月14日 (水) 23時26分
^^; なぁ~にも私がテレることもないのですが・・・
あ、ありがとうございますっ!(笑) m(_ _)m
「夕霧名残の正月」も「曽根崎心中」も、
大変面白く、ハマりました。 ほんとうに観に行って良かったです。
伊左衛門も、徳兵衛も九平次も、リアルです。
このリアル感が上方でしょうかね?・・でも、やつれ・・??(笑)
私は、いつもは美しく気高い女形の吉弥さんの、
おろおろ茂兵衛も、し~っかりハマりました。 ^^
上方歌舞伎に光が射してましたよね~♪
投稿: 恵美 | 2005年12月13日 (火) 20時39分