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2005年9月11日 (日)

夢の仲蔵千本桜

高麗屋の「夢の仲蔵千本桜」,大阪松竹座で9月10日夜の部を見た。
ジャンルはストレートプレイ。演じるは現役歌舞伎俳優。時代設定は江戸時代。劇中劇が歌舞伎。
バックステージもののヒットシリーズ。既に「夢の仲蔵」,「新・夢の仲蔵」及び「夢の仲蔵千本桜」と三本がリリースされ,今回,「千本桜」が関西初登場となる。
安永元年,十一月,通し狂言義経千本桜が上演中の江戸森田座の顔見世興行時に事件は起きた。
艱難辛苦を経て,森田座の看板役者にまで出世した「中村仲蔵(松本幸四郎)」であるが,名門俳優からは出自への侮蔑,大部屋俳優からは出世の妬み或いはスポンサーの興行権を巡る思惑と,芸道精進とは無縁の新たな苦境に立たされていた。
そんな孤高の仲蔵は,若手大部屋俳優「中村此蔵(市川染五郎)」のなかに若き日の自身の姿を重ね合わせ,厳しく指導していた。此蔵も仲蔵の芸に心酔し,実の父のように敬愛していたが…。
ミステリー仕立てですので,ここまで!!!
タイトルロール「仲蔵」は松本幸四郎丈であるが,今公演の主演は「此蔵」・市川染五郎丈という扱いとなっている。
装置と演出が良い。舞台,楽屋の一階,二階及び奈落を,大阪松竹座の全ての舞台機構,客席空間及び大向こうさんまで巻き込んで,スピーディに見せて頂ける。本当に早い。早いだけでなく連続空間を移動する妙味まで楽しめる。
当然とはいえ,劇中劇が劇中劇であることを忘れて本気で楽しんでしまえる。狐忠信の名場面がふんだんに盛り込まれ,染五郎丈の手に汗握る奮闘が見られる。
全てのご出演者が,主演級から,大部屋俳優さん,子役さん,狂言作者,勧進元まで,生き生きと闊達にそれぞれのお役を生きておられる。
芸能を生業とする者の名声及び富と表裏一体の狂気と転落の宿命が胸に迫る。脚本も感動的(;_;)エエエ。
染五郎丈の魅力全開のステージで,ファンは必見。高麗屋を見慣れていない関西の方も得手の演劇なのでぜひ劇場に行きである。関西お馴染みの松嶋屋さん,美好屋さんもご出演中ではんなりと素敵である。

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演劇」カテゴリの記事

コメント

>かつらぎさま
とみです。
コメントとトラックバックありがとうございました。
貴ブログを拝見し,現在の演劇界を取り巻く課題へも挑戦する九代琴松さんの意気込みに思い至りました。
大阪松竹座の小ぶりながら歌舞伎用劇場としての機構を活かした楽しい演出もさることながら,幻想的な空間を飛ぶ狐さんというのも良さげです。
9日には歌舞伎座に行っておりました。また,おじゃま致します。

投稿: おとみさん | 2005年10月13日 (木) 16時20分

はじめまして、かつらぎと申します。
仲蔵の感想をアップしましたので、
もしよかったら覗きに来て見てください。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: かつらぎ | 2005年10月10日 (月) 12時19分

とみさま、こんばんは。
どんどん秋が近づいてきて、過ごしやすくなりましたね。これから一番いい季節になるので、楽しみです。

仲蔵の感想をアップしたので、TBさせて頂きます。

投稿: るみ | 2005年9月30日 (金) 23時42分

はじめまして。

「夢の仲蔵千本桜」観劇したばかりでコーフン気味にアクセスしてしまいました。おっしゃっているように染五郎ファン必見の舞台でしたね。
他の観劇記も楽しく読ませていただきました。また時々おじゃまさせてくださいね。

投稿: スキップ | 2005年9月19日 (月) 03時29分

く、くう~。。゚(T^T)゚。゚ 
そんなに皆さまに言われては、また観たくなるではないですかぁ~。
ついWEB松竹で空席チェック。日生劇場も。(笑)
困ったものです。

投稿: 恵美 | 2005年9月13日 (火) 23時40分

>るみさま
大阪松竹座又は南座では,毎年秋,ジャンルは☆新感線等様々ですが,染五郎丈の公演があり楽しみです。少し前に劇シネとシネマ版阿修羅城の瞳を続けて拝見しましたが,かっこいいですね。私も大阪に出向くついでに再見するかも…。
>joynozomiさま
大江戸圏におられるとは羨ましいです。日生劇場は美しく神秘的な劇場ですので,どのように活用なさるのか気になります。
あ,ワタクシメは10月は歌舞伎座に遠征します(^_^)b。

投稿: おとみさん | 2005年9月13日 (火) 23時29分

とみさん、ブログにお邪魔させていただきました。
ブログでは初めまして。『夢の仲蔵』『もとの黙阿弥』の
ご報告読ませていただきました。『仲蔵』は10月に東京で観劇しますが、とみさんの観劇記を読んで期待できそうだと思いました。
博多座報告、なんか興奮した感じになってしまってとみさんの
ご期待に応えられたらよいのですが。
辻君なのにすれていない女の素直さ、可憐さ、思いやりが現れている春猿さんのおとせとかどわかされて女性のかっこをさせられている玉三郎さんのお嬢の幾分屈折した様子が対照的で素敵でしたよ。

投稿: joynozomi | 2005年9月11日 (日) 22時20分

わ~。もうすごく楽しみになりました。
仲蔵が主役かと思っていましたが、今回は染五郎さんの此蔵なんですね。
ミステリー仕立てで、展開も早いようなので、しっかり見なければ。
私は23日に行くのですが、待ち遠しくて待ち遠しくてウズウズしています(^^;)

投稿: るみ | 2005年9月11日 (日) 19時05分

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